第五百五十三話
大統領専用機は成金趣味の集大成だった。
無駄に原色なカラーリングにピカピカ光る無駄な電飾。
俺だったら絶対外す。
どうして下品な金持ちは同じような感性に行き着くのか。
そして機体の中央部、みぞおちのあたりに顔があった。
「えーっと……妖精さん……照合してくれる」
やだもう調べたくない。
「オーゼン連合大統領ですね。機体に一部になってます」
「ぽくもう帰りたい」
「我慢してください」
「なにをゴチャゴチャ言っておる! さっさと一騎打ちするぞ!」
大統領がわめいてる。
あー……うん。
「出るわ」
「無視することも可能ですが?」
「ご指名だし」
殺戮の夜で出撃。
カタパルトでほいさっさ。
いくらなんでも失礼じゃないかな?
俺、現役の軍人だぞ。
「近衛騎士団は待機。増援が来たらよろしく」
「御意」
さーて、最速でぶち殺そう。
そう思って接近する。
「ふ、ふははははは! なんだそのみすぼらしい機体は!」
うるせえな。
うちの子最高にかっけーだろがよ!
少しむっとしたが、冷静に考えれば敵は俺とのおしゃべりを要求してる。
情報ぶっこ抜きタイムだ。
「よう大統領。ずいぶん個性的な見た目になっちまったな」
「クロノス大公はずいぶんとお子さまのようだ」
ばぶー。だあだあ。
「このオーゼン連合大統領。ドナルドは人間を超越し神になったのだよ!」
「お、おう。それはよかったな」
神でも髪でも紙でも好きにしろ。
そもそも本当に神なら俺と一騎打ちなんかしなくてもいいだろう。
神罰的なものを発動すればいい。
「それで、その神がなんだって?」
「死病に冒された私は願ったのだ! 民の命を引き替えに神にしてくれと!」
「ゼン神族に願ったのか?」
「ああ! 私はゼン神族の一員になった! 私は神としてオーゼンに君臨し! 鋼の兵団を率い、全宇宙を統一するのだ!」
「うまく立ち回ればクロノスの王にはなれたと思うぞ」
……すると急に黙りやがった。
ぷるぷる震えてる。
「そうだ……すべて貴様のせいだ」
なんでよ?
俺悪くないじゃん。
俺がクロノス大公になったのなんて、ほぼ成り行きじゃねえか。
俺はただ運命に流されただけだぞ。
「レオ・カミシロ・クロノス! 貴様が王にさえならなければ! 私は国民を贄に捧げなかったのだ! 賞賛され歴史に名を残すのは私なのだ!」
「知るかバカ! おいてめえ、俺は国民を贄になんか捧げねえぞ! 一緒にすんなバカ!」
頭痛くなってきた。
お前さー、歴史に名を残すよ。
オーゼンを滅ぼしたバカとしてな。
「全宇宙で最も優秀な私は! いまクロノス大公を討伐する!」
「……こんの嫉妬民が!」
大統領専用機が突っ込んできた。
おっと! 応答速度が速い!
神経直繋ぎで思考=行動か!
「は、はははは……」
俺は力が抜けた。
「どうした? 弱きものよ。ああ、思えば私は優秀だった。子どもの頃から神童と讃えられ、大学を優秀な成績で卒業し、在学中に書いた本はベストセラーになり、政治家としても成功した! この私こそ銀河の覇王にふさわしい!」
「それがなによ? 貧乏貴族の三男坊で士官学校中等部じゃ懲罰王、高等部で優等生してたらゾーク戦争で出世しちまった。嫁が銀河帝国皇帝ってだけ。クロノス大公すら過分な男だ! 民主制に移行してさっさと隠居したい!」
俺はババーンッと情けないことを大声で宣言した。
すると嫁ちゃんからお叱りが飛んでくる。
「バカもん! 婿殿は帝国、いや宇宙最強の戦士にして名君! 最高の男じゃ!」
「あざっす! つうわけでまだ解雇されねえわけよ! あきらめろや!」
俺たちは激突した。
突っ込んできた大統領を受け止めてつばぜり合いをしてやる。
少し押し込まれる。
「は! 我が機体の方が力が上のようだな!」
「あ、ほい」
つばぜり合いの方向を変えると大統領が体勢を崩した。
「あら残念。ボクちゃん軍人なのよね。てめえと積み上げたものが違うんだよ!」
大統領が銃を取り出し撃ってきた。
姿勢が悪い! 構えが悪い! どこ見てんだバカ!
連射すればいつかは当たるさ射撃である。
俺の方に飛んできたやつだけ回避。
回避しながら突っ込んで胸の顔をぶん殴る。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
「痛えだろ。お前さ、殴られたことねえだろ?」
なんかムカついたのでヒザ蹴り。
股間にはなにもついてなさそうだ。
だから太ももの部分にヒザを突き刺してやる。
「ぐあああああああああッ!」
「やっぱりな。神経を繋いでるってことは痛覚まであるのな!」
ヤダー! そんな都合のいい話なんてあるわけねえッスよ!
ま、痛覚がないなら今度はそれを利用するんだけどね!
軽い攻撃を繰り返して動けなくさせるとかね!
にしても大統領!
運が良かったッスね!
これが地上だったら関節技地獄にご招待してましたわ!
ビッタンビッタンぶん投げて手足もぎ取って首へし折ってやったわ!
でも宇宙空間だから普通に斬ってくれる!
加速して接近、銃を乱射するが当たりませんよーだ!
「まずは手首ぃッ!」
スパンッと刀で手首を切断。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
そりゃ切断だもんね。痛えわな。
「なぜだ! なぜ貴様の方が速い!」
「そりゃ死ぬほど訓練してますんで」
大統領が再び剣を抜き振り回してくる。
だから切ってきた指目がけてレオくんパンチ。
グチャッと指が曲がる。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
「剣落としたぞ」
宇宙空間に漂う大統領の剣を蹴る。
剣は大統領の腹に突き刺さってた。
「あ、あがががががががが……」
「拾ってやったぞ。俺が優しくてよかったな」
「な、なぜだ……なぜ……」
「そりゃ実力差ってやつよ。さあ断罪の時間だ」
「だ、断罪……?」
「イナゴテロに自国民の虐殺。わかってるだけでも十回は死刑にできる」
「し、死刑だと! 私はオーゼン大統領だぞ! 私はこの銀河を統べる神なるぞ!」
「あ、悪い。俺、信じてるの座敷童ちゃんだけなんで。さーて、覚悟はできたか? レオ・カミシロ・クロノスの名において貴様を断罪する!」
俺は加速する。
「わ、私は! 誰よりも優秀な……」
「成敗!」
大統領の顔ごと大統領専用機を真っ二つにした。
大統領が爆発に飲み込まれていく。
この様子はクロノスだけじゃなくラターニアや太極国、それに鬼神国にも中継されていた。
クロノスのオーゼンへの勝利は確定した。
ラターニアでは各地で勝利セールが開催。
太極国でもお祭り騒ぎだ。
なんかシーユンが俺のとこに嫁に来るって話が事実みたいに吹聴されてる。
本当におまえらそれでいいんか!?
鬼神国ではイナゴテロの敵討ちに興奮した連中が川に飛び込み、ラウンドワンツースリーのマスコットキャラが一緒に川に放り込まれた。
そこから地域の野球チームが勝てなくなったらしいが、そんなの俺は知らん。




