第五百五十二話
マゼランとオーゼンはごく近い距離にある。
歴史的にはかつて一つの国だったそうだ。
それが二つに分裂。
大国の思惑か、それとも単に仲が悪いだけか。
とにかく二国はそれ以来、距離を取りつつ生きてきた。
二カ国ともラターニア、太極国、クロノスと他の大国とを分けるのに重要だった。
だから中途半端に繁栄を謳歌し、特に努力をしなくても生活できたのである。
そも繁栄はクロノスの崩壊により終焉を迎えた。
いまやマゼランの大半はクロノスの一部になり、首都星をはじめとするクロノスの一部にならなかった地域は国家として機能してない。
オーゼンはおそらく全滅だろう。
結局、大国同士のパワーバランスだけで成り立つ国家の末路ということだろう。
俺がマゼランやオーゼンだったなら、どの勢力とも仲良くするため工業拠点置いて八方美人に徹する。
銀河帝国が来たら仲良くしつつ補給拠点にしてもらう。
それしか延命策はないだろう。
あ、そうか。それをやって成功してるのがバトルドームと鬼神国か。
鬼神国って周辺にはアホの子だと思われてるけど生存戦略的には侮れない国だよね。
仲間として期待されないけど、商売上は重要ってラインを絶対に踏み越えない。
一番最初に出会ったのがバトルドームとサリアだったのは本当に運が良かったのだ。
どう考えてもチュートリアルに出てくる国家じゃねえぞ!
鬼神国を敵に回してたら今ごろ終わってたと思う。
俺たちは難しい選択肢から最良をつかんでると思う。
オーゼン艦とクロノス軍が激突した。
艦隊戦である。
もうオーゼン人は絶滅したことを議会でも決定した。
クロノス公国の世論ではいまだに一部反対はある。
そりゃオーゼンに親戚がいる人がいるからね。
でも反対しても覆らない。
ありとあらゆるデータはオーゼンの絶滅を示している。
だから容赦なんかしない。
議会の求める名誉ある戦いとはもう違う。
ただ破壊する戦いだ。
オーゼンの駆逐艦が我々の主砲を受けて爆発する。
救助しない。戦争前から死んでるのだ。
長距離からビーム砲を浴びせて破壊していく。
技術格差?
違う。生産力の暴力だ。
スペックが似たようなものでも数をそろえられる方が強いに決まってる。
クロノスの方が圧倒的に生産力に勝る。
俺たちは艦隊を蹂躙していく。
もう容赦などない。
淡々と敵艦隊を破壊していく。
「敵撤退します!」
追撃すらしない。
「このまま作戦を敵生産拠点の破壊に移行します」
クレアに言われたので承認。
「承認した。敵生産拠点を破壊せよ」
「了解」
ミサイルで近くの惑星の工場を破壊。
解放作戦をしないおかげで進軍スピードは最高。
いままで俺たちはチマチマ惑星解放をしていた。
それが原因でなめられていたのかもしれない。
大国であるクロノスがオーゼン程度に負けるはずがない。
政治に配慮してわざわざ縛りプレイしてただけだっての!
占領なんかする気がないのならどこまでも速くできる。
俺たちは次々と艦隊を蹴散らしながら進む。
すると報告が入る。
オーゼンやマゼランに配慮しない。
だから艦隊で蹴散らして、後続が解放作戦をしたのだ。
「大公陛下! マゼラン解放作戦完了。生存者を保護しました」
「元気な人からは事情聴取。ケガ人は治療して」
「御意!」
生存者ってわざわざ言うってことはほとんど死んだとみていいだろう。
これでマゼラン領は解放完了。
義理は果たした。あとはマゼランの判断。
マゼランのかろうじて残ってる残存軍が基地に向かう。
ここで一旦休憩。
後続とも合流してオーゼン攻略作戦を本格化させる。
まずはマゼラン人の聴取結果の確認。
リコちから連絡が入る。
リコちは後方で救助活動を手伝ってる。
見た感じ疲れているようだ。
「レオくん、予想通りだよ。マゼラン人は機械兵に改造されたみたい。完全な虐殺だね」
リコちは激怒してるようだ。
早口になってる。
「あー、もう! まったく理解できない! なんでこんなひどいことできるの!」
「価値のある存在だと思ってないんだろうな」
「レオくんやっつけてよ!」
「ういーっす」
とうとう銀河帝国、クロノス軍でも屈指の実力者を敵に回したか……。
さーて戦略であるが、そんなに難しい話じゃない。
敵のカードを潰して、自分のカードを押しつける。
超シンプルだ。
俺たちはオーゼン首都星を攻略するのが目的。
占領なんかしない。
マゼランの残存勢力は好きに行動。
オーゼンの星を奪ってもいい。
ただし生存者を見つけたら保護しろ。
そう言ってある。
リコちつけたからオイタはさせないけどね。
したらクロノス出禁な。
ラターニアと太極国、それに鬼神国は後から来て救助と調査。
おそらく生き残ってる人いないだろうけど。
俺たちは救出作業が終わるまで待つ。
その間もオーゼンがやってきては戦闘になる。
戦い戦い戦う……と言いたいところだが、実際は来たのをパーンと叩く。
今度は群れをなしてきたのをパーン!
なにもさせない。
戦費も糸目をかけない。
俺たちは物資モリモリだし、エネルギーは問題なし。
一方オーゼンはじり貧の極みなわけである。
なにもさせるわけねえだろと。
敵の総数の予想も、どこにどれだけ配置されてるかも、なにもかももう調査済みだ。
他の勢力からの援軍の予想もできている。
いや、そもそももうオーゼンは見捨てられているのだ。
俺たちは一皮剥けたのではないかと思う。
そして合流まであと少しとなったところで通信が入ってくる。
オーゼンだ。
「クロノス大公……一騎打ちを求む」
来るかなと思ったら本当に来た。
「識別コードは?」
「オーゼン連合大統領専用機です」
モニターにやたら派手なカラーの専用機が映る。
ビタビタした原色で目が痛くなる。
銀河帝国ではありえないカラーリングだ。
「へぇ~」
……うん。たしかに人のこと言えないよ。
大公なのに専用機持ちだし。
だけどさー、俺は大公になる前からパイロットだったわけよ!
ところが素人の専用機ってなによ!
意味ないだろが!
俺は憤慨したわけである。
……と、その当時は気づかなかったが、ここがターニングポイントだったのだ。
そうジェスター弱体化させるシリアスさんを駆逐できたのがここだったわけである。




