第五百五十一話
さーて、オーゼンである。
大船団を率いてマゼラン宙域からクロノスへ進軍していた。
まず俺らの失敗を語ろう。
そもそも偵察などしなくても望遠鏡や衛星を通してちゃんと見れば異常が発見できた。
街の明かりがなくなっていたのである。
いやさー、異常を知らせる書類は上がってたの。
でもクロノスは天文台の軍事利用の経験がなく書類は重要度の低い書類の中に埋没してた。
それを妖精さんが発掘したのがつい先ほど。
これは運だよねえ……。
いや天文台や衛星での偵察って概念は知ってたんだけどさ。
銀河帝国じゃ海賊のアジトを調べるときですらやらない手段だからねえ。
運が悪かった。
さーて方法は簡単だ。
夜に写真撮るだけ。それだけでどの街が栄えてるかわかる。
他にも地表の熱を測って人口がどれくらいいるかとかね。
熱力学的にどこかに漏れるものが必ずあるってわけ。
それが都市レベルになると人間の営みが行われてることがわかるわけ。
でー、都市丸ごと機械化すると一見すると出力上がって熱くなりそうに感じるんだけど、調理したり掃除したり空調使ったり……そういう生活がなくなるため全体的には発生する熱量は低下する。
最終的には暑さ寒さも感じなくなる。
工場も生活必需品の品数は極端に減り、結局は熱量は低下。
それをカメラで撮影すると一目瞭然。社会全体の熱量が少なくなってる。
これを海賊のアジトに使うと熱の発生で位置がわかるのだ。
というのは知ってたんだけど、即座にそれを思い出せるはずもない。
そもそもドローンで偵察した方が楽じゃんってのが現在の戦略。
望遠鏡や衛星でチマチマというのは何世代も前の戦略である。
でも今回はこれが役に立った。
街の明かりがないだけならわかるけど、降雪地帯で暖房の使用量がゼロっていうのはおかしい。
いやおかしいのはわかってる。
問題は皆殺しか否かだ。
人間が残ってれば救助する。
いなければ軍艦と工場壊して無視だ。
統治する民がいなければ、惑星に価値なんてないのだ。
ある程度放置、おそらく数年程度放っておけば機械化された住民が動けなくなる。
それには工場壊してメンテできなくなればいい。
機械が劣化すれば生身も無事じゃすまない。
すぐに生命維持ができなくなる。
そうなったら惑星を開発すればいい。
なら完全なロボットを用意すればと思うが……ドローンの方が安くて強い。
そのドローンもAIは定期的なメンテが必要だ。
妖精さんがいるおかげでメンテ不要に近い状態の銀河帝国がおかしいだけだ。
結局、生身の人間の方が安くて長期間メンテ不要で知能も高く融通が利くのである。
人間って哀しい生き物ね。
というわけで観察。
やっぱり人間いないよね?
「人間は死に絶えたようです」
クロノス宇宙海兵隊の新しく大佐になった三十代半ばの男性から話を聞く。
偵察部門の実務のトップに近いところにいる人だ。
「つまり呼びかけに応じなくなる前に話してたのは……」
「高確率でAIかと」
「やだ怖い!」
どおりで話が通じないわけだ。
話してたらボロが出るから話し合いを無視するようになったのだ。
ただわからないのは、敵は非道なことをしたのを隠すほど繊細ではない。
なにか意図でもあるのだろうか?
考えすぎかもしれないけどね。
というわけでオーゼンは
カナシイ……のでだいふくちゃんのところへ行く。
クロノスの宮殿にいる。
俺たちが仕事のときは宮殿の座敷童ちゃんの分社の隣に作った幼稚園にいる。
神籬ちゃんがある神社じゃなくて宮殿の一角にあるやつね。
嫁ちゃんの船を見習って作ったのである。
俺が幼稚園に近づくとだいふくちゃんは俺に気づく。
「ぴきゅー! ぴきゅー! ぴきゅー!」
大興奮である。
「はーい、だいふくちゃん」
手を差し出すと俺の頭によじ登る。
「ぷきゅーッ!」
幼稚園でお世話をするのは驚くことにメリッサである。
「だって、実家で動物の世話してたし」と本人は主張してる。
実際、マメに世話してる。
「世話できないし」なんてことはなかった。
メリッサがやって来る。
「隊長お迎え?」
「そそ。なんだメリッサさ~。世話できるじゃん」
「死なれるのが嫌」
どこまでも現実主義者だった。
たしかに。
納得してると後ろから近づくものがあった。
「にゃーん」
おっと前に仕官した猫さんである。
するとだいふくがご挨拶。猫さんの背中に乗る。
「きゅ」
「にゃーん」
人間にはわからぬ会話を経る。
仲良しのようである。
「ドラさんは子どもたちのお姉さんみたいだね~」
「ドラさん?」
「うん、猫の名前」
右衛門? ミ? それともドラゴンなのか!?
「なしてドラ」
それだけは気になる。
「ふふふ……それはなんだろうねえ」
メリッサはニヤニヤする。
いや気になるから!
結局教えてくれなかった。
だいふくは猫さんと遊ぶと、また俺の頭にのぼった。
しばらくするとタチアナとワンオーワンが来た。
シフトが終わったようだ。
「あ、兄貴! だいふくのお迎え」
「うん」
「自分らもお迎えであります!」
青い方がタチアナのベリーちゃん。
赤いのがワンオーワンのリンゴちゃん。
ブルーベリーにリンゴか……。
シンプルでよろしい!
二匹とも俺にお腹をなでられてる。
「誰が偉いか完全に理解してるね」
「隊長に遊んでもらったでありますか?」
「ぴきゅー!」
「ぷぷぷぷぷ!」
二匹とも元気にご挨拶。
シーユンも遅れてきた。
タチアナとワンオーワン、それにシーユンは銀河帝国にラターニアにと政治学を本気で勉強してるところだ。
三人とも一国の主だ。タチアナも伯爵なのだ。クロノス教が聖女の領地を用意するって話も出てるし。
つまり……お世話であるが、まー、ワンオーワンは絶望さんいる。
タチアナの方はクロノス教から派遣された女官さんがいる。
シーユンのとこも専門の人いるし。
猫さんとともにかわいがられてる。
というか猫さんたちは宮殿の子扱いだよね。
俺の知らないところで専門の人が雇われて世話してる。
なので宮殿の猫さんたちはふわっふわの毛並みである。
クロノスネズミももともと捕食対象じゃないようで共存してる。
こうやって俺たちがジェスターの力を溜めてたある日、オーゼンの艦隊との戦闘になった。




