第五百五十話
クロノスネズミ。
どう見ても愛玩動物である。
人間を見ると寄ってくる。
クロノスでは農村に広く分布してて……というか餌くれそうな人の家に住んでる。
地下に穴を掘り巣を作る。
イナゴテロでも多くが地下の穴に逃げて無事だった。
クロノスの農村では特に珍しくない生き物で、農家のおばちゃんたちもわざわざ見せようとしなかった。
生態は人間の近くに住み、天敵から人間に守ってもらってる。
餌は人間にもらったり、農家のこぼした種だったりと人間べったりのサイクルを送る。
クロノスの都市部では愛玩動物として飼われている。
飼いやすく頭もよくある程度のコミュニケーションも可能。
トイレトレーニングも可能で、砂を置いておけば砂浴びで体を清潔にする。
水も怖がらないためお風呂も可能。
特技は歌。
機嫌がいいと歌を歌う。
「きゅ?」
俺を見て『ミントちゃん』が首をかしげる。
ミントちゃんは緑色。
これで毛を染めてないナチュラルなカラーらしい。
ミントちゃんはケビンのとこの子だ。
目が合う。
するとミントちゃんがころんとひっくり返ってお腹を見せた。
思わずお腹をウリウリする。
「レオにこび売ってる……」
ケビンが驚いてた。
クロノスネズミは降参のポーズはあまり取らないらしい。
「レンはなんだって?」
ビースト種の女王である。
新しい毛玉の友だちを受け入れるときは話を通しておかないと……狩られる……。
「知らせたら怒られそうで言ってない……」
「じゃあ俺が言うわ。えーっとレン、執務室来てくれる」
レンがやって来た。
その肩にはブチ柄のネズミが乗ってた。
「あ、この子ですか? 新しく仕官したオモチちゃんです」
「ぷいぷいー!」
オモチちゃんがシュタッと敬礼した。
レン……お前もか……。
「オモチちゃん、私たちの仕える王ですよ」
「ぷいぷい!」
「はいミントちゃんご挨拶」
「ぷい!」
「ぷい!」
二匹はご挨拶した。
ニオイをかぎ合ってる。
彼らは知能が高く社交的な生き物でめったに喧嘩しないらしい。
「えーっと……もう、どーにでもなーれー!」
でだ。もう、その後に待ってたのは予想通りの展開である。
「自分も欲しいであります~!」
地団駄を踏むワンオーワン。
「あたしもほしい! ねー、ちゃんとお世話するから!」
涙目のタチアナ。
シーユンは目をそらしてる。
「……シーユン。どうして目をそらしてるの?」
「イイエナンデモナイデスヨ」
「大公様。太極国との会談のスケジュールですが……」
するとシーユンのお兄ちゃんが来る。
頭の上にはクロノスネズミが乗ってた。
「あー! ズル! シーユン飼ってる!」
「自分も欲しいであります!」
俺思うのよ……。
キミら金あるじゃんと。
あーはい。プレゼントしてほしいのね!
でもしかたないので……あ、ペットじゃない? 農村でもらってこい?
あ、はい。
例のワサビ田のところに二人と行ってネズミをもらってくる。
「ぷきゅー!」
二匹を仕官させた。
青いのがタチアナ。
赤いのがワンオーワンと。
「ちゃんと世話しろよー!」
「わーってるって」
「了解なのであります!」
こうして我が軍はクロノスネズミに支配されたのである……。
でさー、ようやく許可が出て嫁ちゃんに会いに行く。
するとさ、嫁ちゃんの肩にいるわけよ。
なんか白黒カラーの子が。
「だいふく、父上に挨拶するのじゃ」
「ぷぴー!」
嫁ちゃんがテーブルに置くところんとお腹を見せた。
本当に大福みたいだね。キミ。
指でこちょこちょ。
「ぷぴー♪」
はいご挨拶。
なぜか俺の頭の上にのぼる。
「さっそく懐かれたな。やはりメスだからのう」
「いきなりの名誉毀損!」
「ぷぴー!」
「干し芋食べるかね?」
もしものときの備蓄食料をあげる。
「きゅっきゅっきゅー♪」
歌い始めた。
「ういーっす。ヴェロニカちゃん警備計画できたよ~」
そこにメリッサがやって来る。
「あたちパパだいしゅきでち♪」
「メリッサ、アテレコやめて」
「だってベタなれじゃん。や、かわいいね」
「メリッサも飼うか?」
「お世話できないからパス」
ようやく賢人が現われた。
「それにその辺にいる子をテキトーにかわいがればいいし」
「はい?」
「あー……そうか婿殿は知らんか。我が艦の現状じゃ」
画面が映る。
壁を走り回るクロノスネズミの群れ。
それぞれの飼い主を見つけると飛びかかって肩にのぼる。
「きゅきゅきゅ!」
うれしそうである。
「クロノスネズミは群れを作っての。飼い主のシフト中は群れで遊んで、迎えが来るとこうやって家に帰るのじゃ」
「めちゃくちゃ頭よくね?」
「うむ。五歳児くらいの知能があるようじゃ。それでのー、有志が艦にある神社の一角に幼稚園を作ったようじゃ」
「誰も止めなかったの?」
「止めたら反乱が起きる」
左様か。だいふくちゃんは俺にスリスリしてる。
もっとなでろ、ね。
はいなでなで。
「ぷきゅー♪」
さて……そんなこんなでアリッサも回復。
アリッサも飼ってるらしい。
だいふくちゃんであるが俺にベタなれ。
夜になると俺を呼ぶ。
それはそれは悲痛な声で。
「ぴきゅーぷるるるるるる……きゅー……」
なのでクロノスの宮殿で俺と嫁ちゃんと同じ部屋で寝てる。
完全に子どもみたいである。
いいけどさー。
さーて、こうしてハムなのか、モルモットなのか、ウサギなのかよくわからん生物が大量に仕官した。
すると俺の調子の悪さも改善。
なんかジェスターが元気になった。
あのさー、場の空気で能力の増減が激しすぎるとかさー。
いいかげんな能力すぎるだろが!
そんな最中、オーゼン軍艦隊がまたやってきた。
時間を与えてしまった俺らが間抜けなのである。
また会議。
そこで俺はある提案をする。
「オーゼン領土を獲る」
そこで仲間たちと激論を交わした。
「たぶんオーゼンは滅んでる」
これに関してはジェスターの風邪で辻褄が合う。
イソノの野郎が珍しく真面目な声で言った。
「皆殺し……だろうな」
「ああ、だからこそオーゼンを倒そうと思う」
覚悟なんてもんじゃない。
まだ様子見ながらってやつだ。
ただ偵察が必要だ。
俺たちはなにが起きたか知らねばならんのだ。
逃げられないのだ。




