第五百四十五話
マゼラン暫定政府の状況は思ったより悪い。
知らせを受けて半日後、マゼラン首都星が陥落した。
暫定政府は崩壊。
政府と命運を共にするかなって思ってたら市民置き去りにして逃走。
だからさー、そういうとこ!
そういうとこがクロノスの子にしたくない理由なの!
クロノスの政治家は偉いよ。
逃げ遅れただけかもしれないけど、ギリギリまでがんばって死んだんだから。
だから生き残った連中の判別とか簡単だったもの。
市民より先に逃げた連中は冷遇して、たまたま運がよく生き残ってしまった人は優遇する。
そりゃさ無能を優遇してクロノスから搾取だけするんでもいいよ。
でもさー、それで遺恨を残すのは正直損だ。
このまま銀河帝国の兄弟国としてダラダラ交易やってればいいと思う。搾取なんていいことがない。
クロノス公国はマゼランから逃げ出した首脳陣の亡命は受け入れなかった。
ただ一般人として旧マゼランのクロノス領に居住は許した。
針のむしろだろうが知らん。
俺たちが欲しい人材は国が滅んでも残留して戦う人たちである。
市民置いて逃げるアホはいらない。
クロノスはクロノス領旧マゼラン宙域に軍を展開。
哨戒活動をしている。
俺たちはオーゼンと話し合おうとするが無視。
俺たちはラターニアと太極国と抗議声明を出す。
どこまで効果あるかはわからないけどね。
「なんかさー、俺さ、『会話したら終わり』みたいな怪異扱いされてね?」
俺は執務室でつぶやいた。
当たり前のことしかしてないんだけどな。
すると妖精さんが呆れ声を出した。
「そりゃ警戒するでしょ。扱いに困ってた鬼神国にラターニアにプローン、さらには海賊ギルドまで味方にしたわけで。化け物扱いも納得ですよ」
「普通に理解できる手段で普通に外交しただけだけど?」
「それが怖いんでしょ」
そうかもしれない。
経済界には説明会を行った。
戦争が近いこと。
これから軍の需要が高まること。
国民には戦争が近いという話をしながら備蓄食料や避難経路の確認をした。
避難訓練も各地で開催。
学校でも防空壕に逃げる訓練を行う。
国民が巻き込まれる前に終わらせたいけど、そう上手くないかないだろう。
だってオーゼンくん完全に沈黙してるもん!
そしたら戦争の前だというのに建築会社が最高益を記録。
株式市場も爆上げ。
先物市場も好調すぎる。
やだインフレ怖い!
軍には志願兵が殺到。
士官学校も入学希望者が殺到した。
なんのテコ入れもしてないんだけどね。
はいはい、とりあえずお仕事終わり。
さーて、面倒な仕事が終わったのでルーちゃんと座敷童ちゃんのところに行こうと思う。
ルーちゃんはお母さんと一緒。
すでに撮影班も来てる。……ルーちゃんママ……恐ろしい子。
「ママ!」
ルーちゃんがお母さんに抱きつく。
すっかり懐いたようだ。
ルーちゃんママことスーさんは、子ども二人を育てたベテラン。
なれた手つきでルーちゃんの頭をなでた。
俺がバスを運転しようかなと思ってたら近衛騎士団に止められた。
宮殿が手配したバスで向かう。
嫁ちゃんにクレアにメリッサにレンという嫁たちもいる。
さらにベルガーさんとカチヤなど学者軍団もいる。
当然、タチアナにワンオーワン、シーユンもいる。
別のバスには他の局の取材班が乗っている。
そりゃねー、光る神籬ちゃんとか取材したいよね。
さらにはクロノス教のお偉いさんも一緒に同行。
特に敵対してないので許可。
この規模になるとエディにイソノに中島を警備に同行させなきゃいけなくなり、当然憲兵隊の最高指揮官であるリコちも同行する。
大名行列と化すと人がわらわれ見物に来る。
だからついでに戦車とか装甲車を同行させてパレードにする。
そしたら屋台が勝手に出る。
あー……こうやって祭りってできるのね……。
さしたる距離でもないのに二時間以上かけて到着。
ルーちゃんの人気はすごい。
みんな一目見たいと思ってる。
「ルーちゃん、お菓子であります」
「ワンお姉ちゃんありがとう!」
ワンオーワンはお姉さんぶって面倒見てる。
軍の末っ子が成長したのものだ。
タチアナも面倒見がいい。
シーユンもうれしそうだ。
神社に着くと座敷童ちゃんが出迎えてくれた。
神職さんにご挨拶。
なぜか末松さんもいる。
末松さんを神職にした方がいい説もあるんだけど、エディの騎士団としては末松さんを手放せない。
いないと困る人材である。
俺はお酒とお米を奉納する。
マゼランで作ったお米である。ようやく収穫できたものだ。
賽銭は電子マネーで。
人生で一度くらいは札束を賽銭箱に入れてみたかったが……まー、それはどうでもいいっか。
一応ホログラムで札束が入れられる動画が流れる。コレジャナイ。
いいのいいの。どうせ個人資産なんて使い切れないんだから。
……でもおかしいんだよね。
イナゴテロで個人資産でオムツとミルクと消毒シートを大量に輸入して配ったからほとんどなくなったはずだった。
なのになんか配る前より個人資産の桁が増えてる。もう意味わからん。
いいや、投資していこう。
神職さんたちが祭りをやってくれる。
宗教関係にノータッチのためなにをしてるのかはよくわからない。
地元の人たちは神籬ちゃんの発光に驚き敬った。
俺たちはルーちゃんを座敷童ちゃんに紹介する。
二人は抱き合った。二人? 単位はこれで……まあいいや。細かいこと考えるのはよそう。
座敷童ちゃんはパワーアップの結果、みんなに見えるようになった。
ただしあらゆるセンサーで検知できない。
存在するようで存在しない。
座敷童ちゃんを神とするか精霊とするか。
それはわからない。というか両者の違いがわからない。
クロノス教や銀河帝国神道、ゲーミング坊主界隈だけの用語である。
関わるだけ無駄だ。
いるものはいるんだからいいんじゃね?
と口を滑らしたらクロノス教の神官に長々と説明された……。
そして頭を素通りした。わからにゃい。
わからにゃいが尊重はする。
別にクロノス教にだけこういう態度でいるわけじゃない。
銀河帝国神道も理解してないし、ゲーミング仏教もあまり理解してない。
むしろゲーミング仏教の一部の宗派が「俺が死んだときの葬式をどうするか」という問い合わせをしてくるので少し印象が悪い。知らねえよ!
「もうクロノス教でもいいかな」って思ってるくらいだよ!
嫁ちゃんに聞いたら「婿殿の葬儀ならどの宗派も勝手に行うじゃろ」だってさ!
嫌すぎる!
ま、寄付求められたら金出すけどね!
クロノス教はなるべく俺に干渉しないようにしてる。
だって壊れた神殿の修復に金出してるし、慈善事業やってるし、ちゃんと渡された本は読んでるし、文句言われる筋合いはない。
信徒にならないだけで。
なんて難しい顔してるとクレアが腕を絡めてきた。
「どうしたの難しい顔して?」
「なんでもない。ねえクレア、座敷童ちゃんどう思う?」
「この銀河に新たな神を生み出したって話? むしろレオの方が神様扱いだし。今さらって感じかな」
それもそうか。
うん考えてもしかたない。
ノープランで行こう。
オーゼンによるクロノス侵攻が開始されるのは、銀河帝国暦で二週間後のことだった。




