第五百四十四話
ま、神が喜んでても政治はいつも通りなんですけどね。
虐殺に対しての会議会議会議……。
で、終わったら今度はクロノス領マゼラン自治区の市長と会議。
昼は農業関連団体とランチ。
オーゼンによるイナゴテロを防ぐための話し合いをしながら。
お昼のお弁当ぜんぜん美味しくない。カナシイ。
さらにそれが終わったら軍に根回し。
夜は嫁ちゃんと財界人とのパーティーというか会合に出席。
オーゼン侵攻による経済への影響を話し合う。
まだ会議じゃないのはクロノスまで来てないからだ。
こういうパーティーで話会うしかない。
やだー! 王様って地味!
これ遊んでるって言われてるけど、本当に遊んでいいなならこんな会合出席しないもん!
で、パーティーが終わったらメシなんてほとんど食べてないから食堂で自分で作る。
するとワンオーワンがくる、ワンオーワンが来るってことはタチアナとシーユンも来る。
いま食べたら太るぞー。
夜食作るけど~。
太極国風のおかゆ。
鳥ガラスープのやつ。
「ふへー。おなかすいたのじゃ~」
すると嫁ちゃんも来る。
嫁ちゃんの分はすでに用意済み!
ニーナさんが残してくれたおかず……あった!
塩鮭!
おかずおかずっと。
「ほーい、できたぞー」
ご飯を出して夕飯。
戦争さえなければこんな夜まで働かなくていい。
しんどい生活はいまだけだと信じたい。
「なー、ワンオーワン。ルーちゃんの様子どう?」
戦争の話をしてもしかたない。
一番気になる話題だ。
「元気であります! ルーちゃんママにアイスもらったのでタチアナとシーユンと食べたであります!」
「そうか。よかったな」
「はいであります!」
「タチアナ、ルーちゃんのことなにか聞いてる?」
「歩けるようになったんで散歩行きたいって言ってますね。仕事サボって行ってやってください」
いつもどおり情緒もなにもない言い方だ。
「了解。シーユン、スーさんのことどう思う?」
「うちの方でも調べさせましたが問題ないようです。夫は同じ局のプロデューサー、イナゴテロで行方不明。これは多くのクロノス人犠牲者と同じように遺体が見つからないという意味です。子どもは二人とも女性、ルーちゃんのご姉妹はイナゴテロで学校の地下に逃げて無事だったようです」
「学校に地下なんてあるんだ」
「クロノスの首都はもともと人口過密地域で、私立学校は地下に大型施設を作る傾向があったそうです。太極国だと自家用車文化なので横に広い建物が多いんですよね。イナゴテロの危険性を考えたら地下施設を拡充せねば……難しいところです」
「なるほどねー。あやしい団体との関わりは?」
「なさそうです。クロノス市民ネットワークとパイプを持ってるようですが、それはジャーナリストなら当然かと」
まー、クロノス市民ネットワークに金出したの俺だしね。
俺公認の団体だ。
「そういやアナウンサーなの? ジャーナリストなの?」
「どちらも兼ねてるようです。えっとこれが著書一覧です。……レオ様を批判する書籍もありますが怒らないでくださいね」
「へー、やっぱり外国人だから?」
よしやれ! がんばれ!
「いえ、権力が集中しすぎてるのとレオ様が戦闘で戦うのことへの批判です。『もしレオ様が亡くなったら国がどうなってしまうのか?』という点を痛烈に批判してます」
「あら真っ当な批判。だよねー! ねー、嫁ちゃん!」
よしいいぞ!
俺を追い落とせ!
俺は仕事しないで嫁ちゃんとイチャコラ生活したいのだ。
「他に人がいないのだから育つまではしかたないじゃろ」
「せめて俺が育つまで待って欲しい」
そう、具体的には四十代後半まで待って欲しい。
国家元首なんてそれでも若いんだからね!
「婿殿は即戦力じゃ。あきらめよ」
「ひーん!」
「というわけで現在は賛成側でありながら、現体制へは権力の集中を批判してる立場です。批判も的外れでもなければ人格批判でもないため一理あるという評判です」
シーユンの話はまったくその通りであった。
そりゃそういう風に思うよね。
俺も同じ感想だわ。
「……政治を手伝ってほしい。むしろ俺の代わりにやって欲しい」
「やめよ。評論家をプレイヤーにするな。実行できるのならみんな理想論の政治をするわ」
嫁ちゃんは呆れてた。
まー、たしかに。
やろうと思ってもできないから権力が集中しちゃってるわけで。
有力者って思われてる人も若いもんね。
うちの一門は二十代前半ばかりだし。
経済界も二代目三代目はいい方、ほとんどがサラリーマン社長ばかりで権力基盤がぐらつきまくりだ。
だから銀河帝国の商社やコンサルタントとカミシログループでサポートするしかない状態だ。
政治家になって俺を蹴落すまでには時間がかかる。
「なんだか問題なさそうね。本の内容も真っ当だし」
「私もルーちゃんをまかせても問題ないと思います。彼女は社会をよくしたいと思ってる善人です。実際、汚職を一掃したレオ様を評価してますし」
「それは俺の功績じゃなくて、汚職の原因になってた連中がほとんど死んじゃったからなんだよね……」
悲しいことに旧権力者はほぼ死亡。
クロノスは棚ぼたで汚職体質から抜け出してしまった。
つまり俺はなんもやってないのである。
区画整理も専門家に丸投げしたし。
あー、あれだ。権力振りかざして仕事をスピード感重視で振ってったわ。
それくらいだ。
本当にそれくらいしかしてない。
そんなもんよね。
「じゃ、ルーちゃんまかせようと思う」
「それですが、いい考えが」
シーユンがほほ笑んだ。
あ、知ってる。これ謀略だ。
さて……その後どうなったのか?
「お兄ちゃん!」
ルーちゃんが俺に抱きついた。
まだ少しヨタヨタしてる。
これも慣れたら解消するだろうって。
なんで宮殿にルーちゃんがいるのか?
それは簡単だ。
スーさん一家は宮殿の別館に住んでるからだ。
別館を作ってジャーナリストを複数人住まわせたのである。
複数社なので不満はなし。
そんなものさー。
ルーちゃんの経過観察もできて一石二鳥。
銀河帝国の従軍記者のお姉さんもこっちに住んでる。
報道との癒着ではないかといわれれば否定はできない。
でも悪口書いてもいいよって言ってある。
俺にメンツなど存在しない。
なのでこれでよかったと思ってる。
パーティーや会合もなるべく記者さん入れてるし。
政治は透明にしてる。なるべくね。
そんなほっこりする中、異変は起こった。
妖精さんがあわてた様子だった。
「マゼラン暫定政府が敗走だって……まさか一週間ももたないなんて……このままだとマゼランは消滅するかも」
とうとうオーゼンと決着をつけるときが来たのかもしれない。




