第五百四十二話
世界が変わる。
言葉の意味はわからない。
座敷童ちゃんに聞いても「わからないの」と明確な答えは返ってこない。
神様だもんね。
そりゃ明確な指示はないか。
さーて、神籬ちゃんが発光する中でルーちゃんの処置がされていた。
生命維持装置に入った新しい体にルーちゃんの装置をつなぐ。
妖精さんが気合を入れる。
「おっしゃー! やりますよー!」
なお俺はクロノス近衛騎士団に正座させられて怒られてる。
「陛下! 何度も言いましたよね! 急に飛び出さないでくださいって!」
幼稚園児にするようなお説教をされながら俺はルーちゃんを見守る。
しかたないじゃん。
座敷童ちゃんに呼ばれたんだもん。
ルーちゃんは大人しくしてた。
処置前にルーちゃんは「失敗してもいいです。空を見られたし、みんな優しいし」と俺たちに言った。
失敗は絶対に回避したい。
「患者の生命活動低下」
これは知らされてた。
魂、おそらく魂と言われるなにかが抜けると、肉体は生命活動を止めてしまう。
妖精さんのときもそうだったらしい。
「ルーちゃんいきますよ!」
妖精さんが両手を振り上げた。
神籬ちゃんがまばゆく光った。
それは目を開けてられないほどの光だった。
「目が! 目がああああああああぁッ!」
お約束の展開を挟み、目が見えるようになる。
すると生命維持装置の中のルーちゃんが目を開けた。
ルーちゃんのテレパシーを音声変換した言葉がスピーカーから流れた。
「ありがとうございます。生きてるみたいです」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
その場にいた医師が歓喜の声を上げた。
ケビンを持ち上げてガッツポーズする。
ケビンもガッツポーズ。
なんだかんだで陽キャの集団である。
さて、ルーちゃんとご挨拶。
「レオお兄ちゃんだよ~。ゆっくり休みな。退院したら遊ぼうな」
「は~い♪」
さーてご挨拶も終了。
クロノス公国正妃のクレアが記者会見開く予定だ。
ケビンとケビンの師匠軍団も同席。
俺も大佐の作戦が終わったら記者会見に行く予定だ。
さーて、俺は近衛騎士団に命じる。
「キミらレイブンくんに連絡して。俺はここで大佐の防衛作戦を見る。大佐の作戦の緒戦が終わったら記者会見場に直行ね」
「御意」
大佐なんて言ってるけど、もう大将だ。
クロノス軍の高級将官の生き残りの彼だ。
わりと信頼してるのよ。
当たり前のことを当たり前にするタイプだからね。
エディと同じで安定感がある。
オーゼン連合の船、駆逐艦、戦艦ともに見たことないやつだった。
ラターニア、太極国の軍需産業の現行品は頭に叩き込んでる。
知らんやつだ。
「メーカー、スペックともに不明機が接近。大将閣下が戦闘を開始しました」
「がんばってねー」
大臣であるレイブンくんには負けそうなら撤退と言い渡してる。
それでいいのさー。
今回、オーゼン連合くんは「自国民保護」を理由にして攻め込んできた。
宣戦布告の書類が送られてきた。
で、その建前があるのでマゼランのオーゼン側の領地に攻め込んできた。
そこは住民の七割がオーゼン人という惑星だ。
住民にはあらかじめクロノス公国人になりたいかアンケートを取って、クロノス市民権を希望した住民はすでに避難させている。
ここで撤退してもオーゼンは自国民を保護するために足止めされるってわけ。
そしてマゼランは戦略上は別にいらんのよ。
個人的にも米作ってるとこ意外はいらないし。
見放してるってわけじゃない。
でも残った住民のほとんどがオーゼン人になるのを希望してる惑星なんて、正直いらないよねって話。
俺らの態度は冷たいように見えるけど、そもそもマゼランへの責任はないのよ。
だから軍を出しただけでも義理は果たしたってこと。
これがクロノスにいきなり攻撃してきたらぶち殺すけどね。
「エネルギー反応あり! 高出力です!」
するとレイブンくんが俺に通信してくる。
「敵の兵器を認識ししだい、無人ドローンで攻撃しながら撤退します」
「はーい。なるべく犠牲者出さないでね~。この惑星には義理ないからね~」
残念ながら俺らはマゼランのために命をかけるわけにはいかない。
そりゃクロノスに完全併合されることを望んだ地域は守るよ。クロノス市民だから。
でもオーゼンになりたい星を守る義理はない。ちゃんと線引きすべきだ。
ここで変な正義感を出す気はない。
あくまで軍を出して「めっ!」って注意するまでがマゼランへの義理。
それ以上は知らん。
「あくまで今回の戦闘はデータ取得が目的。兵にもちゃんと言ってね」
マゼラン人の現地採用の兵はギリギリまで戦うと主張するかもしれない。
でも七割がオーゼン人の惑星を保護する理由がないのよね。
それにマゼランの現地採用人はマゼラン暫定政府の兵だ。
俺らに事実上の指揮権はあるけど、書類上は指揮権の根拠がないって微妙な話である。
それを言っても理解してくれないだろうけど。
あくまで俺はクロノスの大公。
俺にはクロノス人の命を優先する義務がある。
そこで線引きするしかないよね。悲しいけど。
オーゼン艦隊が砲撃してきた。
クロノス艦隊に直撃。
とはいえ艦隊用のシールド、いわゆるバリアーで減衰する。
それでも連中の攻撃は表面を焼いた。
ミサイルはドローンで撃ち落とす。
ありゃー、攻撃力が予想より高い。
こりゃ分析待ちだな。
「撤退開始します!」
「はーい、お疲れちゃん」
「マゼラン軍の一部が離反しました! 戦闘継続!」
「やると思った。いいからクロノスの軍は撤退! ただしドローンで援護して!」
指示を聞かないんだから、ここで切るしかない。
マゼラン軍、おそらく領地を削り取られたくない連中だろう。
彼らはオーゼン軍に突撃した。
おそらく、今までの力関係から普通に戦える相手だと思ってるのだろう。
俺はそれは甘いと思う。
オーゼンは勝利の道筋が見えてるから喧嘩売ってきたんだと思う。
だから俺たちも最初は捨ててるのよ!
マゼラン軍が主砲を撃った。
正面から戦うには火力が足りない。
それはマゼランもわかっていたのだろう。
散開して多方面から攻撃をしかけた。
そしてそれは起こった。
一瞬の光、そして遅れてマゼランの戦艦が爆発した。
「オーゼン軍の主砲。モノポール砲と思われます!」
一方的にマゼランが撃沈されていく。
そしてマゼランが全滅しそうになる寸前、俺たちが機雷代わりに置いた無人ドローンが駆逐艦に貼り付き爆発した。
すると速度が遅くなる。
爆発で機関部を壊すことに成功した。
お互いが邪魔になって進軍できなくなったようだ。
マゼラン軍もそのすきに撤退をはじめた。
あちゃー、銀河帝国と同じような兵装か。
攻撃力高いわ。
敵はおそらく……自分の存在を賭けての戦いと思ってるようだ。




