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第五百四十一話

 まずは情報開示。

 被害者のルーちゃんの姿も世に出した。

 ルーちゃんには許可取った。

 クロノス公国はオーゼンによる非道な人体実験と非難声明を発表。

 体を作る実験に関しても、ルーちゃんや他の疾患の治療のために実験してると報道した。

 いやだって、結局機械化した体って長生きできないし。

 妖精さんの力を使って完全な機械の体を与えたらどうなるか?

 人工知能のロボットやAIナビは存在するけど……結局、専用の機械の方が効率いいしね。

 ということで体を新しく作るのがリスクが低いのである。

 端末をつけるとルーちゃんがインタビューに答えるライブ映像が表示された。

 目玉のついた肉塊が水槽に浮かんでる。


「自己紹介をお願いします」


 女性ジャーナリストがインビューを開始した。

 水槽に装着したテレパシーを音声にするスピーカーを通して小さな女の子の声がする。


「ルーです。年齢はわかりません」


 小さな女の子の声に女性ジャーナリストは顔を歪める。


「あ、あなたはどこに住んでたの?」


 声もかすれていた。


「ずっと水槽の中にいました」


 それはあまりにもむごい仕打ちだった。

 小さな女の子がこんな姿で地下の施設に置き去りにされていたのだ。


「た、大公陛下に助けていただいたんですね?」


「はい。レオお兄ちゃんが一緒に行こうって」


「う、うれしかったのかな?」


 女性ジャーナリストの情報を調べたら子どもが二人いるようだ。

 声がうわずってた。


「はい! 青い空をはじめてみました!」


 キャッキャとうれしそうに語るルーちゃん。

 だがキャスターはもうダメだった。

 ボロボロ涙を流していた。


「ごめんね……」


「どうしたの?」


「ごめんねぇ……」


 ジャーナリストが水槽に抱きついた。

 これは俺も予想外だった。

 いや子どもがいる女性ジャーナリストをわざわざ選んだわけじゃない。

 クロノスの役所が連絡先を知ってるほどの著名人でたまたまスケジュールがあいてたから頼んだだけだ。

 だけどその効果は俺たちの予想を遙かに凌駕していた。

 だって……もう……まだライブ終わってないのに……役所のサーバーが問い合わせでパンクしそうなんだもん。


「さ、サーバー増強します!」


 自分も見たいだろうに。

 妖精さんは対応に奔走した。

 俺も財界人や政治家などからの問い合わせに追われた。

 いやちゃんと知らせたのよ!

 深刻さが言葉では伝わらなかっただけで!

 この日、クロノスではルーちゃんの話題で持ちきりになった。

 いやクロノスだけじゃない。

 太極国とラターニアもオーゼンへ抗議声明を出す。

 もちろん俺たちも抗議した。

 太極国とクロノス、それにマゼランの一部は非道な実験に抗議した。

 ラターニアはちょっとズレてて「契約外の虐待」への抗議ということになってる。

「子どもへの人体実験契約なんて無効でしょ」って話。

 ズレてるけど言いたいことは同じだ。ラターニアはそういう民族なのである。

 我々の常識は通用しない。

 鬼神国はさらにズレてて、「強くするための措置じゃない肉体改造に抗議する」というものだった。

 まー、キミらはそう言うよね。

 後にこの辺の解釈をめぐっての俺のノートから、銀河帝国に【外宇宙法】という学問ができるのだが、まーそれは俺にはあまり関係ない。

 とにかく……わからないけど味方になってくれたのだ。

 世論も俺らの味方だった。

 さらわれた子どもが哀れな姿にされたというストーリーに大衆は怯えた。

 だって自分の子どももそうなったら怖い。

 実際は、ルーちゃんがさらわれた子どもかはハッキリしない。

 もしかすると一から作られた可能性もある。

 でも俺たちはルーちゃんがさらわれた子どもという説を否定しなかった。

 否定する証拠もないからね。

 だから公式の場で聞かれたら「わかりません」と正直に答えた。

 するとクロノス中から「いなくなったうちの子じゃ……」という問い合わせが殺到した。

 イナゴテロの犠牲者もいたし、それよりずっと前、百年近く前の事件もあった。

 そうクロノスの大衆からすれば他人事じゃなかったのである。

 こうなるとデモなんかが頻繁に起きる。

 俺たちも止めなかった。

 交通整理や喧嘩をやめさせるくらいか。

 するとクロノス在住のオーゼン人が俺の写真を焼くわけだ。

 でも俺は鼻ほじスルーを決めこんだ。

 写真焼かれても痛くないし~。

 そもそも俺の写真などフリー素材!

 サングラスを書込もうと頬に傷を……ってお前ら小学生か!

 国旗焼いたアホは普通に罰金払わせて国外退去にしたけどね。

 ただ国民が黙ってなかった。

 国旗や俺の写真焼いたアホはその場でボコボコにされてた。

 そしたらオーゼンが「自国民保護が~」とか抗議してきた。

 知らん!

 外務省に普通に対処してもらって終了。

 なんかオーゼンくん、イライラしてないかな?

 余裕がなくなってきてる。

 さて米であるがクロノス産米は一瞬で我々の腹に消え、マゼラン米の収穫まで我らは飢えた狼と化していた。

 お好み焼きは作ったそばから強奪され、蕎麦粉のガレットも強奪。

 しかたなく蕎麦の実と豆でカーシャを作ったらタチアナが山賊になった。故郷の味らしい。

 こうして俺たちは米がなくてイライラ、クロノス国民はルーちゃんのことでトラウマ発動、国民全体がちょっと勇敢になりすぎていた。

 そんな感じでマゼラン米の入荷とルーちゃんの意識を体に移す実験日が近づいてきた。

 結局、この日になってもオーゼン人はこの実験によって自分たちが滅びると繰り返し抗議してた。

 もはや言葉は通じない。

 というか、かなり前からもう会話にすらなってない。

 だから俺らも無視してた。

 そして実験日が来た。

 ルーちゃんの体、人型ゾークの体が装置に繋がれていた。

 そしてルーちゃんも装置にセットされる。

 さすがにライブ中継はしないけど、記者たちがすでに会見場に押し寄せてる。

 俺はモニターで実験を見ていた。

 うーん……なんだろう?

 なぜか座敷童ちゃんの神社と神籬ちゃんのところにいかないといけないような気がしてきた。

 なんでだろう。

 フラフラと宮殿の玄関に向かう。

 すると玄関の外でバイクにまたがるおっさんがいた。

 末松さんだ。サイドカーまである。


「陛下、乗られます?」


「乗る!」


 これは神的なものの啓示かもしれない。

 俺たちが神社に向かってると、後ろから「こんガキャー!」と後ろからキレ散らかす近衛騎士団がやって来るのが見えた。

 ごめんね……思いつきで行動しすぎたわ……。

 そして神社の近くまで来るとクレアから連絡が入った。


「レオ、落ち着いて聞いて。オーゼンが実験をやめろって攻めこんできた」


「迎撃命令出して」


「了解」


 なぜにオーゼンはそこまで固執するんだろう?

 意図がわからん。

 神籬ちゃんは光っていた。

 神社の広場で座敷童ちゃんが待っていた。


「世界が変わるの」


 そう言われると神籬ちゃんがさらに大きくなっていく。

 俺は末松さんの顔を見る。

 末松さんも何が起こるかまでは知らなかったっぽい。

 口を開けて驚いていた。

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― 新着の感想 ―
こんな姿にさせられて、明るく嬉しそうに答えたのが『青い空を見られた』なんて、何でもない当たり前の事で… 泣くわこんなん!! 涙が止まらんわ!!
「あと数分で世界が変わる」 「世界が変わるとは?」 「知らんのか」 「私にもわからん」
末松さんギャグ補正でさらに強化されてるんかな
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