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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第五十四話

 帝都宮殿前駅に到着。

 民間人から地下道で脱出する。

 兵士にはかなりの被害が出た。

 だけど俺が戦ったあとから急に盛り返したらしい。

 とは言っても戦艦型には手も足も出ないのは変わらない。

 血まみれの俺が降りると兵士たちが敬礼した。

 いや俺まだ軍の正式な階級ないんですけど。

 だけど期待した目で見られる。

 めっちゃ見られてる。


「なにかポーズでもしてやれば?」


 ケビンが余計なことを耳打ちした。

 もー!!!

 しかたないにゃー。

 俺は拳を上げる。


「開発、繁栄、勝利!!! 帝国に栄光あれ!!!」


 なお単語を羅列しただけで勝利を約束したわけではない。

 俺は嘘はつかない主義なのだ。

 そして最後の【帝国に栄光あれ】は定型文だ。意味などない。

 だけどウケた。大いにウケた。


「うおおおおおお! レオ!!! レオ!!! レオ!!!」


 人気者になったもんだ。

 地下鉄のホームから地下道に入る。

 すると礼服に着替えたレイモンドさんが待っていた。


「レオくん迎えに来たよ!」


「無事だったんですね」


「ああ、頭の皮切っちゃってさー」


 そう言うとレイモンドさんは後頭部を見せてくれた。

 ナノマシンで修復したようなあとだが髪の毛がなくつるっとしてる。

 ……頭のその辺の皮全損ですね。怖ッ!!!

 頭の皮はいだとかマジで怖ッ!!!


「はっはっは! 少し間違えたら死んでたよ! まだクローンになりたくないからねえ」


「笑えねえ……」


「君らには借りができた。なんでも言ってくれ。僕のできることなら手を貸すよ」


 あれだけのことがあったのにレイモンドさんは笑っている。

 この人……本当に善人だわ……。

 助かってよかった。


「あ、そうそう。さっき辞令が出て中佐に昇進だって」


「おめでとうございます。功績が認められたんですね」


「それだったらよかったんだけどさー……ここだけの話なんだけどさ。クローン情報が納められてるサーバー拠点がいくつも破壊されたらしくてさ……僕の前任者の中佐もクローンを作れなかったらしい」


「……うわーお、えっと前任者は?」


 話の流れ的に殉職したんだろうけど。


「サーバー拠点の軍事基地で戦ってデータごと吹っ飛んで……って勘弁してよ! 僕に指揮なんてできるわけないよ!!!」


 うっわー……。


「なにかあったら言ってください。お互い生き残るために協力しましょう!」


「うん、そうだね!!!」


 なんだろうか。

 レイモンドさんとは友人になれそうだ。


「じゃ、殿下の所に案内するね。あ、そこの君は適当に休んでて」


「了解です! レオ、あとでね~」


 いったんここでケビンと別れる。

 レイモンドさんと二人きりだし失礼にあたるかもしれない質問をするか。


「どうして中佐が案内役なんですか?」


 なんかもうちょっと中佐っぽい仕事があるんじゃないかな?

 作戦会議とか。


「はっはっは! なぜ僕が案内役かって? 僕にできるのは書類仕事と使いっ走りくらいだからさ!!!」


 この姿勢、見習いたい。

 俺の一番よくないところは戦闘ができるって周りに思われてるところだろう。

 このくらい周囲から期待されないように振舞いたい!

 レイモンドさんについて行くとホテルの廊下みたいな区画に入る。

 警備の兵士が俺を見て敬礼する。


「さすが、かの有名な【婿殿】。はじめて来たところなのに顔パスだねえ」


「あ、中佐じゃなくて俺のせいなんですか?」


「そりゃそうでしょ。君は皇族の婿なんだから。ここは皇族の私室エリアだよ。本来なら僕なんかが入れる区画じゃないよ」


 ノコノコ歩いて行くと警備兵が両脇を固める部屋があった。


「レオ・カミシロをお連れしました」


 レイモンドさんがそう言うと護衛が中に確認してくれる。

 するとメイドさんが扉を開けてくれた。


「では私はここで。帝国に栄光あれ!」


 レイモンドさんは元気よく定型の挨拶をすると行ってしまった。


「レオ様。こちらにどうぞ」


 メイドさんに案内されて中へ。

 すると小型の猛獣が組み付いてきた。


「生きておったか!!! 心配したぞ!!!」


 猛獣だと思ったら嫁だった。

 嫁はドレスを着ていた。

 前の胸のところがすごい開いたドレス……の新しいやつだ。

 オートクチュールとかいうやつらしい。

 上級貴族や皇族クラスになると一回キリで使い捨てなんだって。

 だから耐久性はいらんそうで。

 よくわからない世界だ。

 俺がわかるのは嫁の平たい胸をもの凄い努力で寄せて上げてるところくらいだろう。

 おっぱいらしきものが観測できる。

 涙ぐましい。


「似合ってるね……って血がついたんじゃ!!!」


「かまうものか! 英雄の勝利の血じゃ!!!」


「戦艦型には勝てる気がしないけどね」


「カカカカカカ! 安心せよ。この惑星最強の砲を用意させておる」


「うわーお、すっげー! じゃあ俺は寝てていい?」


「ダメじゃ。一撃放つのに時間がかかる。一発でノードを破壊できるかわからぬのじゃ。突撃してノードを破壊したら寝てもいいぞ」


「つまり一発ぶん殴ったらそこの穴から侵入しろと?」


「必然的にそうなるの」


「死ぬ!!! 絶対死ぬ!!!」


「たとえ死ぬとしてもやらねばならぬ。失敗したら死じゃ」


「……なんでよ? 逃げればいいじゃん」


 実は逃亡もプランにある。

 ゾークに滅ぼされる帝国を見捨てるのはさすがに精神衛生上無理なのでいったん棚上げしてる。

 だが帝国がその気なら見捨てればいい。


「そうじゃない……。いいか、他に漏らすなよ」


「なによ、もったいぶって」


「妾の皇位継承権が七位になった。本来ならありえぬが戦時の特例で通ってしまった」


「なぜに七位?」


「戦争で皇族が減ったのもあるが……妾から上はみな軍の役職についておる。妾は私兵軍じゃがな」


「嫌な予感しかしねえんですが」


「当たり前じゃ! ここで使えないヤツだと思われたら処刑か暗殺が待ち受けておる!」


「極端すぎる!!!」


「権力の継承などそんなものじゃ!」


 ……マジかよ。

 ひでえ話だ。


「つまり……最強チームだと思われればいいんだな」


「うむ。婿殿の最強伝説を作るのじゃ!」


 ヴェロニカルートはゾーククイーンを倒せばハッピーエンドだ。

 皇帝にはなったりならなかったり。

 ……クイーン倒すよりはマシか。


「しかたないにゃー」


 ここで泣きごと言ってもどうにもならない。

 俺は突き進むしかないのだ。

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