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第五百三十九話

 おばちゃんが海苔のサンプルを持ってきてくれた。

 生と乾燥させたものと板海苔に加工したもの、それと海苔の佃煮だ。

 海藻じゃなくてバクテリアらしい。

 スイゼンジノリみたいなものかな?

 あれは淡水だけど。こっちは海水。

 まずは生を食べてみる。

 アオサみたいな風味だ。美味しい。

 乾燥したものも美味しい。

 海苔の佃煮は絶品だ。


「おばちゃん最高ッス!」


 親指を立てる。


「ねえ、なんで黙ってたの?」


 クレアが不満そうだ。

 まー、クレアが暴走するってのもあるけど……。


「植えた季節が遅くて少しか取れない予定。試験栽培ってことで」


 クロノスじゃ栽培できるかもわからなかった。

 本当にただのテスト栽培なのだ。

 全滅覚悟でデータを取るつもりだった。

 思いつきのプロジェクトなので田んぼが完成したときには時期が遅かったのだ。

 海苔はクロノスでも食べられてるのを知ったのが最近だ。

 そもそも田んぼも海苔の養殖場も趣味のプロジェクトだ。

 ガチ勢のクレアが聞いたら「植える時期が遅い!」って怒られただろうし。


「なお、こういうのもある」


 川海老である。

 ザリガニじゃない。

 小型の淡水エビだ。

 それをから揚げにしたものを配る。


「田んぼに自然に集まったエビ。クロノスの人たちはあまり食べないけど毒はなかった」


「うおおおおおおおおおおおおおッ!」


 イソノが号泣した。

 中島もむせび泣く。


「な、なによ……」


「クロノスで……冷凍じゃない和食が食えるなんて……」


 たしかにウドンや蕎麦や鍋類はあるけど、こういうものは作るしかない。

 士官学校勢がむせび泣く。

 エディまでしんみりしてる。

 ミネルバちゃんやハナザワさんたちも涙してる。

 そこまでぇ?


「え……じゃあこれは出すのやめとこうかな?」


 とっておきがある。

 すると嫁ちゃんにガシッと肩をつかまれた。


「なにを作った? それは聞いてないぞ」


 ゴゴゴゴゴゴゴという圧がかけられる。


「あ、はい。陸のものですが」


 おばちゃんが緑色の塊を持ってきてくれた。


「お、おま! それは!」


 エディまでもが声を上げる。

 緑色の塊はワサビである。


「これも試験栽培。醤油は帝国から持ってこれるから、こいつがあれば……」


「さ、刺身か? 刺身が可能なのか!?」


 嫁ちゃんはじめ全員の目つきが変わった。

 理論上は寿司も可能だ。


「み、水ワサビは?」


 水ワサビは水で栽培するやつだ。

 お高いやつ。


「用地の使用権の買収手続き中ッス」


 森林保護名目で買った山がある。

 買収中なのはそこの水の使用権だ。

 行政だから書類提出したりとか手間がかかるのよ。


「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺たちの心が一つになった。

 お刺身、それは心のパラダイス。

 幸い、マグロっぽい味の魚、アジっぽい魚、サバっぽい魚は発見した。

 イカっぽい味の貝も発見した。

 生で食べても大丈夫なやつ。

 あとはタコよね~。


「ふ、フグは?」


 イソノがモジモジしながら聞いてきた。

 好物か……。


「まだ」


「ぬおおおおおおおおおおおお!」


 いやだって、マグロとアジとサバが最優先だし。


「鮭は?」


 実家が純和風の食事なのに本人はパン派のメリッサに聞かれた。

 というか鮭なら嫁ちゃんの戦艦で淡水性のマスを養殖してる。

 それもいいじゃん。

 ワサビは資源的な問題で栽培できなかっただけだし。


「それがさー、いないんだよね~。今のところ。似たような味の魚はいるんだけど淡水なんだよね~」


 淡水魚は清潔な環境で養殖しないと寄生虫や病気が怖い。

 それだったら戦艦の養殖マスでいいよねって話になる。

 こうして俺たちは刺身定食、ワサビ付きの夢に近づいたわけだ。

 そして俺たちは知らなかった。

 俺たちがワサビを見て壊れてたころ、座敷童ちゃんの神社が突如として発光。

 それを見た、銀河帝国の神職さんはびっくり仰天。

 腰を抜かしながらも銀河帝国の文科省に通報。

 そう……あわてすぎてクロノスや軍に通報しなかったのだ。

 マニュアルがなかったのが原因ではあるが、こんなの予想してないよ!

 さらに、同時に末松さんが植えた神木。神籬ちゃんも発光。

 それを見たクロノス教の大司教が腰を抜かして転倒。病院に搬送された。

 そのどさくさでクロノス教はクロノス軍ではなく、クロノス議会の与党王党派に連絡。

 しかも司教の誰かの個人的繋がりの議員に連絡した。

 議員だって「木が光ってます」って言われても意味がわかるはずもない。

 環境省に連絡した。

 環境省は「うちじゃないかも」と国土交通省に連絡。

 国土交通省は「それうちに言われても……それより復興の工事の方が優先だし」と、そっと優先度を最下位にした。

 単純なミスと連絡体制の不備が重なり、精米した米と座敷童ちゃんへの奉納用の穂を持って帰ったときは俺たちの誰もその事実を知らなかった。

 すでに時間は夜。

 米を炊くわけには……。


「炊け!」


 血走った目のアホどもに圧をかけられる。

 冷凍のから揚げがあるのでそれをおかずに、ご飯のお供の佃煮とワサビを出す。

 川海老もから揚げにする。

 ワサビ丼も可能!

 ぬかりはない!

 調理は腹が減りすぎて手負いの獣みたいになったニーナさんと、うれし泣きをするケビンに任せて座敷童ちゃんのところに……。

 宮殿の社に座敷童ちゃんはいた……なにか神々しいのだが。


「レオくん!」


 おっとぉ、声がハッキリ聞こえる。


「格が上がったの!」


「お、おう。えっと奉納持ってきたんだけど」


「お米ー!」


 喜んでくれた。

 座敷童ちゃんは前みたいな子どもっぽいなにかではない。

 人間の姿。

 その服まで神話の神っぽくなってる。

 俺が考えてると末松さんが来る。


「参上つかまつりました」


 俺じゃなくて座敷童ちゃんに言った。

 その手にはラターニア向けに輸出してる大吟醸のお酒様。

 それをどこで手に入れたのか神酒徳利にそそぐ。


「レオ陛下。拙者の家は元々は神職であったと聞いております。と言っても拙者は正式な教育は受けておりません。これが正しい儀式かはわかりません」


「いいのー。大事なのは気持ち」


 座敷童ちゃんが返事した。

 ……末松さんの奇行の数々はこれだったのか!?

 害がないからスルーしてたけど意味があったのか!

 こうしてクロノスを守る守り神……宗教が違うからどう位置づけするかわからない。

 とにかく神的なイベントが起きたのだ。

 そう……そして連絡ミスが事態を複雑にする。

 俺たちの様子をゼン神族のスパイが報告した。

 すでに俺たちが理論上不老不死が可能な技術を完成させたことは知れ渡ってる。

 銀河帝国の宗教感的に不老不死を拒否してるが、ゼン神族は俺たちの切り札とにらんでたみたいだ。

 その我らが米に執着した。

 しかも神殿が光ったなどの報告多数。

 俺たちよりも先に報告が行ったようだ。

 そしてゼン神族は攻撃対象を米の生産施設にしたのである。

 そのときはまだ誰もそんなことを知らなかった。

 ただ……。


「婿殿ご飯だぞー! って、ええええええええええええッ!」


 嫁ちゃんも座敷童ちゃんを見て度肝を抜かれた。

 ここで最初の異変に気づいた。

 そして遅れてクロノスの国営放送のニュースで社と神籬ちゃんの異変に気づいたのだった。

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― 新着の感想 ―
なんというピタゴラスイッチ、いやドミノ倒しと言うべきか……?
大東亜戦争の情報流出に関してですが、あの辺りはガッツリ映像データで証拠満載なデータ残る(沖縄戦で飛行場への道案内やってる映像残ってる)半島労働者に紛れた内通者もさる事ながら 海軍や陸軍近衛にもしかした…
情報管理が甘いところは旧日本軍みたいだねぇ(笑) 陸軍は自分たちの不祥事(横流しなどの汚職)を隠すために情報隠蔽していたけど、作戦行動は韓国系日本軍人により米ソに流れていたのだし、海軍は暗号を(陸軍が…
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