第五百三十六話
宮殿につくと嫁に呼び出される。
俺が「座りたくないでゴザル」と謎の拒否姿勢を見せてる玉座に座ってる。
なんか不機嫌だ。
「あ、はい」
とりあえず正座。
見よ! クロノス国民よ!
大公まで登りつめてもこれが現実だ。
日系人の嫁への弱さよ。
「婿殿」
「あ、はい。ごめんなさい。愛してます」
「なにを謝っておる? 婿殿はよくやってるぞ」
「うん? 俺、怒られてるんじゃないの?」
「怒っておらぬ。ただ……とうとうこの日が来てしまっただけじゃ」
「やだ怖い。なによ?」
いつも余裕のある嫁ちゃんが神妙な顔してる。
「結婚せよ」
「嫁ちゃんとすでに結婚してますが?」
なに言ってんの。
籍入れたじゃん。
「クレアにメリッサにレンのことじゃ!」
そういや婚約から話が進んでなかった。
だってみんなそれぞれ当主になったのよ。
で、俺は銀河帝国大公にしてクロノスの君主なわけ。
かなり難航すると思うのよ。
その序列をどうするかとか。
クレアは自分自身がクロノスの農業を握ってるし、カミシログループの貿易事業なんかもやってるし。
はっきり言って実業界のプリンセスである。初期の段階で大手商社を入れたせいか、彼らは俺を身内扱いしてる。
メリッサは商売はからっきしだけど、公安&警察派閥幹部のお姫様だ。
彼らが俺を支持してるのはメリッサを嫁にするからだ。俺は公安や警察の身内なのである。
さらにレンは旧公爵家の生き残りだ。
公爵会を滅ぼした俺が旧公爵家の報復を受けてないのはレンを嫁にするからだ。
これによって「公爵会はつぶすけど旧公爵家をないがしろにしない」という建前を信じてもらってる。
つまりレンを嫁にすることで旧家の身内扱いしてもらってる。
さらにレンの場合、ビースト種差別撤廃のアイコンになってる。
ビースト種にとっては女神扱いなのだ。庶民にとっても救世主クラスの扱いを受けてる。
だから嫌がってるんだけど!
みんなの立場は嫁ちゃんの力になってるわけだ。
嫁ちゃんは軍、公安&警察、実業界、さらには上級国民に庶民まで味方につけてるのである。
要するにただゾークに勝利しただけじゃ、群雄割拠、戦国時代の到来だったわけだ。
俺の女癖の悪さにより奇跡のバランスで銀河帝国は安定したのだった。
そう、俺がなんにも考えないでやったことは、まさに「政治的思惑のないハーレムなぞあるか!」状態だったわけである。
やはり欲望のままに行動するのが一番正しいのだろう。
そう! このイモも! このイモも! このイモも! 全部俺の……。
「あ、お芋もらうね」
メリッサに強奪された。
「芋持ってきてくれたんだ」
クレアも持っていく。
お芋ちゃん……。
「はいヴェロニカちゃん」
「おう悪いな」
クレアが当然のように嫁ちゃんに渡す。
「旦那様、いつもありがとうございます」
レンも……。そんな感謝されたらケチなこと言えないじゃん!
いいもん。お芋食べるもん。
で、政治の話。
クロノスだってタチアナがいなきゃ、こんな簡単に統治できたか疑わしい。
あ、そもそもワンオーワンがいなきゃ終戦もできなかったのか。
うーん、俺、戦ってただけだわ。
これが英雄と宣伝される男の真の姿である。
というわけで、結婚するとしても誰が最初にするとかでバチバチに権力争いがされてる最中ってわけ。
怖いよね。
「できれば……まだ一人占めしておきたかったが……どの勢力も血走った目でまだかまだかとうるさいのじゃ! ほれ入れ!」
クレアにメリッサにレンが部屋に入ってくる。
「はい書類」
婚姻の書類が送られてくる。
三人のものそれぞれにサインして役所に送信と。
「ふふ、ためらわないんだね」
メリッサが笑う。
「そりゃね~。俺はみんながいなきゃなにもできない男だし~」
「あははは。嘘つき」
「いやいや感謝してるのは本当。ねえクレア、レン」
「もう、そうね。みんなで幸せになろうね!」
するとレンも応えてくれた。
「そうですね。旦那様のお嫁さんになったわけですし……ビースト種の大王も辞任して……」
「それはダメじゃ。レンしかできぬ」
「そんなー!」
嫁ちゃんは今日も非情だった。
「それでさー、嫁ちゃん。みんなの結婚式は?」
「妾との結婚式の後じゃな」
「いつ頃になりそう?」
「いま式場の惑星開拓してるとこじゃ。少なくとも来年以降じゃな」
「話を聞くたびに規模が大きくなっているのですが?」
「婿殿が偉くなりすぎてるからな。身内とはいえ一国の王じゃぞ。どんどん規模が大きくなって計画の見直しだらけじゃ」
惑星一つ会場にするのか……。
俺も偉くなったものだな……。
「座敷童ちゃん……こと……船魂様の神社も建設中じゃ。我が帝国の守り神として奉る予定じゃ」
座敷童ちゃんも出世してた。
じゃあいいか。
というわけで、おかんに報告。
分家当主のサム兄より先におかんに報告だ。
これだけで我が家の力関係を察してくれ。
我が家の暴君が一番恐いのだ。
「母上、結婚しました」
「通知が来ましたよ。レオよ……わかりますね。男なら全員を幸せにするのです。もし泣かせたら、私がお前の不必要にぶら下がってるものを切り取りに行きます」
「あの……本気で怖いッス。冗談に聞こえねえッス」
「私が冗談を言うとでも?」
なぜかおかんは両手持ちの剪定ばさみを持ってシャキーン。
怖いわ!
「あ、はい。皆さんをハッピーにいたします! 結婚式が決まったら知らせますので」
「期待してます」
通話終了。
自然と内股になっていた。
やだ、もう、うちのおかん!
子育て雑なくせに義理人情責任だけはたたき込むタイプ。
そんなんだから長男は弱々しく……あ、そうか長男が学力偏重でああなって、次男を自由に育てたらおバカヤンキーになって、三男を男らしくしつつ義理人情責任を重視して育てたのか。
で、あまり干渉しすぎるのはやめとこうと子育て丸投げと……。
要するに極端から極端に行ったのね。
俺も親の気持ちが少しはわかる年齢になったということだろうか。はっはっは。
「それともう一つ」
「あらやだ。まだあるん?」
「婿殿が雑木林で袋栽培で勝手に育ててた芋な。没収な」
「なん……だと……」
「袋が破けて汚いのじゃ! 畑借りたからそっちでやれ!」
く、軟弱な袋め!
ワンシーズンしかもたなかったか!
でもいいや。
「もーしょうがないにゃー」
これで栽培の許可は出た。
もうちょっと暖かくなったら夏野菜植えようっと。
「クレアしゃん……」
熱い眼差しを向ける。
「そんな目で見ないで! わかったから! 手伝ってあげるから!」
「うわーい!」
ということで俺はとうとうハーレムを手にしたのである。
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