第五百三十一話
アマダきゅんの件はかなり時間がかかる。
もう、やりたい放題だった麻呂の時代とは違う。
嫁ちゃんはちゃんと手続きを踏む。
上司というか一番上まで巻き込むでしょ。
どこかの家の後見を受ける。
侯爵家か公爵家か。
俺が嫁ちゃんと手続き無視して結婚できたのは実家が侯爵家だからだろう。
アマダは俺がバックなのでカミシロ大公家で後見。
すると軍と警察のトップが大慌てで後見に入る。
少将の俺だけでもいいのに、中将大将閣下やらよく知らん官僚やらが後見人に連なった。
警察はアマダより上が全員後見人に。
おまけに「遅れちまったぜ!」と外務省関係者がワラワラ後見人に名乗りを上げる。
なんかね、中将大将閣下は俺のときに後見人になってくれたのよ~。
退官した前の大将閣下もね。
あくまで善意で。
そのころ俺は肩書きは無能と名高いカミシロ家の三男だけだったし、嫁ちゃんは皇位継承権下位だったわけよ。
皇族との結婚といってもそんなもんだったわけ。
そしたら俺が出世してこの騒ぎ。
つきあいで買った株が気がついたらとんでもない額になってたみたいな話である。
それで次の大型上場がアマダくんだったということである。
もう国家のビッグイベント扱いである。
連日報道されまくり。
『いままで日の目を見なかった皇女はアマダの秘書官だった』というストーリーである。
微妙に間違ってない。
世論はお祝いムード。
もはや嫁ちゃんすら事態をコントロールできなくなった。
もう俺シラネ。
さてさて今度は実験体ちゃんだ。
大丈夫かは検証中。
実験体ちゃんの意思の確認というかカウンセリングも繰り返しながら調整中。
いやほら、性別とか、わからないことだらけだもの。
しばらくは荷物運搬用のカートでのお散歩で我慢してもらってる。
さて、クロノス公都に冬が来た。
嫁ちゃんは宮殿にある俺の家に入り浸ってる。
銀河帝国皇帝がこっちにずっといるのどうなのかな?
夫婦なんだし……まあ、いいか。
さーて冬の話である。
あれは夏だっただろうか。
「冬になったらスキーしたいね」
俺がポロッと言ったわけである。
それを誰かが聞いてたのだろう。
おそらく宮殿の文官だろう。
その文官が民間のどこぞの民間企業の担当者との雑談で俺の話をしたわけだ。
そしたら社長さんの耳に入り、大手土地開発企業数社共同でのビッグプロジェクトに発展したのだ。
クレアに怒られた……。
俺は悪くないと思うのよ。
銀河帝国の文化はすでに本や動画で伝わってる。
スキー文化はなかったが競技ビデオやラターニア用ドキュメンタリーで学習。
さらにスキー用のシミュレーターもあるわけである。
ということで更地だらけの公都星に大規模スキーリゾートが誕生したのだ。
スキーだけだとキツくないって思うけど、夏は海で集客するんだって。
なんか知らんとこで俺が投資してたらしく、大株主なんだって。
もう俺の個人資産は把握できないレベルに達した。
知らにゃい。
……夏も来て応援しよう。
そしたらレオカミシロ関連の大規模プロジェクトって話になって、ラターニアや太極国から観光客が大挙して押し寄せた。
予約でいっぱいである。
それでもオープン前に招待された。
はっはっは。
ということで、みんなでスキーである。
ベルガーさんとカチヤは欠席。
例の遺跡の研究で忙しいみたい。
バスで移動。
現在クロノスの治安はとてもいい。
仕事は多いし、真面目に働いてれば人生良くなるという考えが世間に浸透してきている。
なので襲撃もされない。
一人くらい陰謀論に染まったものが殺しに来るかと思ったのに。
今のところ襲撃の心配はない。
あっても鬼神国人の腕試ししかない。
なお鬼神国人の腕試しに関しては、たとえカメラが回っていようとかまわずボコボコにしてる。
それを見て、なぜかクロノス国民は「私たちもこうあらねば!」と間違った解釈をしてる。
そのせいでカトリ先生が弟子たちに運営させてる道場があちこちに作られた。
いまやカトリ先生はクロノスと鬼神国で名を馳せる実業家である。
だがカトリ先生は金に頓着しない。
「俺は剣さえありゃ食うに困らねえ」
とポーンっと銀河帝国や各国の被災者支援団体に寄付しまくってる。
あまりに多額のため、各国では財団を設立したくらいだ。
この傍若無人極まりないおっさんが剣聖とうたわれる謎の一端が垣間見えたような気がする。
「いいかレオ、武人なら武のことだけ考えてろ」
「自分、本業が迷子状態なんですが」
軍人でしょ、王様でしょ、銀河帝国皇帝の婿でしょ、宇宙怪獣カワゴンでしょ。
ほら迷子。
「お前の場合、それでいいかもしれんな」
という……ひどすぎる話を経て、スキーへ。
まだ鉄道路線は復旧してないので、移動は飛行機とバスである。
カトリ先生や末松さんなどのおっさん組はスキーなどせず飲み会へ。
高級店のシェフを……嘘ッス。
軍にいた元高級店のスタッフとクロノスのお店にがんばってもらった。
貴様ら肝臓をいたわれ!
俺たちはスキーへ。
実験体ちゃんことルーちゃんは保温器使いながら見学。
……ちょっと待て。
「ワンオーワン、ルーちゃんをスノーモービルに乗せるのやめなさい」
コケるから!
事故が起きるからやめてー!
「だめでありますか?」
上目づかい……や、やめろ!
俺が悪いみたいじゃないか!
「俺が車両持ってくるから……」
はい、ルーちゃんとお散歩。
座敷童ちゃんも車に乗る。
無限軌道の雪上車だ。
砲台ついてないだけの戦車とも言う。
ふふ、拙者。
軍の車両はほぼ全て扱えるでゴザル。
「スゴイ! ハヤイ!」
ルーちゃんも座敷童ちゃんも喜んでる。
うーん、こういう日々が欲しかった。
ゼン神族とか言うアホどもと関わらず、嫁ちゃんやみんなと遊んでいたい。
一周して帰ってくると嫁ちゃんがスノーボードをやってた。
あら上手。
俺を見つけるとすぐに来てくれた。
「ふふふ、シミュレーターでさんざん練習したのじゃ」
「すげえぜ嫁ちゃん! よ、全宇宙一のいい女!」
「ぬははははは! もっと褒めよ!」
そんな嫁ちゃんとは違い、可哀想なのが一人。
ズササーっと盛大にコケたのはケビン。
「前はできてたのにー!」
お胸が重いのだと思います。
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