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第五百二十七話

 実験体を仲間にして奥へ。

 実験体は動けるかすらわからないので、大がかりなプロジェクトで検証するしかない。

 うーん、どこぞの研究者のおもちゃにされたら嫌だな。

 俺は道義に反するだまし討ちをしないという評判である。

 その評判があるからこそ様々な勢力が交渉に応じてくれるのである。

「なめられてもいいからお話しするもん」系の指導者はデメリットばかりじゃないってわけ。

 怖いお兄さんはそれだけで戦略の幅が狭まるのである。

 恫喝しかできなくなる。

 うーん……。なんか嫌な予感がする。

 実験体ちゃんを俺の同盟相手ではなくおもちゃにしていい肉と思うやつが出そうな気がする。


「妖精さん、実験体ちゃんが通報できるようにしてくれる?」


「はーい」


 これで安心。

 奥に到着。

 ゲートがあった。

 もー、やだなー。

 うねうね脈動する壁からコントロールパネルを探し出す。

 あるじゃん。

 ドライバーでこじ開けて配線を繋いで……。


「妖精さんハッキングお願い」


「はいはーい」


 こういうタイプのシステムなんて怖くねえぞっと。

 さーてゲージが50%までいったしそろそろ……。

 ゲージを無視してドアが開く。


「あ、中の人が開けたみたいですね」


 中は研究室みたいになってるのが見える。

 なんか作業を邪魔された感がある。

 むかついたのでふざけた感じで侵入する。


「ちわーっす三河屋です」


 中に入ると研究室風の部屋が禍々しい石壁の部屋になった。

 なんだ。画像を投影してただけか。


「愚かな侵入者よ……立ち去れ……」


 しわがれた男の声だ。

 いや……しわがれてるんじゃない。

 これプローンの発声だ。

 声帯がないから似たような音を別の器官で発声させてるやつ。

 プローンは若い声も出せたが……もっと人工的な音だ。

 こりゃ人型は期待しない方がいいな。

 ずるり……ずるりと音がした。


「侵入者よ。いまなら命まではとらぬ」


 って言った瞬間、殺気を感じた。

 触手が俺めがけて飛んできた。

 手でつかんでいいかわからない。

 当たらないように回避。

 ついでに剣で触手に斬りつける。


「この嘘つき」


 俺がそう言うと奥から、ずるり、ずるりと肉を引きずるものが現われた。

 それは巨大な顔だった。

 巨大な顔に触手がついた生き物だ。

 顔は赤ちゃんみたいな顔をしてる。


「助けて!」


 ノイズ混じりの子どもの声がした。

 次の瞬間、化け物が俺に何かを吐いてきた。

 するっと避ける。

 おっと、汚染物質じゃん。

 あ、そういうことね。

 こいつ、そういうタイプの罠なのね。

 人間の言葉を模倣して隙を作って攻撃してくるタイプの捕食者。

 実験体ちゃんと違って話し合いが成立しないやつ。


「レオ・カミシロ・クロノスの名において命ずる! 総攻撃せよ!」


 俺はわざと名前を出して命じた。

 迷ってる兵士はいるだろう。

 こういう精神系のトラップは悪辣なのだ。

 こういうときは「俺が責任取る」って言ってるやるのよ。

 実際効果はあった。

 迷っていた兵が攻撃を始める。

 でも銀河帝国人はなんだかんだでお人好しが多い。

 攻撃が一瞬遅れたが、俺の号令で立て直した。

 非情なのはメリッサにレン。

 俺の号令より前に攻撃してた。

 こちらは空気と殺気を読む武人らしい行動。

 ジャストタイミングはクレア様。

 俺の号令前に攻撃用意。

 号令が聞こえた瞬間、攻撃を始めた。

 完全にプロの仕事であった。

 甘ちゃんは男子だけじゃない。

 ケビンも動揺してた。


「ケビン! 自爆ドローンで攻撃!」


「う、うん!」


 これはしかたないよね~。

 ケビンは命を救う医者でもあるんだし。

 どうしても迷いがあるだろう。

 これは我が隊の弱点でもある。

 これはわかってたのよ。

 いつか子どもや女性を騙った敵が現われるって。

 俺たちの弱点なんて、まさにそこなわけでさ。

 それでも初戦としてはいい感じだ。

 俺が本当に手段を選ばない方法で戦争するなら……というか敵にやられたら負けるなってパターン……内緒で妖精さんと指揮官シミュレーターで練習してるシナリオがある。

 そのシナリオの敵は子どもの形をしてる。

 子どもの声で助けを求めて……その隙を突いて攻撃してくる。

 そのシナリオで仲間が前線に出てた場合……数分でケビンにエディにイソノに中島が死亡。

 そこから総崩れだ。

 いまのところ解決方法はない。

 だけどその運命も変わるかもしれない。

 いい練習だ。

 触手が飛んできた。

 俺は微動だにせずパーソナルシールドを構える。


「陛下!」


 レイブンくんが触手を斬り落とした。

 動いたの見えたんだよね。


「今回は俺は指揮な。みんな、がんばれー!」


「嘘でしょ!」


 そう言いながらメリッサがグレネードを投げた。


「隊長が言ってた弱点ってこれか!」


 おっと、前に指摘しても信じてなかったくせに。


「いーや、俺が想定してたのは『子どもの姿形してる兵器』。助けて~って叫びながら自爆攻撃してくる」


「隊長さー! 本当に想定が悪辣すぎるでしょ!」


「こっちは何度もシミュレーターで地獄を見たのよ~! ほらメリッサがんばって!」


「クッソ、オラァ! 気合入れろ! あれは声をマネてるだけだ!」


 メリッサとその近衛騎士団が戦う。

 一方、汚染にさらされたけど参加してるエディはもう頭を切りかえてた。

 末松さんがグレネードランチャーを装填しエディに渡す。

 バケツリレー方式で怪物に攻撃していく。

 ……末松さん恐ろしい子。

 うちの騎士団にも末松さんが欲しい。

 レンも素早く攻撃してた。

 ビースト種たちと連携して追い詰めていく。

 それにしても~。


「攻撃した側から回復してない?」


 前にそういうのいたよな。

 メリッサの地元で戦った肉。

 ケビンの自爆ドローンが爆発する。

 肉は子どもの声で悲鳴を上げる。

 だが死なない。

 肉が増えていく。


「あー、妖精さん。実験体ちゃんと話せる?」


「装置置いときましたよ。はい接続」


「ねえねえ、奥のやつどうやって倒すの?」


「アレ……イナゴ。ヤキハラウ」


「それは実験体ちゃんが巻き込まれちゃうかな」


「カマワナイ。ソラミルノアキラメタ」


 俺の勘が警告を発してる。

 絶対にそれはダメだ。

 イナゴイナゴイナゴ……。

 あ。イナゴコロリがあるわ。


「実験体ちゃん、イナゴ用のカビは大丈夫」


「ワレハイナゴトチガウ……モンダイナイ」


「おっしゃ! ケビン、敵はイナゴと似た生き物らしい。ドローンでイナゴコロリ散布!」


「了解!」


 勝利が見えてきた。

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― 新着の感想 ―
非常に非情な決断をしないといけないような、辞退したい事態だ。 敵が子泣きじじいトラップだと帝国軍が壊滅する危険があるのですね。
なんだかんだで男子陣が非常になりきれないのね…。
今回はまだ有情、なんせ殺気を出してくれるんだから ホントの悪辣は親愛の情を感じさせながら自爆してくるから
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