第五百二十六話
床の穴を眺める。
「あちゃー……地下まで貫通してる」
やはり俺が出撃してなかったら死人が出てたと思う。
俺だからギャグですまされてるのだ。
どのルートからも到達できなかった地下が見えてる。
上層階になにか装置があるんじゃないかと思ったけど物理的に入り口ができたわけである。
地下には汚染物質を製造してる大元があるんじゃないかと思われてる。
なぜそれがわかるのか?
簡単である。どの階にも大元の装置がなかったからというだけである。
単なる消去法。
複雑な施設なのに案内図の一つもない。
おそらく、ごく少数の人材だけで回す施設なのだろう。
人の入れ替わりも少なく、外から来る人も少ない。
そういう施設なのだろう。
「とりあえず下降りる?」
「だね」
メリッサがそう言うとみんな同意する。
ここから降りる必要はない。
というかいつ崩れるかわからない。さっさと降りたい。
壊れそうな階段を降りて下に向かう。
途中、近衛騎士数人がコケた。
メリッサの近衛騎士、実家の道場の若い衆が階段を降りようとした瞬間、足場が崩れた。
「どわああああああああああああッ!」
そのままゴロゴロ階下に落ちていく。
ついでに他のメリッサ近衛騎士団を巻き込んだ。
階段落ちコントである。
あまりに酷いオチである。
「生きてるか~?」
メリッサが声をかける。
「な、なんとか……痛ってええええええええ!」
メリッサの近衛騎士団壊滅のお知らせ。
どうやら骨が折れたようだ。
軍用のナノマシンで治療開始したが……骨だしね。
骨折れると痛覚遮断しても動きが鈍くなる。
動けはするがここでリタイヤ。
他にも巻き込まれた数人が骨折。
ドクターストップでリタイヤである。
ケビンたちが治療するのだろう。
「このバカ! ……って怒りたくなるけどさ。……隊長がいるせいで先に行くと死にそうな騎士が事前に省かれたような気がする」
その可能性は俺も頭によぎった。
だって比較的技量が未熟なものだけが事故で省かれた。
クレアのところも新しく雇ったクロノス人の見習い騎士が食中毒でダウン。
だけどプロレス研究会繋がりで雇った鬼神国人はピンピンしてる。
レンのとこはビースト種でみんな強いから無事。
イソノのとこのプロレス教室勢も元気だ。
でも現地採用勢は事前に怪我やアクシデントで不参加だ。
うちの騎士団に至ってはカトリ先生に気に入られてるのでみんな元気に出撃してる。
「今回リタイヤした組は鍛え直した方がいいかもね」
「カトリ先生に相談してみるか……」
なおエディのところは欠席者ゼロ。
末松さん効果かもしれない。
一回に到着。
崩落した天井の穴から下に降りる。
ロープを降ろしてアンカーで固定してスルスル下に降りていく。
天井崩落に巻き込まれたアンドロイドがバラバラになっていた。
地下は工場プラントのような配管だらけの空間だった。
汚染が漏れてるだけならいいんだけどね~。
中を進む前に化学戦装備に穴が空いてないか互いに確認。
ヨシ。
地下を進んでいくと広大な空間に出た。
実験体が入ってたケースを巨大にしたものがあった。
「カエレ」
やだ。なにかが頭の中に直接話しかけてくる。
これ確実にヤバいやつだわ。
妖精さんレベルで。
「なにか悪いこと考えました?」
「なんでもないヨ。いつも妖精さんはカワイイヨ」
「そうですかー♪」
そうなのである。
我々は帝国を滅亡に追いやることのできるヤバい存在と共存してるのだ。
なにを恐れることがあるだろうか。
「カエレ」
もう一度頭に響いた。
だから大声で返事してやる。
「ここで帰っても施設解体するだけだぞ」
「コロス」
「殺せるもんならな。こちらは戦艦も人型戦闘機も待機してる。ミサイルで惑星ごと焼き払ってもいい」
そもそもゾークマザーみたいに異常な強さの個人ではないだろう。
それだったら惑星に到着する前に俺たち殺りにくるもんね。
「話し合う気になった?」
「コイ」
実験体の入った巨大なケースに近づく。
水族館だと大量の魚が泳いでるサイズだ。
そこには巨大な肉が浮いていた。
俺は肉に話しかける。
「よ、俺はレオ・カミシロ。クロノス大公国で大公やってる。お前は誰?」
「ナマエナイ……マット……オマエ、マットダナ……」
「知らね。お前だって自分自身がどこから来て、どういう生き物なのかわかるか?」
「ワレハ……ズットココニイル……」
「だろうな。なあ知ってるか? 俺はお前らが言うマットらしいけどな。自然に生まれた個体だ。実験体じゃない。俺たちは繁殖したんだ」
「シゼン……?」
「お前も外に出てみないか?」
「ジッケンタイ……ジユウナイ……」
「俺の仲間には同じ実験体の末裔。ゾークもプローンもいる。みんな自由だぞ」
カニもワンオーワンの自由にしろって命令でほとんどが眠りにつき、ごく少数はワンオーワンに与えた惑星で活動してる。
俺たちは迷惑かけなきゃ自由にしろと言ってある。
「ソラ、ミタイ……」
「いいよ。一緒に行こう。動かす方法考えるから待ってな」
「ワカッタ……」
はい交渉成立。
するとメリッサにクレアがひくついてた。
レンは「さすが旦那様です」と喜んでた。
「……なによ?」
「は、話し合いで解決した?」
「だって戦う必要ないじゃん。最初から敵じゃないんだから」
そもそもただ威嚇してきただけだ。
そりゃ家に知らんやつらが来たら警戒するわな。
いきなり攻撃してきたら殺すしかない。
でもそうじゃなかったのだ。
話し合いの余地はあるのよ~。
メリッサがぶるっと震えた。
「こ、これが……真の強者……本当に存在したんだ……」
なぜかウットリとする。
俺はよくわからんからスルーした。
クレアも様子がおかしい。
「さ、最強すぎる……」
なによ。
ま、いいか。
俺は実験体に聞く。
「なあ、キミを動かす方法はあとで考えるとして、汚染物質を止める方法わかる?」
「オク……ヤツガイル……タオセ……」
「ボスがいるのか。その奥に装置の元があると。ところでやつって誰?」
「ナレノハテ」
成れの果てね……。
あまりいい感じしないな。
置き去りにされた労働者だったらやるせない。
戦う気が起きない。
「ワレ、ツクッタ……」
よーし、やる気出ちゃったぞ~。
「じゃ、ちょこっと倒してくるわ」
がんばるぞいっと。




