第五百二十二話
兵士が銃口をオーゼン人の頭に突きつけたあたりで帰還。
「だめよ~めっ!」って止めた。
イナゴで国が事実上滅亡したクロノス人も激怒してる。
ガス抜きは必要である。
「殺さないでね~。ムカつくけどここは我慢。ちゃんと裁判にかけるからね~。クロノス公国軍は宇宙一規律の採れた最強の組織ね」
「陛下……だけど俺の女房はイナゴで……俺どうしても許せなくて……」
若い兵士がむせび泣いた。
他の隊員もつられて泣いていた。
みんな同じような境遇だ。
俺はハグして背中をぽんぽんする。
「なあ、損得で考えろ。殺されない。少なくとも裁判にかけてもらえる。これだけでも敵からしたら降伏しやすい。部隊の仲間の死亡率が下がる。俺たちはさ、これからそういうイメージで売っていこうと思ってるんだ。それにさ、これから大戦が始まる。こんな小物じゃない。いい子にして我慢できたら巨悪と戦わせてやる」
すると角刈りの隊長が真顔になる。
「約束してくれますか」
「おう、だから約束しろよ。死ぬな」
隊長も兵士も笑顔になった。
「陛下、一生ついて行きます」
「いらなくなったら追い出せって~。民主主義に戻れって」
「嫌ですね」
でも追い出すタイミング来ると思うよ。
経済政策失敗したり、戦争で負けたり、汚職まみれになったりね。
その辺は運だしね。
老化による判断力の低下もあるだろうし。
イナゴコロリの効果を検証するために地質調査。
イナゴのタマゴはカビに覆われてた。
イナゴコロリはカビでタマゴを殺し、生まれた後はイナゴコロリを接種すると消化液と反応して毒になる。
二段階で殺すのである。
しかも普通のバッタというか直翅目には効果なし。
消化の過程やタマゴが通常の生き物とは違うらしい。
遺伝子操作の末の脆弱性だろうか……いや違うな。
占領のために、わざと弱点を用意してたのだ。
イナゴで破壊してカビを撒いて安全にしてから占領する。
こういうのはセットで作るものだ。
それが野生化してるってことは……イナゴが生まれたのはこの惑星ってことか。
漏らしたのか、それとも元々存在してるのかはわからないけどね。
地下の遺跡こそイナゴの発生源かもしれない。
伝説の魔族扱いの我ら銀河帝国人だが……邪悪さで勝てる気がしない。
そんなわけで三日ほど掘るとようやく遺跡が見えてきた。
……とんでもない量の産業廃棄物の山と共に。
「この全宇宙の敵め……」
極限までリサイクル派のクレアがゴミの山を見てブチ切れてる。
惑星使い潰しだよね~。
いや俺たちも人のこと言えんのよ。
嫁ちゃんが皇帝になる前は惑星を汚染しまくって廃棄するなんてのが横行してた。
それができるのは公爵会なんだよね~。
実家のカミシロ家程度じゃ無理。
あいつらが滅びるのは必然だったような気さえする。
結局、権力が集中するとろくな事にはならないわけである。
汚染さえ止められれば資源の山なんだけどね。
これを資源化できれば都市を造れるほどだ。
「レオ……ゼン神族を倒そうね」
マゼランの支配者クレア様の血管がビキビキ浮いてる。
「あ、うん、はい。がんばろうね」
旧マゼラン軍の兵士もガクガクブルブル震えてた。
我らの中で一番恐い人を怒らせたな……。
化学戦仕様の戦闘服で遺跡に向かう。
クジの結果、組み合わせは俺と近衛騎士団とイソノ隊の班に振り分けられた。
野郎と同じ班とは珍しい。
イソノと向かう。
「汚染物質か……怖いな……」
イソノが珍しく真面目な声で言った。
俺と二人きりだとボケる必要がないのかイソノは真面目ぶる。
「だよなー。ほら、化学物質で自分の最終兵器的なものが縮むって……」
なので俺がボケ倒す。
「なにそれ怖い!」
「怖いよね!」
俺たちのやりとりを聞いてた部下たちは呆れていた。
これがクロノス大公と高官の真の姿だ!
遺跡は大きな門で閉ざされていた。
俺たちと他の班の連中はここで足止め。
休憩するほど良い環境じゃないけどね。
まずは門を開ける。
これはケビンのドローンに任せる。
どこかに制御パネルがある。
「制御パネルはないけど中の制御基板は見つけたよ。回路に直接つないで……はい、できた。ルナちゃんお願い」
「はーい」
妖精さんが中のソフトウェアを解析。
「ファームウェアは……こんなのセキュリティーのうちに入りませんね。はい解除」
解除する。
普通の国ならこれで解除できただろう。
でもここはマゼランなのよ。
「門、開きません!」
兵士があわててた。
あー、うん。そうだよね。
どうせ汚染物質で動作部分が壊れたんだろ。
みんなそう思ってたら案の定ケビンから報告が来た。
「ギアが錆びて癒着してるよ。剥離剤試すね」
「へーい」
壊してもいいんだけどさー、大学の先生に怒られるのよ。
調査したいって気持ちはわかるから尊重するけどさ。
「あ、開きそう……ちょっと待って! 罠だ! 避難! 全力で逃げて!」
もうね、結末はわかってた。
俺たちは逃げる。
いるのはよく訓練された兵士たち。
ふいの爆発コントであってもリアクションを取れるエリートだ。
さっと逃げると門が開いて汚染物質が含まれた液体がドバーっと流れてきた!
「みんな無事か!?」
「無事です!」
レイブンくんが答えてくれた。
「ごめん、門が開いた瞬間、あちこちから汚染物質が流れてきて……」
「まー、罠はあるかなって思ってた」
イナゴを作るくらい性格の悪い連中が作った施設だ。
罠の一つや二つあるだろう。
だから俺が出るんだけどね。
よほどのことじゃなきゃギャグになるから。
汚染物質で水たまりができちゃったので作業中断。
もうね、別のルートで侵入するしかない。
性格悪いな~!
「なあレオ、お前が先に全裸で地雷原走り回ればジェスターの能力で罠が発動しなくなるんじゃね?」
「貴様とは決着をつけねばならないようだな。強敵よ!」
はい喧嘩。
すると自分の班の点呼してたエディがやってきて俺たちのケツを蹴る。
「小学生かてめえら!」
「あ、はい」
大人しくするとエディが自分の班に帰っていく。
エディが帰ったのを確認してから俺たちはまたいがみ合う。
「レオ……てめえのせいで怒られただろが!」
「やーい、ばーかばーか!」
「お前も怒られてんだよバカ!」
するとケビンから連絡が来る。
「水を除去したよ」
「へーい」
こうして俺たちは再び遺跡に挑むのだった。




