第五百二十一話
イソノは素肌にトゲトゲつきの半袖の革の服。
筋肉を見せつける。
そこに頭悪そうなヘルメットを着用。
目の周りにはアイシャドウを入れる。
中島は眼鏡なのでフルフェイスのヘルメット。
ヘルメットをモヒカンにした。
被害者のエディは顔面に星のマークをペイントされた。
肩パッドつき革ジャケット着せただけじゃ品が隠せなかった。
俺は片乳ポロリの獣の皮にぱっつんぱっつんの革パンツ。
首からは謎の鎖をかけてる。
顔が優男なので現地人に借りた熊の頭のフード付きマントを羽織る。
金属製の肩パッドつき。
さらに目にアイシャドウを入れてつけドジョウヒゲをつける。
「オレ、イモスキ! うおおおおおおおおおおおお!」
戦斧を掲げる。
「うおおおおおおおおおッ!」
すっかり文化力の低くなった俺たちが雄叫びを上げる。
イソノがギターをかき鳴らすと火が放射された。
火炎放射器つきギターは必須。
この状態でオーゼン連合との会談に挑む。
だって会ったことないんだって。
バカだよね~。
あと事前情報としてオーゼン人はマゼラン人を『未開拓惑星の原始人』って思ってるらしい。
だからなるべく野蛮を演じる予定だ。
そもそもマゼラン語とオーゼン語では会話できない。
オーゼンはマゼランを心の底からバカにしてるのでマゼラン語排除運動という言葉狩りを実施。
その結果会話できなくなったんだと。
いいんだけどさー。
そういう自国を弱くする政策なんでするかなー。
軍艦なんかは見えないとこで待機。
保護した現地の人たちも『よくわからない労働させてる風』にして偽装。
ちょうど製粉する予定だったので、ファンタジー世界名物グルグル棒を回してもらってる。
俺たちはみんなマゼランの伝統衣装の世紀末ヒャッハー装備で村に駐留。
一部はマゼラン軍の格好をしてもらう。
オーゼンの担当者は悪代官風。
向こうも伝統衣装みたい。
越後屋風ではなく原色シマシマ模様。
奴隷商人風。
「ふしゅるーふしゅるー」
息がうるさい。
うーん……もうね一目見て心臓が悪そうだ。
顔むくんでるし。
ケビンを見る。
ケビンはマゼラン軍秘書官の格好。
ちょっと胸のサイズが合ってないような気がする。
ぱっつんぱっつんよ。
すると自分の胸を気にすることなくケビンは俺にささやく。
「ボクまだ研修医だけど……さすがに気になってしかたないんだけど」
「心臓の薬オーダーして」
「うん」
中島にアイコンタクト。
さすがに中島も気になったのかテントの外に出て医官に薬を容易するように指示を出す。
やだこの会談!
「うっ!」
おっさんがうめいた。
「ダイジョウブカ?」
これは片言のマゼラン語。
わざと伝わらないように話す。
「い、いえ……心配なされずに」
ニュアンスは伝わったようだ。
だけど、どう見ても大丈夫じゃない。
イソノがゴクリと息を呑んだ。
なんだろうか……この緊張感。
みんな敵の心配してるぞ。
ではまず遅延行為から。
「ジミナイインチョウカラシカセッシュデキナイエイヨウガアル」
俺がそう言うとイソノがラターニア語で通訳する。
どうせ伝わらん。テキトーでいい。
「お館様は『遺跡は見つかった。いま発掘してる』とおっしゃってます」
「ふしゅるー。それは上々」
「オタクトモダチトノホウカゴデート」
「お館様は『イナゴはまだか』とおっしゃってます」
「ふしゅるー。遺跡発掘のあかつきには首都星を滅ぼせる量をお約束いたしましょう」
「ナゼ、オタクニヤサシイギャルハソンザイシナイ!」
だんっとテーブルを叩く。
「ひい!」
「お館様は『今すぐ出せ!』とおっしゃられてます」
「い、いや……ですが……」
「ドウジンシミタイナレンアイダセ!」
斧を突きつける。
「ひい!」
なぜか俺の茶番を見た男が泡をふいた。
男の護衛の男たちと目が合う。
俺は笑顔になる。
「全員逮捕!」
護衛に殴りかかりぶちのめす。
イソノもエディも中島も護衛を制圧。
外にいた護衛は現地人が投網で捕獲。
グルグルマシンで作った穀物粉は食糧と交換。
高確率で汚染されてる。成分を分析した後廃棄予定だ。
ただおっさんだけはケビンが必死に蘇生措置してた。
医療ドローンの蘇生装置モードにしておっさんに繋ぐ。
心臓マッサージやらなんやらをドローンがやってくれる。
すぐに医官もやって来て大騒ぎ。
圧倒的なカオスである。
とりあえず事故はあったがオーゼン人を逮捕。
これでオーゼンを問い詰めればいい。
さーて尋問タイム。
心臓発作を起こしたおっさんは集中治療室行き。
なので護衛を尋問する。
「所属は?」
「マゼラン解放戦線だ!」
「うそつけ! 俺たちの格好もマゼラン語もわからなかったくせに!」
「クロノスの豚めが!」
豚と言われても俺たちだって純粋なクロノス人じゃない。
だけど兵士はどうかな~。
「ポクたちちょっと席を外すね」
ぽんっと悪い顔でクロノス人の兵士の肩を叩いてバトンタッチ。
「陛下への忠誠をお約束いたします」
クロノス人の兵士は笑顔で革手袋をはめる。
「殺すなよ~」
あたいら、ちょっとお花摘みに行ってくるわ。
「お、おい、俺は捕虜だぞ」
「うーん、だって正規兵じゃないんでしょ。だったら海賊だよね。ワシら宇宙海賊には容赦しないんじゃ。うんじゃのー」
「や、やめ!」
知ーらない。
レイブンくんもニコニコ笑顔だ。
トイレ行ってから寄り道。
現地人とレンのところに行く。
「あら旦那様」
「粉は?」
「いま分析器にかけてます」
「了解。皆さんもお疲れでしょう。休憩してください」
「女王様の旦那様はお優しい人じゃ……」
翻訳機越しでも悲痛な声だとわかる。
話を聞いたら俺の前にいた王様は暴君だったみたい。
税金払わないと村を焼く系暴君。
マゼラン人が来て真っ先に殺されたみたいだけど。
問答無用で都ごと焼かれたんだって。
たぶん面倒だから交渉もしないで上陸前にミサイル撃ち込んだんだと思う。
マゼラン人はやることなすこと雑だから文明人扱いされないんだと思うのよ。
オーゼンも似たようなもんだけど!
両国ともに怠惰で事態を悪化させるから嫌われてるんだと思う。
それ考えるとラターニアって相手に対して誠実だよな……。
「レンも休憩してて」
「はい。旦那様は?」
「あと十分くらい散歩したら尋問しにいく~」
殺しちゃう前に帰らなきゃいけないけど、中途半端で帰ると兵士の心が離れちゃう。
この塩梅が難しいよね。




