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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第五十二話

「じゃあね~」


 軍人とは思えないくらい軽いレイモンドさんは去り際にミネラルウォーターをくれた。

 ありがたや。ありがたや。

 やはり特別職は正義だと心に刻む。

 列車が走る。

 なぜ……列車に乗ると腹が減るのだろうか?

 軍服のポケットを漁るとエネルギーバーが二つ出てきた。

 大豆パウダーの生地にプロテインを練り込んであって、砂糖やら水飴やらがふんだんに使われている。

 謎キャラメル味でクソ甘い。

 事務職が食べ続けたら一年で成人病になると噂されている超高カロリーのやつだ。

 ゾークと戦争になる前は甘すぎて好きじゃなかったが、今は食べるとほっとする。

 動きすぎじゃ!!!


「食うか?」


「ん」


 ケビンに一つ渡す。

 ケビンも疲れていたのか無言で食べる。

 口の中の水分が持って行かれた。

 レイモンドさんにもらった水を飲む。

 一応スパイ対策にボトルを調べたが異物混入の形跡はない。

 人を疑わねばならない生活は心が貧しくなる……。


「よう、食うかい?」


 糸目の男がスナック菓子を渡してきた。


「あー、えっと」


「伊藤伍長ッス。普段は軍の広報部所属なんですけどこのご時世ですからね」


「レオ・カミシロです」


「知ってます。この列車に乗ってるって聞いたんでちょっくらインタビューしようかなと。ちょっと撮影しますね」


 そう言って伊藤はアクションカメラのスイッチを入れる。


「あのレオ・カミシロがいました~!」


「うぇーい!」


 もうヤケだ。

 パリピになる。


「君は本当にバカだな」


 なぜかケビンに怒られる。


「で、レオくん。この戦争どうなると思う?」


「自分はただの学生なんでわかりかねます。殿下のことを信じてます」


 訳「そういうめんどくせえことは嫁が考えるんじゃねえの?」


「ヴェロニカ殿下を信じてるってこと?」


「ええ、殿下あっての私ですから」


 歯をキラン。

 ふと横を見るとケビンが「適当なこと言ってんじゃねえぞ! 思考放棄してるだけじゃねえか! このバカ!」という顔をしていた。

 だってラスボス倒すのはエッジの役目だし。

 俺はこの首都の戦いで表舞台からは引退だ。

 絶対引退してくれる!!!

 嫁の裏方兼主人公にアドバイスおじさんになるのだ!


「なんという覚悟でしょう! この冷静さ! この客観性! そして帝国への忠誠心! 見習いたいものです!」


 まず当方に冷静さなどない。

 単に恐怖心が麻痺してるだけだ。

 毎回終わってからビビリ散らかしてる。

 客観性もない!

 だって当事者だもん。

 帝国は嫁の国盗りに手を貸すつもりだ。

 ある意味滅ぼすつもりだと思っていいだろう。

 何一つかすってないのウケる。

 さあこのまま列車で宮殿に……。


「うん? カミシロさん、なんか音がしないか?」


 伊藤さんが席を立った瞬間。

 天井が吹っ飛んだ。


「うおおおお!」


 俺は驚きながらもケビンの頭を押さえて床に伏せさせる。

 まずい!

 そう思った俺の目に伊藤さんめがけて大きな破片が飛んでいくのが見えた。


「え?」


 伊藤さんの体が浮いた。

 そのまま車外へ放り出される。


「伊藤さん!!!」


 すでに伊藤さんは見えなくなっていた。

 代わりに俺の目に入ったもの、それは天空を切り裂いて飛来せんとする巨大な物体だった。

 戦艦型ゾーク。

 おいおい、中盤のボスじゃねえか!!!

 戦艦型ゾークが何十、何百ものビームを放つ。

 狙いなどつけてない。

 ただビームをばら撒き人類を殲滅せんとしているのだ。

 近くにビームが着弾した。

 車両が揺れ何人かが勢いよく放り出される。


「別の車両に移動しろ!!!」


 誰かが叫んだ。

 その声の主も次の揺れで車外に転げ落ちた。

 兵士はパニックを起こしながら別の車両へ逃げていく。

 俺はケビンの手をつかんで引き起した。


「逃げるぞ!!!」


「どっちに行く!?」


「後ろに砲台があった! そっち行くぞ!」


 砲台もそうなんだけど、俺としてはスズキやタカハシが心配だったってのもある。

 それにレイモンドさんも攻撃を受ける前に後ろに行ったはずだ。

 俺たちは急いで後部車両に行く。

 ほとんどの兵士が前を目指してた。

 俺たちは渋滞せずにすんだ。

 後部車両に入る。

 レイモンドさんが倒れていた。

 頭から血を流していた。


「レイモンド少佐!」


「う、うう」


 脳震盪を越してるようだ。

 床に落ちた物理端末に物資や民間人のリストが表示されている。

 書類仕事の最中だったようだ。


「れ、レオくん……そこに砲台が……ある……頼む……」


「ケビン、レイモンドさん頼む」


「う、うん、怪我しないでね!」


「えっと、俺が帰ってこなかったら嫁に伝えてくれ。【俺たちの自宅の端末に気の迷いで買った黒ギャル系のエッチなビデオがある。万が一のときは消してくれ】と」


「悪趣味な冗談言ってないでさっさと行ってこい!!!」


 へーい。

 砲台に行くと兵士が俺に銃を向ける。

 目がイっちゃってる。


【あ、これ、学校の連中と同じ】


 そう思った瞬間ぶん殴ってた。

 俺の拳はアゴをとらえ一発でノックダウンした。

 ふう、ガチで殺しに来てるな。

 砲台の座席に着席する。

 対空ビームキャノン。

 この銃じゃさすがに戦艦型は倒せない。

 でも俺は知っていた。

 戦艦型ゾークから無数の物体が飛翔した。

 飛行型ゾークだ。

 飛行型ゾークは街を攻撃しながら列車に迫ってくる。


「うおおおおおおおおおおお!」


 俺は叫びながら引き金を引いた。

 もうね!

 叫ばなきゃやってられない!!!

 次々飛行型を撃ち落としていく。

 幸いカニちゃんと違って羽を撃てば落ちるようだ。

 今回、勘が働かなかったのは大気圏外からの殺気だったからだろう。


「レオくん! レイモンドさん後部に運ぶね!」


 ケビンから通信が入った。


「民間人も助けてやってくれ!」


 俺は精一杯返事をした。

 戦闘中に考えるとかマルチタスク無理!!!

 俺はひたすら撃っていく。

 精密射撃はクレアの方がうまい。

 あー、そうか、ちゃんと射撃からも目をそらさないようにして練習しなきゃ。

 全部自分でやる必要はないけど芸風の幅は広くてもいい。

 だけど今はあのデカブツをどうかできる気はしない。

 飛行型の対処だけで手一杯だ。


「婿殿!!!」


 新しく入った通信から少女の甲高い声がした。

 ゴゴゴゴゴと空気が振動する。


「カーッカッカッカ!!! 迎えに来たぞ!!!」


 嫁と近衛隊の船がやって来てくれた。

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― 新着の感想 ―
いつもここ一番でやって来てくれる嫁ちゃんマジで最高。
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