第五百十九話
さて調査の結果である。
そもそもレイブンくんが遅れたのは大規模戦闘があったせいだ。
敵の軍、うん、もはや軍というレベルの戦力の抵抗に遭ったのだ。
「なんと恐ろしい……」
「その四分の一をお一人で潰したのが陛下ですが……」
レイブンくんに真顔で言われた。
「ほう……でも人型戦闘機もいなかったし楽だったよねえ」
「人型戦闘機がいたらレオが暴れたもっと戦闘時間が短くなっただろうって」
ケビンにもツッコミを入れられた。
さすがにそこまで野蛮人じゃないわ……アタイ……。
「動きが見えなかったって……反則だって泣いてたよ……」
「見えないわけじゃないんだけど」
慣れてないと認識できない動きをしてただけで。
武術とか武道ってのは初見殺しのテクニックがいくつもあるわけよ。
一番有名なのが大声出す気合ね。
初見の相手なら高確率で動きを止められる。
それと同じ。見えないってより脳が認識できないように動いただけ。
でも説明が難しい。話変えようっと。
「でー、結局なに探してたの?」
「陛下、遺跡だそうです」
「また遺跡か……」
「地下に遺跡が埋まってるんだって」
ケビンがとんでもないことを言った。
嫌な予感しかしない。
「土壌の汚染は?」
「遺跡からの浸出みたい」
「現地人は?」
「マゼラン人とほぼ同一種だよ。すでに太極国とクロノス、それにマゼランはほぼ同じ人種ってわかってるんだ。汚染で外見的な特徴に差異が出てるみたい。事故でビースト種が発生したようなものかな。どちらにせよ専門の医師に協力してもらうしかないかな」
「ケビンじゃダメ?」
「資格取得したばかりの研修医にそこまで求めないでよ。いま士官学校医学部の教授に連絡したから。返事来るまでちょっと待っててくれる?」
するとすぐに通知音が鳴った。
「あ、教授。ケビンです。はい、外と交流がない惑星のマゼラン人が汚染物質でビースト種と似た変異を起こしてまして。え、すぐ来る?」
なんだか教授はやる気のようだ。
「レオ。専門の教授が人類学と生物学の教授のチームを連れて来るって」
「そんなやる気満々なのぉ?」
「そりゃ珍しい症状だし応用も発展もある分野だから……」
そりゃさー、イナゴコロリのときも企業の研究者が外宇宙来たさにポストを争ったって話聞いてるけどさ。
帝都で安定した地位を確立した教授が外宇宙に来ちゃうのぉ?
いろんな学科から「お願いだから調査させろ」って言われてるんだよね……。
文学部の教授なんか文学だけじゃなくて人類学に宗教に史学に哲学にと一大チーム派遣してきたもん。
現在、資料の翻訳と解説書きまくってる。
とにかく文化を総ざらいって感じ。
研究者はスキップしながら外宇宙を目指すのだった。
研究者増えたな……。
外宇宙への招致がプラチナチケット扱いだもんな……。
その最前線で論文というかレポート書きまくってるのがケビンというわけだ。
過労気味な気がする。
今回の件も半分はピクニック気分だったんだけどな……。
結局お仕事になっちゃった。
「とりあえず遺跡の発掘と汚染物質の拡散防止が必要なのね」
「レオのお仕事はここで終わりね」
残念でゴザル。
とりあえず汚染であるが、ケビンが持ってきた化学物質汚染から身を守る薬を打ってもらった。
軍人や開拓民用の昔からある薬なんだそうで……。
みんな苦労してるな……。
できれば俺は一生甘やかされた環境で生きてきたい。
さーて、そしたらわんわん隊の皆様に……。
近くに行くとみんなが駆け寄ってくる。
「王様、王様、王様!」
「みんなメシ食ったか~」
「わんわんわんおー!」
わんわん隊とは翻訳機のアップデートで普通に会話が可能になった。
いやー、方言がきつすぎてゆっくりしゃべってもらわないと会話が難しかったのよ。
「そしたら健康診断な。地下に毒が盛れてて、みんなに影響が出てるんだって」
「そ……それは村は……」
「影響ないところに一時引っ越しかな。村を作るのは家臣たちが手伝うから安心してな」
「わんわんおー!」
「まずはメシにしようか」
飯を作る。
食糧と酒を空輸してもらう。
俺はまだ飲めないけどね。
飲めや歌えのどんちゃん騒ぎしてもらおう。
メシは現地の人に聞いたら肉を焼いたもの中心みたい。
なので肉を焼く。
クロノス豚とタマネギの焼肉。
焼肉を野菜と一緒に惑星カミシロ産の冷凍トルティーヤを添えて。
辛いのは大丈夫?
あ、大丈夫。
じゃスパイシーソースで。
ほれ食え。
「我らが王は料理人だった!?」
「照れるぜ」
「レオ、たぶん褒めてないよ」
「なん……だと……」
飯を食ってると男子どもも到着する。
「北半球を制圧してきた!」
イソノがドカッと腰を下ろした。
まーヘルメットが凍ってる。
「かなり大規模な軍事作戦だったぞ」
エディも泥と雪でグチャグチャだった。
中島はその場に倒れてる。
体力の限界だったようだ。
「王様、彼らは?」
ビーグルっぽい外見の戦士の人に聞かれる。
なんで教えてやる。
「クロノスのお偉いさん」
すると嫌そうな顔でイソノが言いやがった。
「そこの花柄エプロンの家臣だよ」
「花柄エプロン言うな! こいつポケット多くて便利なんだよ」
「やはり王様は……すごい王様?」
「そうだぞ~。なんたってこの辺の惑星を束ねる大国の王様だからな。おっと、レンが到着したってよ。あんたらと似た種族が来るぞ」
レンがビースト種の皆さんとやって来た。
戦闘服が風化した砂だらけだ。
砂漠地帯で戦ってきたようだ。
「旦那様。もー、敵の基地でひたすら戦って……ん?」
ビースト種と原住民の目が合う。
原住民がひざをついた。
「服従いたしまする……」
原住民はレンを見て平伏してた。
「よ、ビースト種の女王!」
レンはもう……すべてをあきらめた顔をしてた。
こうしてレンの子分が増えたのだった。
さて、この惑星の状況であるが、俺が潰した基地に平原に豪雪地帯に砂漠にと地質調査をしてた。
しかたないので捕まえた連中をテントで尋問。
まずは鬼畜生の介選手にがんばってもらおうと思う。
外ではレンと一緒に満腹になった現地民が投げナイフを案山子に当てて遊んでた。
「嘘ついたらお前が的な」
俺がそう言うと泣き叫んで喜んで教えてくれた。
オーゼン連合にイナゴの操作ができる遺跡があると聞いたらしい。
遺伝子組み換えでイナゴ以外も作れるんだって。
それで首都を滅ぼして奪還する予定だったとのこと。
ふーん。
「ちょっと貸して」
俺はそう言って的へ剣をぶん投げる。
ザクッと刺さる。
俺は笑顔で鬼畜生の介選手を見る。
「何か俺に言うことない?」
「な、七日後にオーゼンと合流する予定だ!」
「はーい、皆さん戦争のお時間ですよ~」
俺は手を叩きながらみんなを招集する。
なめやがって。




