第五百十七話
どうしてこうなった……。
俺は後悔していた。
新たな遺跡発見の報がもたらされたのがつい先日。
急いで探索隊を編成して向かったのが昨日。
そして予報になかった磁気嵐で輸送船が無人の惑星に墜落したのがついさっき。
ケビンと途方に暮れていた。
近衛騎士団とはぐれてしまった……。
いや一緒に落ちたんだけど、着地地点が遠いようだ。
とりあえず殺戮の夜は無事だ。
そしてもう一機。
【玉水の乙女】
新しく作ったケビンの専用機である。
帝国宇宙海兵隊の戦略見直しにより作られた試作機だ。
それまでは「AIでよくね?」くらいのことを言われてたのだが……。
ケビンとニーナさんの健闘でドローンや遠隔操作兵器の戦略的価値が上昇。
特に女性型ゾークはゾークマザーとして大量の個を同時並行で動かす能力があることが判明。
それは軍の戦略を書き換えるほどの発見だったのである。
特にニーナさんのような詰め将棋型の兵器オペレーターとの相性は抜群で、人型戦闘機と組み合わせることで最大の効果を発揮できるとされている。
要するに俺たち学生がゾークに勝てたのって、パイロットが人外レベルなのとニーナ&ケビンの活躍だよねって話である。
俺はそこに加えて変態仕様の開発力もあると思う。
ボルトスロワーとかヘタすると欠陥兵器なのを出してきたところとか。
ゾークの外骨格から装甲を作り出したところとか。
とにかく自由すぎる装備が大当たりしたのは否定できない。
何度も死にかけたが、何度も変態装備に助けられたのは否定できない事実である。
それにともない、ドローンオペレーターの保護やドローンとの通信距離の延長が求められた。
そこで開発されたのが【玉水の乙女】である。
自衛とドローン操作に特化した機体で、要するにシミュレーターのマルチプレイで攻撃が避けられないという弱点を補った機体である。
これでシミュレーターのゾークマザー戦で同時に二体まで相手で安定して勝てるようになった。
ということでケビンと新しい機体の実地テストと思ったらいきなり孤立したわけである。
俺たちってトラブルばかりだよね~。
俺はコンテナから昨日作った芋ようかんを出す。
完全にピクニック気分であった。
「おーい、ケビン。芋ようかん食べる?」
お胸にあわせた特注戦闘服を着用したケビンに話しかける。
ケビンはプリプリ怒ってる。
「もー、なに持って来てんのかな!」
と言いながらもぐもぐタイム。
俺の専用機のコンテナには食糧を紛れ込ませてる。
レイブンくんの救助隊は丸一日かかりそう。
「なー、ケビン。俺、磁気嵐で墜落するの初めてだわ」
「予報は滅多に外れないからね」
うーん、なんか作為的な気がする。
まあいいか。……それよりも。
「そこにいる人。芋ようかん食うか?」
クロノス語でそう言うといきなり矢が飛んできた。
弾丸つかめる俺たちに刺さるはずねえだろと。
俺は矢をつかんでポイ捨て。
ケビンも食べながら矢をつかんで捨てる。
「無駄だから撃つなって。用があるなら言え」
「オ、オマエ誰ダ!」
おっとカタコトだ。
マゼランの公用語はクロノス語だ。
通じてないっていうより、クロノス語が変質した感じかな。
困った。未管理の惑星だ。
「オッス、クロノス大公、レオ・カミシロ・クロノスだ。よろ!」
「ウ、ウウ……」
草むらから何者かが現われた。
ビースト種?
と一瞬思ったけど、だいぶ獣に近い。
「空カラ魔王落チテキタ!」
簡素な槍を向けられる。
危ないなー。
てい!
手刀でへし折る。
「ウウ、化ケ物!」
「初見だとそう思うよね~。ボクらは慣れてるけど……」
ケビンが辛辣である。
「ほれ食うか?」
芋ようかんを差し出す。
「イモ……!」
芋ようかんを奪っていく。
ガツガツ食らう。
「ウマイ、俺、ムカリ」
ムカリくんね。
餌付けしてコンタクト。
「キミらどこの人?」
「コノ先ノ村。魔王ノ兵現ワレタ。俺タチ逃ゲテ来タ」
んんんんんんー?
魔王の兵って俺たちのことかと思ったら……違う連中がこの星に来てる……だと。
「ケビン……」
「マゼランの残党だろうね。たぶん」
一気にきな臭くなってきたぞ。
ムカリと徒歩で村に行く。
村の前の丘から双眼鏡で偵察。
うーん、マゼランの人型戦闘機みっけ。
クロノスに合併前のラターニア製の旧型だな。
ここまで来たらしかたない。
レイブンくんに連絡。
「レイブンくん、レオッス。マゼラン残党が現地民を攻撃してるみたい。村でマゼラン軍の旧型を発見」
「ちょ、レオ様、絶対に戦わないでくださいね。大至急向かいますので!」
レイブンくんが今まで見たことないくらい焦ってる。
でもしかたないよね。
悪いやつは成敗しないと。
完全に上様モードになった俺であった。
さー、どうしてくれようか。
「ムカリくんさー、他の仲間はいる?」
「イル……ダガ、ヨソ者二教エナイ」
「食糧あるヨ」
「ワカッタ」
チョロかった。
食糧をコンテナから出してケビンのドローンで運ぶ。
はっはっは!
やはり食糧は世界通貨である。
ムカリに案内されて村から逃げてきた人のキャンプへ。
最初は警戒されたが、食糧を配ると安心された。
「こ、コミュニケーション能力が高すぎる……」
だってこれでもクロノス大公だもの。
NTRモノ専用機レベルの陽キャにならんとやってられない。
食糧配って話を聞こう。
「家燃エタ……」
「うんうんつらいよね……うん、さあお食べ」
「ウウ、オマエイイヤツ……」
「も、もう懐柔してる……ボクはいまなにを見せられてるんだろうか……」
ケビンがどん引きした。
俺もわからん。
ただ現地人との交流は大事だぞ。わかるだろ?
そして二時間後……。
「王様バンザイ!」
「たった二時間で王様になった!」
なんでだろうね?
なんか食糧配ったら王様認定された。
ま、いいかー!
もうノリだけでやってしまおう!
「よーし、みんなで村を取り戻そうぜ!」
「わおーん!」
こうして俺たちは村を奪還することになったのだ。
なおレイブンくんに「なんか王様になった」って報告したら「いつかやると思ってました」って言われた。
この信用のなさはなんだろうか?
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