第五百十六話
レンの号令により、ビースト隊が大量にやって来た。
「我ら! レン大王様のご命令で馳せ参じました!」
「えっと……レン?」
レンに助けを求める。
するとレンは笑顔で言った。
「警察官として従事させます。まずはメディアへの敵勢力への協力容疑で家宅捜索しなさい」
「えっと……レン。彼らも仕事があるのでは?」
「ビースト種に安定した職はそれほど用意されておりません」
痛いところを突かれた。
たしかに帝都じゃあまり見なかったもんな。
嫁ちゃんは人種差別を禁止してる。
だけどビースト種への偏見はいまだに根強い。
そもそも貴族ですらマルマ様とレンくらいしかいない。
貴族の後ろ盾がなければ帝都でいい仕事に就くのも難しい。
軍だけは例外でかなりの数がいるが、帝都で働けるのは珍しい。
レンだって公爵家のお嬢さまでなければ士官学校入学は難しかっただろう。
もちろん俺らは偏見は……たぶん……ないが……。
国の上と下は若くなったけど、中間管理職なんかは未だに頭が固くて風通しが悪い部分が残ってる。
それは民間企業も同じだろう。
ビースト種積極採用のカミシログループが珍しい存在なのだ。
カミシログループは従業員の平均年齢若いしな……。
ビースト種なんかの改造人間に慣れてる退役軍人も多いし。
どうやら俺は状況を読み違えてたようだ。
というわけでマゼランにビースト種の警察官が派遣された。
ゾークやプローンや屍食鬼ほど見た目の違いがあるわけでもなく、普通に受け入れられた。
各所に交番を設置して治安を回復を狙う。
マゼランは未だに略奪ヒャッハー民が出現するのだ。
で、そのどさくさにクレアとレンでメディアを一斉家宅捜索した。
いやー出るわ出るわ。
売国行為の山が。
いや適度な売国奴はいいのよ。
そういう連中を相互スパイにして外交に使うテクニックは存在するのよ。
実際、クロノスやマゼランで何人もそういう連中を使ってる。
完全に信用する日は来ないし、なにかあれば切るだけの小悪党だけど重要な連中だ。
でもまさかさー、オーゼン連合から依頼された世論操作までやってたとはね~。
バカなのかな?
それをメディアは正義の行いだと思ってやがったのだから笑える。
無能すぎて救う手段がない。
ということでレンとビースト種がメディア各所に殴り込み。
「わ、ワシを誰だと思ってるんだ!」
「メディア王のオニールさんですね。それがなにか?」
レンとビースト種の警官たちがオニールを捕まえる。
「ワシを逮捕したらマゼラン国民が黙ってないぞ! 正義は我らにある!」
「そうなんですか。個人的には数億人をテロの犠牲にした悪党だと思うのですが。国民の皆さんご意見をどうぞ」
レンがカメラに手を振る。
もうね、最初から中継してたわけである。
すでに本社前にはクロノスの各マスコミ、一般市民、そして武装した暴徒の皆さんが押し寄せてた。
「はーい皆さん。殺してもいいですけど裁判にかけないと真相がわからなくなっちゃいますよ~」
レンがマイクで訴えかける。
暴徒の皆さんも火炎瓶を投げようとした手を止めた。
ちなみに俺もレンの横にいた。
「はい。静かになりましたね。レオ・カミシロ・クロノス陛下のお言葉です」
レンにマイクを渡された。
「なぜマゼランはイナゴテロの標的にされたのか。誰がこの計画を立てたのか。誰が裏切ったのか。裁判にかけて真相を明らかにします」
俺がそう言うと「大公陛下がそう仰るだからしかたねえな」って言葉があちこちから聞こえてきた。
やけに信頼されてるな。
そしてクレアにマイクを渡す。
「市民の皆様、ご安心ください。本当に裏切者なら裁判にかけます。我々は金や権力で買収されることはありません。どんな権力者であろうとも例外はありません」
「さ、裁判所が裏切ったらどうするんだ?」
「そのときは市民の皆様の好きなようにどうぞ」
事実上のリンチ許可が出た。
やはりクレアは……クレア様は独裁者である。
「さ、皆様、マゼランの復興を進めましょう。今日も稼ぐぞ!」
これで暴徒は解散した。
まだ文句言ってるのもいたけど、それは別に捕まった。
こうして明るい独裁が進む。
ある程度はしかたないんだけどね。
復興が優先だし。
あと『今日も稼ぐぞ』が知らないところで我らのキャッチコピーになってるようだ。
数百人の逮捕者を出した。
ほとんどは麻薬に賭博に売春斡旋である。
大物俳優だろうが超人気アイドルだろうが知らん!
空気読まないでバカスカ逮捕していく。
芸能事務所にも家宅捜索をする。
麻薬汚染がひどすぎる!
どん引きするくらい腐敗してるじゃん!
タレントのほとんどがオーゼン連合とズブズブだった。
あー、もう、逮捕!
言論弾圧のつもりはないのに。
どんどん言論弾圧風になっていく不思議。
まともな事務所だけ残して逮捕逮捕!
だってさ、クロノスは年寄りから死んだけど、マゼランは年寄りは生き残ってるもんね。
ズブズブだからこそできる芸当だ。
権力者が若者や子どもを売り渡したわけである。
「……ひでえ社会だな」
俺がそう言うとクレアがほほ笑んだ。
「銀河帝国だって公爵会が国を売ってたよ」
痛いところを突かれた。
そうか……。
なんかムカつくなと思ったら昔の帝国の姿だったのだ。
そりゃイラッとするわ。
嫁ちゃんが皇帝にならなきゃ売国奴が永遠に俺たちを邪魔してたのだ。
「クレアどうするの?」
「全財産没収して開拓惑星送りが妥当かなって裁判所と話し合ってるけど」
そのタイミングでレンがお茶を持ってきてくれた。
「お茶ですよ~」
「レン、いいところに来た。あのさ逮捕者の会社だけど」
「家宅捜索済みの会社から放火されてるようです」
「放火……されちゃったの?」
「ええ、逮捕者は暴徒に殺されないように保護してるカタチですね」
「止められない?」
「暴動の矛先が我々に向かいますけど?」
うん無理。
こうしてクレア様はマゼランの独裁者として名を残してしまうのだった……。
イモでも焼こうっと。
俺はストレスからの逃避で料理をするのだった。
イモイモイモイモおイモさん♪
「おイモさんのニオイがするであります!」
踊りながらイモ焼いてるとみんながやって来てイモを取られる。
だが今回は俺の分もあるのだー!
イモ美味しい。
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