第五百十話
鬼神国大王のサリアきゅんが「うちもこうなる可能性があったのか……」と、どん引きしてる。
違うって、鬼神国は話し合いの努力してるもん。
文化の違いだったら相互理解ですりあわせ可能だって。
マゼランは話し合う気がゼロだったら切っただけで。
最初の遭遇で鬼神国が「お、雑魚じゃん! 奴隷にしちまおう! ヒャッハー!」だったら今ごろ滅亡してるだろうけどね。
……あ、それがプローンか。
初手敵対から始まったやつらは……プローンに屍食鬼に海賊ギルドに……みんな滅亡か俺の子分になってるわ……。
屍食鬼は滅亡一歩手前くらいだけど。
でもプローンは国が滅びなきゃ食人からの脳症で種族が絶滅する運命だったわけでさ。
俺たちに保護されてからは健康そのものだし。
海賊ギルドは俺の子分になって、ほとんどが運送業やボディーガードでカタギの仕事になったわけじゃん。
えっちな業界もクロノスやラターニアで法を作ったわけよ。
病気になったらその辺に捨てるとかができないようにしたわけ。
そういう病気を労災扱いで摘発してるし。
店がお金取りすぎないように管理したりね。
借金のカタでそういう労働させたら借金自体無効ねって法律作ったり。
そりゃ新しい反社が出現するけど、カタギのお店があるのとないのとでは違うのよ。
そう考えるとファーストコンタクト時にプローンを滅ぼしたラターニアの暴挙を我慢してよかった。
我慢して相手の文化を知ることから初めて、「うちはこういう文化ッス」って理解を求めたから友好関係を構築できたのだ。
向こうも自分たちの法律に則ってプローンを滅ぼしたわけでさ。
ラターニアの法律を分析した結果「じゃ、ガキどもはうちで保護するッス」って言えたわけで。
話し合いって大事よね。
ワシラはまだゼン神族とすら話し合いの余地を残してあるのである。
さて、そんなわけでマゼランの全国首長&軍との会合。首都はスルーで。
首長、市長級惑星にいくつかの惑星をまとめた県の指導者が知事と。
生きてるの半分くらいかな?
偉い人から市民見殺しにしてさっさと逃げたんだって!
これを見ると上層部が壊滅したクロノスって民度高いんだな……。
軍は本当に死ぬまで戦ってたし。
それでもマゼランの偉い人と話し合いが必要なんだけどね!
可哀想な俺!
だから開幕一言言わせてもらう。
「最初に言っときますが、私たち貴族は『名誉』……いや『誉れ』で生きてる生き物です。ここからは市民より先に逃げようとする人は会議に参加しないでください」
理想論なんだけどね。
俺だって市民と嫁ちゃんを天秤かけたら嫁ちゃんを優先するし。
自分と市民なら市民優先なんだけどね。
それでも真顔でそれを口にする。
それが現在の銀河帝国であり、クロノス公国なのよ。
貴族は建前のために死んでなんぼよ!
すると半分が生き残った首長会議のさらに半分が信じられないって表情してた。
「私は本気で言ってますので。じゃなきゃ、クロノスが貴族制になるわけないでしょ。領地と運命を共にするのが貴族です」
俺が本気だとわかった瞬間、いくつかの自治体の長が回線を切断した。
アホめ!
要注意人物リストに入れるだけだ。
残った首長たちも死にそうな顔してる。
俺は最初に会った市長さんは評価してるよ。
市民と同じ避難所でちゃんと自分よりも市民を優先して働いてたもん。
そういう人は貴族で欲しいくらいだ。
もしくは市民より上の待遇でもいい。
その代わりこういう非常事態に死ぬほど働いてる人ならね。
そうじゃないやつは死ねって言ってるだけだ。
クロノスで餓死しかかった俺は本気だからな。
「ここに残った人は我らが協力する価値のある人物だと判断いたします」
俺がほほ笑むと首長たちがビクッとした。
すると一人、たしか県知事さんかな。
女性が手を上げた。
俺をしっかり見る。リモートだけどね。
「我が県はクロノス公国に併合を望みます」
え、いらない。
口に出しそうになった。
おれは俺じゃ判断できん。
「持ちかえって協議しても?」
「はい……当然かと」
すると何人もの知事が手を上げる。
「わ、我が県も併合をお願いしたい! も、もう、限界なのです!」
そこで一応釘を刺しておく。
「言っておきますが……知事さんがそのまま貴族になれるわけじゃありませんよ」
「それでもかまいません! 市民をお助けください!」
口だけでもそう言うなら……まあ、議会にかけてやってもいいだろう。
俺は反対だけどね。
拡大主義はよくない。周囲が警戒する。
俺がクロノス王になるんだって反対だったのだ。
それでも議会や役所が利があるって判断するならやるよ。
それが大公だしね。
俺はラターニアと太極国に回線を繋ぐ。
今回サリアきゅんは隣国じゃないのでお休み。
「両国はクロノスへの併合をどう思います」
ラターニア王は言いやがった。
「ぜひお願いしたいかと。クロノスの支配下であればラターニア銀行が進出しやすくなります」
シーユンはと言うと……。
「我が国には領地を切り取る余裕はありません。ぜひクロノスにお願いしたいと思います」
「そもそもマゼランの残存勢力と戦争になりかねませんが」
すると、いままで黙ってたマゼラン軍の責任者が重い口を開いた。
「我が軍は壊滅しました」
「はい?」
それは初耳だ。
「もう国としての機能を維持できません……」
「うちは文民統制じゃないですよ。大公の私自身が軍人ですし。それでもいいんですか?」
「ぜひ……クロノス公国軍に併合していただきたい……お願いいたします……」
あー、うん。
こりゃ完全に心が折れてるわ。
一方的にボコにされたもんね。
嫌だな~。
ただの侵略だもんね。
火事場泥棒的に領土盗んでいくみたいなやつ。
こういうのって後でもめるんだよね~。
避けたいな~。
札束で殴るのも限界があるし。
できれば国はコンパクトにまとめたいな……。
インフラすら維持できない無能行政ディストピアやってるからには深刻な理由あるんだろうし。
まー、あとはクロノス議会の判断よね。
あとで嫁ちゃんに相談しようっと。
あと妖精さんにも。
「妖精さん! 俺が責任から逃れるいい手ない?」
「ないです。いつも上手くやりすぎなんですよ。レオくんは」
なんか冷たくない?
ねえ、なんで!?
「そりゃね~、滅亡しそうな状態で隣国の貴族の矜持見せられたら……クロノスの子になりたいって思うでしょが!」
……俺が原因!?




