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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第五十一話

 自販機食堂で飯を食う。

 焼き肉丼を注文。

 足りなそうだからあとでもう一つ注文しよう。

 頭の中が野郎であるケビンも焼き肉丼である。

 小食などという寝言は許されない。

 ガチ腹減り勢がガツガツ下品に飯を食ってるとおっさんがやってくる。


「おう麦茶いるか?」


「あざっす!」


 だいぶ白髪が多い髪を短髪にした黒く日に焼けたおっさんだ。

 作業着の上下に天板入りのブーツ、作業用のグローブをつけている。

 タカハシの関係者じゃないかと思う。


「レオッす」


「おう、俺はスズキだ。スズキ組の社長やらせてもらってる」


【組】なんて言ってるがヤクザではない。

 建築会社の社長だろう。

 タカハシのボスに違いない。


「こっちはケイト。俺たち仲間に置いてかれちまって宮殿目指してたんですわ」


 ケビンをケイトと紹介しておく。

 元ゾークのスパイだって説明するのが面倒だったのである。


「あの有名な隊長さんがなんで置いてかれたんだい?」


「喧嘩して営倉ぶち込まれて逃げ遅れたんですよ。こいつは営倉ぶち込まれた俺をからかいに来て巻き添えに……」


「ぶあーはっはっは!!! おもしれえヤツだな!!!」


「人間のイライラを増幅させるゾークがいるみたいで。気づいたらあいつらビビリ散らかして空港攻め込んで来やがったって訳っすわ」


 あ、今気づいた。

 俺が気づいたから攻めてきたんだ。

 つまりケビンみたいな裏切者、人型ゾークがいたはずだ。

 ……とはいえ現場には俺たち以外も大勢いた。

 特定は難しいだろう。

 あいつら俺を監視してるんだ。

 さすがに今は監視してねえだろうけど。

 ケビンが裏切るとは思えないし。

 現状じゃ裏切るメリットが何もない。


「がーはっはっは!!! ゾークがビビったのか! こりゃいいや! ところで兄ちゃん、人をイライラさせるって本当か?」


「ええ、それで同級生四人にリンチされましたんで」


「おーそれは……また……激しい……」


「全員返り討ちにしてやりました」


「ぶッ!!! 兄ちゃん、おもしれえな!」


「腕力だけはありますんで」


 サイドチェストで歯をキラン。

 軍隊なんでムキムキというよりは持久力重視の体型だけど。


「ガハハハハ! タカハシ! すげえの拾ってきやがったな!!!」


 ウケた。

 そしたらおっさん、急に真面目な顔になる。


「あと少しで避難用の列車が来るはずだ。兄ちゃんたち拾ったって連絡しとくわ。ゆっくりしてくれ」


「あざっす!」


「なあに、俺は今まで貴族ってのは嫌な連中だって思ってたが、案外そうでもないらしい」


「うちの規模だと田舎惑星の村長ですから」


 偉くできる部分がない。

 嫁がリアル偉いくらいだろうか。

 それも俺が偉いわけではない。

 偉そうにしても恥ずかしいだけである。


「んじゃ、またあとでなー」


 スズキのおっさんが行ってしまう。

 俺たちは食事を続け、デザートまで食べる。

 冷凍食品の自販機は鉄道会社の所有物だ。

 回収しようがない。

 食い尽くしてしまっても誰も困らない。

 しばらく待つと館内放送が流れてくる。

 スズキのおっさんのダミ声だ。


「軍の列車が来たぞ! 一番線に集合してくれ!」


「行こうか」


 ゴミを捨ててケビンとホームに向かう。

 ホームにはたくさんの兵士がいた。


「ヴェロニカ親衛隊所属。レオ・カミシロです!」


 敬礼。

 俺たちは近衛隊の下部組織という名目の学生サークル所属である。

 なんの意味もない。

 つまり正規兵の方が偉い。

 下手に出まくる。

 絶対に列車に乗るのだ!

 今なら靴をなめられると思う。

 プライド? ねえよそんなもん!

 嫁の命の方が大事だ。


「れ、レオ! あのレオ・カミシロか!?」


「ええ。実態は単に運がいいだけのガキですがね」


「ほ、本部に問い合わせます! 乗車してお待ちください!」


 なぜか丁重だ。

 同世代の兵士に案内された場所に着席。

 軍の車両で通勤用の席じゃなくてシート席だ。

 旅客用じゃないのでグリーン車はないが指揮官用の部屋はあるようだ。

 俺たちの席は兵士用のようだ。

 一般人の半分は貨物室を使うはめになってる。

 市民には申し訳ないが、兵士は戦闘になったらすぐ出なきゃならないからこうなってる。

 10分ほど待つとアナウンスがあった。


「避難特別列車発車します」


 ピコーンピコーンと音がして扉が閉まる。

 かなりの人数が乗ってるようだ。

 速度を落として列車は進んでいた。


「偉い人来たみたいよ」


 ケビンがそう言うと軍人のおっさんがやって来た。

 階級は少佐。

 だけど威圧感はない。


「やあ、指揮官のレイモンドだ。階級は少佐だけど本来は特別職の弁護士だ。偉くないから普通に接してくれ」


 レイモンドさんはシート席の空いてるところに座る。


「はあああああ~困っちゃう。階級が上だからここの指揮官やらされたけど、正直何もわからないんだよね。戦闘なんてしたことないし。奨学金軍から借りててようやく満期で退職できそうだったのに……」


「お疲れ様です」


 レイモンドさんは俺の理想の未来なので同情しかない。


「レオくん、きみ弁護士志望だって聞いてるけど」


 進路希望は何回か出してる。

 とは言ってもクラスの半分は士官学校の学生なのに【俳優】とか【釣り師】とか書くアホなのだが。


「特別職は憧れますんで。痛くないのが実に素晴らしい」


「君は軍のトップ目指すべきじゃないかな。君を見てるとなんとなく勇敢な気分になる」


 それジェスターの能力でほぼ気のせいです。


「いやね、ここ数日ボクには指揮は無理だなって思い知らされ続けててね……もうやだ軍隊辞めて民間の弁護士になる……」


 レイモンドは頭を抱える。

 わかるー。

 俺も軍師無理だなって思い知らされたわ。


「わかります!」


「おお! わかってくれるか! 友よ!」


 暑苦しい友情である。


「それじゃ、この列車は宮殿前駅に到着予定だ。上に報告しとけば殿下のお耳にも入るだろう。戦争が終わったら殿下を紹介してくれるかな。法律周りはまかせてくれ!」


 なんだろう。

 この後日絶対に役に立つけど今は役立たずな感じ。

 優秀なんだろうけど軍の才能はないんだろうな……。

 列車は走っていく。

 ゾークの気配はない。

 なんだろう?

 無事に到着できそうってだけで不安になるぞ。

第四十八話がダブってたのを修正しました

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― 新着の感想 ―
声を張り上げたものは特別たりえる。ジェスターがどうの言っていますが、500年前から変質してるはずだし、いきなりそうなる訳も無し。少しは才能を誇りなさいよ…まぁ、本人はいやがりそうですが。
[一言] 不安に思う。それ自体がジェスターの能力が何らかの形で未来の光景を予期してるんじゃないかって、そう考えてしまうのねん…
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