第五百八話
我々がケビン美少女説を否定できないのには理由がある。
写真集。いや単体写真集は嫌がってるから軍の広報誌なのだが……。
あまりに売れるので紙版と電子版両方とも高めの値段設定にした。
高めと言ってもクレアが毎号買ってるプロレス紙くらいの値段だ。
厚みも同じくらいかな?
外宇宙に関して書くことが多すぎるのだ。
紙の雑誌なんて、文芸誌が少し、ファッション誌が少し、サッカー野球プロレス誌などのスポーツ紙がそれぞれ一誌残ってるくらいだろう。
子ども向けのコミック誌すら電子版だもんね……。
あと官報くらいか?
そこに軍の広報誌が加わった。
紙版は大学などのガチの研究機関に。
電子版は広く国民の好奇心を満たしている。
というかクロノスやラターニア、太極国版まで出版した。
ただでさえ自動的に売れるそれらだが、ケビンとワンオーワン、それにタチアナが写ってる回は一瞬でなくなる。
いや「写ってる」なのである。
ケビンはグラビア嫌がるので本当に任務中の写真くらいしか撮影させてくれない。
あと医科の広報は積極的に出てくれる(ただし「ボク……大学校一度も行ったことないけどね」と仄暗い表情でほほ笑まれる)。
……ホントスマン。断り切れない弱い俺が悪いんじゃ!
で、タチアナは聖女様枠で現地宗教が買い占めるのでわかるとして……。
ワンオーワンのグラビアの回はすげえぞ……。
毎回売上予想外して品不足になるもん。
ファンクラブなども発生。
現在、銀河帝国に鬼神国にラターニアに太極国にクロノスと……要するに俺たちが関わったところすべてで人気が爆発してる。
ゾークなのに抵抗ないのかなって思ったら、ちゃんと「封印されてて最初から帝国の味方だった」という背景を広報したようだ。
現在は悪い女王を俺たちと倒して、新しいゾークの女王になって和平を実現させたということになっている。
まあ間違ってない。
ケビンもゾークの被害者って立場だ。
同じく被害者の女性型ゾークのリーダーになってケビンの領地で保護してるということになってる。
ケビンの領地は小さな惑星であるが、領民は肉体労働やってた元おっさんどもである。
若くなったし、女性と言えどもゾークの体力。
働き者の彼らはあっと言う間に惑星を都会にしてしまった。
主な産業は建設業とモデル派遣。
美女の住む桃源郷と思われてる。
そこの主の美少女領主なのだからファンクラブの一つもできるだろう。
わからないのは外宇宙でもアイドルなことだが……。
気がついたら俺が工作かける余地すらなかった。
とにかくケビンとワンオーワンはいまや超絶美少女アイドルなのである。
なおタチアナは崇拝の対象である。
つまりだ……俺はおかしくない!
きっとおかしくない!
うおおおおおおおおおおおおおおッ!
心頭滅却!
冷水シャワードバー!
頭をクールダウンしてお仕事モード。
顔にペイントして……っと。
どうよ! これでどこから見ても海賊だ。
ヒャッハー装備を着て海賊ギルドの船に乗る。
するとクレアにメリッサが俺を見てブフーッとふいた。
「レオ、なんで隈取りしてんのよ! ちょっとやめて……プッ……あははははは!」
クレアはクロノス人風。
「あははははははは! 隊長面白すぎ!」
メリッサはラターニアの民族衣装を着ていた。
さらに後から来たレンとケビン、それにタチアナも俺を見て笑う。
三人は太極国の服装だ。
「か、歌舞伎がいる! ちょっとレオ! それ海賊じゃなくて歌舞伎だよ!」
ちょっと違ったか……。
「旦那様……ぶッ! ひ、ひい……苦しい……やめてください……ひひッ!」
レンもツボに入ったらしい。
うーん、間違ってたか。
別の船から通信が来る。
エディにイソノに中島だ。
「ぶーッ! バカがいる! ゲラゲラゲラ!」
イソノにゲラ笑いされる。
そういうイソノも世紀末衣装だ。
半裸トゲ付き肩パッドにチェーン、下は革ズボンにブーツだ。
斧を二つ背中に装着してる。
中島はプロレス的なフェイスペイントでイソノと同じ世紀末ファッション。
なぜかボウガンを持ってる。
その二人のドアップで再び婚約者たちの腹筋が崩壊。
「なあ、もしかして俺だけドレスコード間違えた?」
三角帽子に昔の軍人風のファッションで不安げな顔をしてるエディだけが浮いていた。
いや俺たちが間違ってるだけだ。
面白いので教えないけど。
俺たちがなにをしようとしてるのか?
それは明白だ。
「領域侵犯してもいいじゃない。だって海賊だもの」作戦である。
捕まんなきゃいいんだよ!
捕まんなきゃ!
サクッと見て生存者いたら救助の約束取り付けて帰る予定だ。
いやさー、知り合いに助けてくれって言われたんだからさー。
俺、そういう義理は果たすタイプよ。
国にだめって言われたら私費で海賊船に乗って救助に行けばいい。
そういうことよ。
今日の俺はクロノス大公じゃない。
海賊レオなのだ。
もうね、準備整えるだけでも苦労したわ!
サクサク行くぞー!
計算上はまだ食糧は尽きてないはずだ。
「さーて、ここから茶番はっじめるぞーい! 準備は?」
「いいぜ」
イソノが親指を上げた。
そしたら後方にいるラターニア船に作戦開始の合図を送った。
「待てぇカワゴーン!」
ラターニア船から警告が来る。
「あばよ! ラターニアのとっつあん!」
俺たちはそうセリフを叫びながらマゼランの領域に無断侵入した。
「むむ! 悪の海賊許せん! 少々、違法だが……待てカワゴーン!」
演技が上手になったラターニアも無断侵入。
約束を重んずるラターニア人は当初反対した。
でも俺の「そもそも条約結んでないじゃん」という言葉で茶番作戦を決行した。
だんだん俺らに毒されてきてるような気がする。
ラターニア船との追いかけっこという茶番をしながら一番近い有人惑星にドローンを発射する。
「カメラ撮影開始」
案の定イナゴだらけだ。
あーうん……。
「えーっと結界砲、ノーマルのやつ発射!」
ここからは責任者ガチャ。
市長とか県知事レベルを救出できたら、その場でクロノス艦隊が突入。
救助作戦である。
そうじゃなければ生存者の中から近くの惑星に親族がいる人を辿る。
海賊だからなんでもできるもん作戦。
アホみたいに非効率だけど、最適解はこうなっちゃうのよね。
一国の君主がこんなアホみたいなことやるとは思ってないだろうし。
「結界砲発射!」
惑星に結界装置が撃ち込まれる。
「おどりゃああああああああああああ!」
タチアナの気合で結界を遠隔起動。
おーし。
「ラターニア艦救助お願いします」
「わかったぜカワゴン!」
ねえねえ、○形のとっつあん気に入ってない?




