第五百七話
パーシオンは歯切れ悪くごまかして会談終了。
アホが!
問題はマゼランの外交官と私的会話で救援を頼まれたが……。
どうするよって感じではある。
生きてる人からの救援だったらよかったんだけどね。
裏で繋がってる関係で、本人はおそらく亡くなった。
どうしようもない。
誰か生きてないかな~。
いや突撃できるっちゃできるんだけどさー。
これがパーシオンの計略だったらクロノスが悪者になる可能性があるんだよね。
災害現場で火事場泥棒をするクロノスを許すな!
パーシオンがやっつけてくれる!
こうなりそうではある。
滅亡寸前からの復興中の我々と大国パーシオンじゃ兵力の差は歴然だしね。
戦うリスク取ってもいいんだけど、それには国民にリターンを提示しなければならない。
マゼラン民を助けたい以上の話ではないわけ。
「じゃあ、救助によって我が国にどんな利益があるんですか?」
これが難しい。
元から貿易が盛んで、持ちつ持たれつの関係なら災害時の条約一つも結んでるだろう。
ところがマゼランはテイカー国家。
クロノス民的には迷惑をかけられた憶えしかない。
「つうかイナゴテロのとき、マゼランくんなにもしなかったよね?」
「ラターニア、太極国、鬼神国にバトルドームには借りがあるけど……。マゼランくんにはなんの借りもないよね?」
「なんでうちらがマゼランのクズを助けなきゃならないの?」
「マゼランなんかに税金使うな!」
そういう話である。
ゼン神族よりも強いヘイト向かってないかな?
だからさー、少額でもいいから互助しとけと。
ボランティア出すとかさあ。
どうせ後から倍になって返ってくるんだからさ!
宝くじ気分で金や人出しておけばいいの!
近所つき合いを絶つから話がややこしくなるわけでな!
中にはブチギレ勢もいる。
「マゼランなんて焼き払え!」
「ざまあみろ!」
「俺は絶対に助けねえぞ!」
この辺の声は失業者から多く聞かれる。
まー、しかたないよね~。
俺は嫁ちゃんの悪口言われなければ基本スルー。
言論の自由大事。
えっちなコンテンツも大事。
俺はエロを守るため最後の一兵になっても戦うぞ!
おそらく嫁ちゃんも最後まで残ってくれるだろう。
そのために俺や政府への悪口を許す!
ただし嫁ちゃんの悪口はやめろ。
わかるな。
クロノス大公はフリー素材だし自由に論評していい。
だが銀河帝国皇帝は違うからな!
てめえら嫁ちゃんの悪口言ったらぶち殺すぞ!
嫁ちゃんもあまり気にしないタイプなんだけどね。
それはいいとして、要するに現状クロノス人がマゼランを助けるのは難しい。
生存者に助けてって言われてから嫌々出動するのはいいけど、パーシオンが口出ししてきそうな状態で出動できないわけである。
あとはラターニアや太極国の動きしだいかな。
とりあえず嫁ちゃんの船にいるシーユンとお話しする。
「我が国でもマゼランへの好感度が下がってて救助は難しいかと」
「嫌われすぎじゃない?」
「ラターニア人も鬼神国人も薄ら嫌われてましたが……彼らはなんだかんだで義理堅く、評価が高くなっています。銀河帝国人も外宇宙の蛮族との評価でしたが。現在では法と契約を重視する大国とみなされてます」
なんだか……奥歯に物が挟まったような表情だ。
「実際は?」
「外宇宙に封印されし戦闘民族をバトルドーム……実質的には鬼神国が解き放ちました。戦闘民族は圧倒的力でクロノスを占領。圧倒的支持で民主的に君主として君臨。占領されたクロノスもまた戦闘民族の片鱗が見えてきた……というのが太極国の政治評論家の見立てです」
完全に封印されし魔族ですね。
「太極国の大衆的には? その……本音をぜひ知りたいんだけど」
「たくさんの人々が亡くなりました。それは残念なことです。ですが……それ以上に病気の根絶に停滞していた政治に社会に経済までも一気に浄化されました。若年者の失業率は低下。海賊との和平より犯罪も減少。実は帝国人は神や精霊の使いではないかとまで言うものもおります」
素直に喜べないやつだわ。
微妙な表情をしてるとシーユンがほほ笑んだ。
「舞台裏を知らないものの発言です。お気になさらずに。私は、いえ、みんなレオ様がご苦労を重ねてるのは理解してますよ」
「シーユンはいい子だなあ」
なでたい。
「ふふふ、私もそろそろ子どもじゃないんですよ」
そう、シーユンと会って二年近く経とうとしてる。
男性として育てられてたころより女性らしくなった。
現在のシーユンを見たら男だなんて誰も思わないだろう。
……二年ちょい経ってるのにタチアナはほとんど変わらないな……。
逆に安心する。
そうなのである。
例えばワンオーワン。
そりゃ女性型のゾークは子孫を残しやすいように容姿が最適化されるのは知ってたよ!
女性型ゾークって美形ばかりだもん!
元おっさんの女性型ゾークですら美女ばかりだもんね!
「終わったでありますか! シーユンお話するであります!」
ワンオーワンがやって来た。
ああ……いつ言おう。
無防備すぎてヤバい。
「ほら~! ワン! 邪魔しないの!」
今度はケビンだ。
ヤバすぎる……。
お胸を揺らすのをギャグにできる段階はもうとっくに終わっていた。
「どうしたのレオ?」
もうね、現在のカミシロ一門最大の懸案事項だ。
女子までも扱いをどうするかでもめまくってる。
いや、だってさ!
アイドルフェイスとかそういうレベルじゃないの!
お顔が整いすぎてて!
「ケビンくんの扱いは女子だよね~」
って余裕こいてた女子どもが真顔になってる。
例えば、同級生のユリさん(伯爵家の次男と婚約済み)。
「カワイイ、カワイイ……」ってネタにしてたの!
でもさ最近は「わたし……なにかに目覚めたかもしれない……もしかしてこれが真実の愛?」って怖いこと言ってるの!
「ねー! どうしたの?」
「ナンデモナイヨ……」
いまクラッときた!
フェロモンのデバフがかかってる。
元野郎という事実を知ってる俺たちでこれ!
頭おかしくなる!
魔性の女すぎる……。
あーはいはい!
もう認めます!
ケビンは女! 女の子!
でも本人の認識が三年前からアップデートされてない!
いや女なのは自覚してるっぽいんだけど……。
俺を含めた士官学校我慢勢を除く、全方面から狙われてることをわかってない!
「あのさー……ほら、ベン先生いるじゃない?」
ベン先生とはクロノスに派遣された医師である。
ケビンは医学生&特例で手術などを手伝ってる。
ケビン本人は知らないけど、先日受験した医師国家試験は合格の方向だ。
政治的な思惑じゃない。
すでに前線で手術の助手しまくってるのだ。
クロノスの医師の元でも学んでて、ベン先生との共著で帝国人と外宇宙人との外科的比較論文を複数提出してる。
実際、成績も良好で性格も善人。落とす要素がない。
嫁ちゃんによると国家試験もほぼ満点みたいよ。
禁忌肢も踏まなかったみたい。
これだけやってて「不合格にするもん!」などと言えないわけである。
ゾークだから……って抵抗してる先生いるみたいだけど。
「ねー、レオ」
「あー……うん、それでベン先生がなんだって?」
「デートに誘われた」
「却下」
なぜ俺は脊髄反射で答えてしまったのだろうか?
「えへへへへへ。そうだよねえ。えへへへへへ」
なぜお前は喜んでる!
カオスじゃ……カオスがやって来ておる……。
マゼランにパーシオンに、ワンオーワン&ケビン美少女すぎ問題に……俺の頭はぐわんぐわんしていた。




