第五百六話
さーて船籍などを確認。
マゼランに隣接してるゼン神族と関係ない国だった。
オーゼン連合。
小国が集まってできた中位の国だ。
国どうしの会議で連合の決定がされるらしい。
無駄の極みみたいな気がするが……。
軍備はそこそこ。
現在のクロノス軍に毛が生えた程度かな。
鬼神国くらいかなと思う。
ただ話は通じるようなので常に侵略にさらされている。
民度はラターニア銀行あり! むむ、鬼神国よりも支店が多い。
うん、民度高い。
我々はラターニア銀行の支店数で民度を計測する方法を編み出したのだ!
人口を支店数で割って、そこに都市の面積から出した数字に経済規模やら平均年齢、傷病人の数やら犯罪発生率などのデータを加味した謎計算をした数値を出す。
するとあら不思議!
民度の推定値が出るのだ!
ヒャッハー! わからん!
何一つわからん!
大学教授とデータアナリストに説明受けたけどわからん!
なぜに対数? 微分積分? 複素数? 線形代数? なじぇ?
士官学校で習ったでしょって言われたけど、二年の途中で切り上げられたからわからん。
実業系の学校だとそんなものなのよ!
え? 戦術論でやった?
え? これぇ? 関数電卓アプリで計算するやつ? この計算式ぃ? 実際の使い方わかんないよぉ!
現場だと計算してる暇ないし!
あ、これを網目状の表面として考えて……分布を予測すれば答えが出てくる?
戦艦のミサイル回避プログラムと同じ計算式?
ほうほう、なるほど……わかんねえっす……(あきらめた)。
だが数値は利用させてもらう。
やはりプローンや鬼神国くらいアホの子だと侵略する価値もないわけである。
アホの子って強いな!
その代わり経済的に奴隷扱いされるけどね!
酷い国ばかりだね!
まずはラターニア経由でコンタクト。
知らないの一点張り。
船は返せだって。
話し合いもできない子に返すわけないじゃん。バカだね。
ということでバラしてリバースエンジニアリング。
銀河帝国とも情報共有。
そもそもネットワークの基幹システムを妖精さんにしてしまった。
わざわざ情報共有なんて言わなくても筒抜けである。
はっはっは。
クロノスでは妖精さんのコピーが大活躍。
見方によってはすでにディストピア監視社会が誕生してしまった。
俺は責任取らないけどね!
さーてクロノスとは違い、俺は引っかき回してないマゼランさんにオーゼンさん。
どうしてくれようかな?
今のところ俺には彼らへの責任は発生してない。
マゼランは保護国じゃないけど便宜を図ってたって感じかな。
そのせいで「俺がいないと困るだろぉ! オラオラオラ!」とDV彼氏みたいな態度で接してきてたわけだ。
ウザ!
とりあえず外交チャンネルで呼びかけまくり。
なんとかマゼラン側から救助要請が欲しい。
政治家的には滅ぶまで救助しないで後からやって来て経済植民地にしていくという手法も採れるが……。
結局、あとでもめてコスパ悪くなるんだよね。
それだったら独立国のままでいてほしい。
「めんどくさ~」
俺が言うと画面に映る嫁ちゃんも同意した。
「そりゃな~。婿殿は銀河帝国とクロノス双方の外交担当だからそりゃ面倒なこともあるじゃろ」
もはや利益相反とすら言われなくなってる。
そこまで俺を信じていいのか?
少し考え直した方がいいぞ!
「嫁ちゃんとイチャイチャしたい……」
「妾もじゃ……」
「嫁ちゃん……」
「婿殿……」
「はーい、茶番終わり~。仕事に戻って~」
クレアに邪魔された。
クレアも睡眠時間が足りず少しイラついてる。
気持ちはわかる。
「ひ~ん! お仕事したくない! マゼランは関わりたくないし、オーゼンは船を返す返さないでもめてるし! せめて乗員を返せって言えよと!」
「あ、それ! オーゼンの船の解析結果出たって」
「乗員の聴取は?」
「正式な軍事作戦だって言ってるよ」
「じゃ、もう宣戦布告でいいよね!」
「でもそれだとパーシオンが反対してるよ。抗議文が来たし」
パーシオン統一人民国。
すべての人種を平等に扱うことを目的とした国家である。
基本的に全体主義。
ラターニアみたいな明るい全体主義ではなく湿ってる方。
ラターニアは約束ベース。
つまり国家もラターニア人を保護するという約束を真面目に実行してる。
ラターニア国民は国家へ強力な義務を負うが、ラターニア政府もまた国民へ強力な義務を負ってる関係だ。
社会契約論をけじめと仁義で貫くとこうなる。
対してパーシオンは支配のための全体主義だ。
パーシオン国民は国家に服従する義務を負うが、国家は約束を守る必要はない。
国民を国家の歯車としてしか見てない。
強いのはパーシオンかなって思うけど、国民の国家への信頼や忠誠……要するにガチ度はラターニア国民の方が上だ。
「みんなのために死ぬ」
これを国民の末端までが本気で言えるラターニアは本当に敵にしたくない。
話し合いが通じる国家でよかった。
パーシオンは表向きは資本主義国家で自由貿易を推進してる。
実際は不利になったら嫌がらせし放題である。
パーシオンとお話ししたくないな。
というわけでクレアと一緒に会談。
パーシオンの外務大臣が出る。
「これはこれは大公陛下」
『これはこれは』に嫌味がつまってる。
虫歯になればいいのに。
「外務大臣閣下、今日はお日柄も良く……」
必殺! 『てめえとは話しする気もねえ! 天気の話でもしとこ』の術。
ニンニン!
「ははは。神に選ばれた大公と評判ですが、小国をいじめてはいけませんな!」
「その小国が近所の家を破壊して、うちの家まで攻撃しかけてきたんですけど~。うちとしてはご近所さんの救助すらままならんのですわ。パーシオンからも攻撃しないように注意してくれませんかね?」
「オーゼンに船を返還しなさい。さすれば口利きしましょう」
「それ文書にできます?」
「もちろん」
「では……クレア。船の返還を」
「かしこまりました陛下」
「え?」
なぜかパーシオンの大臣が目を点にした。
「現在返還準備してます。乗員は裁判をせねばなりませんが」
「もう……できちゃうの……ですか?」
「ええ!?」
もう解析済みだもんね!
入力出力航行可能距離くらいしかデータいらないし。
そもそも弱点は機体にあるんじゃなくて、舐めプにあるんでな。
正確に言うと自分に自信持ちすぎなことが原因だ。
アホの極みである。
「え、ええ、では我らからもオーゼンに警告をしておきます……」
はっはっは!
勝利!
ここからのシナリオは予想してるもんね~。
捕虜を裁判にかけることに難癖つけてくるのですよ~。
もうわかってるもんね!
だからパーシオンに言っちゃう。
「マゼランへの救助。御一緒しませんか? ラターニアとクロノスも参加する予定です」
いつのまにか共犯にしちゃうの術!
外務大臣は最高に嫌そうな顔してた。
ヒャッハー!




