第五百四話
戦艦カミシロで目的地に進む。
領地内で何か起こるはずもなく、暇を持て余した俺は水耕栽培施設でトマトの収穫をしていた。
また新しい品種だ。
例の無限に増える野菜シリーズであるが水耕栽培で使うのは禁止された。
でもクロノスの食糧不足を解決するには最高の野菜だった。
水耕栽培施設を建てて三ヶ月後には異常な数の収穫物があった。
本当に食糧ないときトマトとイチゴとイモばかり食べてたもんね。
それで餓死しかけたんだけど。
あとハスとゴボウか……(ご馳走枠)。
野菜だけで必要カロリーに到達するの……かなり難しいよね。
さらに言うと同じものを食べ続けると飽きる!
大根とカブの収穫で踊ってしまったほどだ。
「トマト……オレ……料理作ル……」
トマトと卵の炒め物をマイフライパンで作ってると嫁たちががやって来る。
「いる?」
「うん、手伝うよ」
クレアの手伝いで料理を作ってるとクロノスの調理担当に「代わります」と言われて厨房から追い出された。
カナシイ……。
「オレ……料理……スキ……」
「レオさ……大統領府時代より食費が安すぎるって官房長官がぼやいてたよ……」
「別に質素にした憶えはないのだが」
お酒飲まないし。
自分の会社のお菓子と自炊の材料くらいか。
別にその辺で買えるグレードでいいしな。
そりゃ閣僚と会食するけど、そのときは嫁ちゃんと一緒で宮殿で作ってもらうし。
そもそも酒飲めないし~。
あと数カ月の我慢だ……。
俺の肝臓! 本番は近いぞ!
「イモ……食ベル」
お芋むしゃむしゃ。
艦長と言っても、ここまで大きな戦艦だと仕事がない。
ぼけーっとしてると嫁ちゃんから連絡があった。
今回嫁ちゃんは後方で待機。
エッジとアリッサがいる。
ジェスターを一人残しておけば大丈夫だろう。
すると嫁ちゃんは笑顔になる。
「婿殿暇か?」
「暇ッス」
「おうおう、そうか。じゃあ、カトリがそっちに乗ったぞ」
「なん……だって……密航者! 密航者がいるぞ! 妖精さん! 密航者を捕まえて!」
「レオくん……もう遅いです。ここに向かってます」
「ぎゃあああああああああああああッ! 俺は逃げるぞー!」
カバーを開けて電気通信メンテナンス用の配線溝に逃げる。
そのままサーバールームか機関室に籠城する。
……サーバールームは前に見つかったから機関室だな。
壁の中を通って……。
よし機関室!
このまま作業着を着てエンジニアのフリしてよう……。
「よ! レオ元気か!」
笑顔のカトリ先生がシュバッと手を上げた。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
先回りされてた。
これ絶対逃げられない系の怪異だろ!
「よーし、訓練室行くぞ~」
「嫌だにゃー!」
「はっはっはっはっは!」
俺が訓練室に連行されると子分連中もやって来る。
鬼神国人からすればカトリ先生は憧れのアイドルみたいなものだ。
できればなすり付けたい。
と……思ったら秒で蹴散らされてた。
カナシイ……。
「レオさあ、弟子ちゃんと育てろよ」
「俺の弟子じゃないですし」
「後進の育成しろよ~。師範なんだから!」
「師範って初めて聞いたんすけど!」
「俺に完全勝利したんだから師範でいいだろ。だれも文句言わねえよ!」
いつの間にか師範にさせられてた。
「ほれ、帝国剣術の師範証」
先生に手帳を渡された。
なんだこりゃ?
「それと師範のワッペン。道着に縫い付けとけ」
「えっと……冗談じゃなくて師範?」
「おう、あとで軍のアプリに資格が付与されるからな」
カトリ先生は本気だった。
えー……弟子ぃ!?
自分のことで手一杯なのに弟子なんて……無理だろ。
「ま、がんばれやー」
「そうですね。では弟子の面倒を見なければならないのでこれにて御免」
奥歯きらん!
「それとは別だ」
捕獲されたでゴザル。
こうしてスパーリングをさんざんさせられて解放されたのである。
イモ……欲シイ。
二日後、現場に到着。
現場は膠着状態だった。
現場の総責任者の少佐と会議をする。
「少佐、被害状況は?」
少佐はクロノスの士官学校卒の元少尉だ。
生き残ったので少佐まで昇進してもらった。
少佐が現場の総責任者かよって思うかもしれない。だけど圧倒的に人手が足りないのだ。
佐官が圧倒的に足りない。
部長さんがいなすぎて、係長さんとか班長さんを部長さんにしてる状態なのよ!
退役軍人もほとんど死んじゃっていないという状態だ。
本当に我がクロノスは末期状態である。
そんな末期状態で少佐は士官学校卒だけあって新しい戦術や組織にも適応してくれた。
偉い!
年齢は三十歳手前だ。
既婚者でお嫁さんの実家に帰省中にイナゴテロにあった。
幸い家族でラターニア銀行の地下に逃れて難を逃れた。
ただ実の両親は未だに行方不明。
復讐に燃えている一人だ。
「パイロットの入院者が二名。人型戦闘機も大破が一機。兵士の損害も重傷者が二十名ほど。これは作業時のケガも含めてです。ほぼ無傷と言っていいかと。それと駆逐艦が三隻ほど航行不能状態になったくらいでしょう」
「敵の損害は?」
すると少佐が戦艦の側面カメラを映してくれた。
「大型戦艦拿捕。現在捕虜の搬送作業をしてます」
……クロノス公国軍……強すぎ。
「やはりシミュレーターの効果がハッキリ現われたようです」
原因は拙者でござった。
現在シミュレーターは軍艦のクルー用まである。
もちろん全力で殺しにかかってくるやつだ。
軍艦のもゾークに囲まれた状態から生き残るシナリオや人型戦闘機に囲まれるものまでそろってる。
現場指揮官用から俺の苦手な司令官用まで作った。
なお俺は戦術級でフルボッコ状態だ。
鬼かな?
レンがお茶を運んでくれた。
そうか。焦る必要はないか。
俺たちには無限に時間があるがゼン神族の持ち時間は少ない。
そろそろマゼラン破壊へのラターニアと太極国による介入が始まるだろう。
「少佐、現状維持。ただしマゼランの状況だけは監視して」
「陛下かしこまりました」
さーて、どう出るか。
俺も練習しとこ。
出撃するなって言われても出るもんね~!
マゼランには悪いけど、こっちも損害出すわけにはいかないのよ。
あ、いいこと思いついた。
俺は食堂のスピーカーに繋ぐ。
「タチアナ。結界砲用意。ゼン神族に嫌がらせするぞ」
「は? ちょ、兄貴! あとでデザートな!」
「へいよ~」
へい地獄一丁!
はっはっは!
ちょっかい出してきたことを後悔させてくれる!




