第四百九十六話
ひゃっほーい。
ガシャコン、ぽいっと。
いやさー、結局、作業用の重機なのよ。
本来なら緊急脱出レバーのカバーを開けるには同じ組織であるという認証が必要なんだけど。
それやってたら、斜面から落ちそうとか陥没穴に飲まれて水がせり上がってくるとか、暴徒にガソリン入りの火炎瓶投げられたとかに対応できないのよ。
だからほとんどの会社はわざとオフにしてるのよ。
大手なら認証しないようにカスタム注文してるけど、中小や警察含めた地方公務員はそうもいかない。
メーカー非推奨での運用をせざる負えないのよ。
帝国もそうだし、ラターニアとかも同じだった。
というか、最新機種はたいてい銀河帝国の規格。
帝国のロボは性能いいからね~。
あ、大丈夫。ラターニアとの貿易摩擦はないよ。
ラターニアの人型重機は規格が一般化しすぎて価格競争が激しい。
もう商売にならないのだ。
だからラターニアの重機メーカーと共同開発でラターニア向けはハードは銀河帝国、ソフトはラターニアに作ってもらってる。
もちろん太極国向けはソフトは太極国のエンジニアに作ってもらってる。
儲けは減るけど売れる数が違う。
外宇宙での需要を考えれば、個々の金額なんて数字でしかない。
最終的に外宇宙の国と良好な関係を築いて帝国の安寧を目指す……と考えれば赤字にならなければいい。
本当に儲からなくなったらクロノスに工場作ればいいしね。
今やってる軽工業なんかよりはずっとマシだ。
クロノスは周辺国の工場を目指すぞー!
そしたら15年は時間が稼げるから儲けを若手研究者やクリエイターに金ぶっ込んで技術革新するぞー!
あとは野となれ山となれー!
さーて、あとは俺のために!
俺のためだけに!
アニメ、ゲーム、マンガを充実させるぞー!
まずは下請けだ。
失業状態のアーティストは大量にいる。
くっくっく……。
というわけで、ガチャコンしてからぽいっと。
10体ほど機能停止させて終了。
今度は人型戦闘機。
「出撃するでゴワス!」
「旦那様は大人しく座っててください」
ということで拙者、宇宙怪獣カワゴン。
レンと騎士団に捕獲されて防空壕に放り込まれる。
なんか小腹空いたんで食べるもの……栄養バー……あ、はい。
リスみたいにガジガジ。
偉くなったカミシロ一門幹部は防空壕行き。
みんな戦いを望んでいた。
ほぼ懲罰房状態である。
イソノと中島が嫁さんたちと合流した。
「よ~、そっちはどうよ?」
「人型重機倒しまくった」
「お前戦闘服は?」
「いらん」
「アホだなお前」
このように不毛な会話をしつつクロノス公国軍の戦いを見る。
パイロットは死ぬほど鍛えた。
例のシミュレーターを使った訓練である。
ソロクリアは無理でも中盤までは到達できた者ばかり。
カトリ先生も来たし、白兵戦の訓練もしてもらった。
ナイトメアモードでな!
その結果が今、試される!
「こちらクロノス公国軍チーム【鉄の鷹】! 敵機に警告、応答ありません! 攻撃許可求む!」
「許可する。敵対行動を確認したら攻撃せよ。それまでは待機」
同窓生で元平民の男子、ジムくんの声だ。
クロノス公国軍は上層部がカミシロ一門である。
将来の銀河帝国公爵なんだけど、後ろ盾がないやつらが結構いるのだ。
帝都の平民だったり、ビースト種の地方惑星民だったり、クロレラ処理の開拓民の末裔とかだ。
やはり、軍幹部というだけでは公爵は難しい。
ケビンなら女性型ゾークの指導者っていう大義名分があるが、他の連中は難しい。
伯爵でも面白くない貴族がいるのが現実だ。
ここで思いついたのがクロノス公国爵位ロンダリングである。
要するにクロノス公国の貴族にして、それから公爵にすりゃいいじゃんというわけである。
クロノス公国じゃ領主なんて言っても市長とか県知事だもんね。
権限とかも難しくないので平民出身でも治めやすい。
期限付きならなおさらいい。
追い出されたら銀河帝国で領地を持てばいい。
統治の勉強と思ってやってほしい。いきなりナイトメアモードだけどね!
結局システムが完備されてる箱があれば誰がなっても無難に着地できる……はずだ。
しかも新興貴族しかいないから好き勝手に爵位捏造できる。
いいんだよ! 実績あるんだから! 帝国の反対派なんて難癖つけてるだけなんだから!
というわけでジム侯爵が指揮をする。
ジムくんはクロレラ処理人間である。
身長は二メートル近い。開拓民の子孫だ。
身長高いからバスケットボール部に強制入部させられた。
彼の指揮官としての初戦である。
わくわく。
「プローン旗を確認。プローン帝国聖騎士専用機に酷似! 装備は敵機実弾兵器!」
「了解。プローン語で呼びかけよ。司教級【止まれ】」
歯舌をこすり合わせる音がした。
「応答ありません! 敵機、銃を構えました」
「攻撃せよ!」
銃構えてからでいいんだよね。
みんな撃たれてから回避できるし。
「ミサイルロックオンされました! 回避!」
マニュアル操作でミサイルをかいくぐり、センサーに把握されない動きで回避する。
「EMP機雷発射! ミサイル無効化!」
機雷が爆発した瞬間、一瞬ディスプレイが白飛びした。
画面が元に戻るとコントロールを失ったミサイルが大気圏で爆発した。
ほらね。
ラターニア製ミサイルのデータは万全!
戦艦の大型ミサイルでもなければ回避可能だ。
「敵機ラターニア製バトルキャノン掃射してきました。迎撃します」
バトルキャノンなんて当たるわけないよね~っと。
距離を詰めてクロノス機がビームブレードで斬りかかる。
重装備のなんちゃってプローン機が盾で防ごうとするけどムリムリ。
蹴りで体勢崩されて袈裟斬りにされ爆発四散した。
やだーうちのパイロット強すぎる!
他の機体も次々撃墜されていく。
「一機は捕獲せよ」
「了解」
ジムくんが命令すると四機で残った一機をネットランチャーでグルグル巻きにされて捕獲。
まったく相手にならない。
「……レオ様?」
シーユンがやって来た。
シーユンもすでに例のシミュレーターで3分は安定して生存できる腕前だ。
ワンオーワンとタチアナも同じくらいの腕である。
「い、一般のパイロットがこの腕……すごすぎる……」
「うん! やっぱりパイロットは全員ソロクリア目指さないとね!」
俺が親指を上げる。
「それ覇権国家じゃ……」と言われたけど、そこまで甘くないと思う。
今だと人が凄くても物量で勝てないからね。
やっぱり戦争は物量が大事。
今は物量確保できるようにしてるとこ。
それには周辺国の工場にならなきゃいけない。
うーん、だんだん目指す場所がわかってきたぞ。
がんばるぞい!




