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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第四百九十五話

 レンです。

 敬愛する旦那様と一緒に避難しましたが……三体の人型重機に囲まれました。

 私が戦う? いえいえ。

 旦那様はクロノス公国大公。

 お食事をひかえすぎて栄養失調状態ですが……飢えた獣は恐ろしいもの。

 災害時の消火用斧をその辺から持ってくると人型重機に襲いかかりました。

 まるで蚊……いえ蜂の如き動きで人型重機に貼り付き登っていきます。

 クロノス公国の近衛騎士団の制止など間に合いません。

 エンジニアでもある旦那様は恐ろしく手慣れたご様子で操縦席をこじ開けました。

 事故時の外部緊急脱出用レバーをこじ開けて……そんな簡単に開きましたっけ? それ?


「たしか認証が……ルナ様でしょうか?」


 するとルナ様が呆れた声でお返事されました。


「私じゃないですよ。作業員に広く裏技として知られてるテクだって」


「さすが旦那様!」


「レンちゃん……レオくん相手だとよくバグるよね? 王様が現場作業員の裏技知ってるのが異常なんだって」


 なんのことやら。

 レバーを引いて操縦席が開放。

 そうしたら斧を持って突入。

 パイロットをボコ……打擲して席ごと放り出しました。

 ええ……外部からの救助用なので席ごと外れるのです。

 他の人型重機が銃を構えますがもう遅い。

 ポイッと操縦席を開けられ外に放り出されました。

 もう一機が逃げだそうとしますが、すでに旦那様は背中に貼り付き……ポイッ。

 さすが旦那様です。

 人型重機程度ではなんの壁にもならない。

 あまりに一方的な展開に胸がときめきました。

 私はそう思い、我がビースト種で構成された騎士団に命令しました。


「やっておしまいなさい!」


 わおーん!

 狼の人たちが集団で殴ってます。

 熊の人が噛みついてそのまま放り投げました。


「殺さないでくださいね」


「はいレン様!」


 我らビースト種は気性こそ少々荒いが野蛮人ではありません。

 死なない程度の加減はできます。


「いやー、いい運動した」


 スッキリした笑顔の旦那様。

 先ほどまで限界まで食べてましたので。

 いい運動になったのでしょう。


「さーて検証、検証っと」


 旦那様が敵機のコンピューターに端末を繋ぎます。


「お、ラターニア製のOSか。こいつならいじりなれてる……」


「データ抜きますね~。あんれー? これ太極国輸出用のカスタム版ですよ~」


 ルナ様も勝手にいじり回してデータを抜いていきます。


「レ~ン、手伝ってくれる」


 久々の整備のようです。

 元々私は戦闘要員ではなかったのです。

 人型戦闘機の整備班志望でした。

 別に得意だからではありません。

 目立たないようにするため。

 それに整備班はマルマを養うのに充分な給料がもらえるのです。

 父や兄、正妻様が生きてた頃は私とマルマは奴隷みたいなものでした。

 成長したら適当な貴族の後妻にされる運命。

 マルマは騎士団で使い潰しでしょう。

 だけど軍なら少なくとも人間扱いされます。

 それは私と利害が一致しました。

 子女を軍に入れるのは貴族の義務。

 徴兵に応えるのは当然として、複数の子女がいれば軍に入隊させます。

 これこそが貴族である! というのです。

 旦那様は「大学に無料で行けて給料出るし」と仰っておられますが……それは異常な感覚です。

 少なくとも侯爵家の発想ではございません。

 私が軍に入隊しなかったらマルマが行くことになっていたでしょう。

 その前に私が軍に行きマルマの居場所を作るつもりでした。

 だが現実はマルマが当主になり、私は旦那様と結婚することに。

 なんと数奇な人生でしょうか。

 私は手袋をはめて旦那様を手伝いました。

 私は機械、特に駆動系の係でした。

 ソフトウェアはあまり得意じゃありません。

 組み込みは面倒です。

 メンテナンスモードにしてもらったので関節部を開いて端末にコネクタを繋ぎました。

 これでセンサーから数値をダウンロードしました。


「油圧異常なし……というか新品ですね。グリスは……」


 グリスは関節部をドライバーでこすって油をつけました。

 そうしたらニオイをかぎます。くんくん。

 成分分析器にかけてもいいですが、ビースト種ならニオイである程度状態がわかるのです。


「グリスがまだ新しい……」


 先ほどまで動いていたのでグリスは濁ってました。

 でもまだ新しいにおいがします。


「レン、武器はどう?」


「武器は実弾です」


 こちらは古い装備です。

 ビーム兵器のオゾン臭とは違います。

 手入れはされてるが古い油の酸化したにおいがします。

 さらに手入れでは取り切れてない硝煙のにおいが染みついてます。

 何度も使われた銃のようです。

 クロノス用に輸出されたものならわかります。

 現在クロノスは物資不足。

 地下保管庫にあった旧式の実弾兵器を使ってる状態です。

 対ゾーク戦じゃあるまいし、なんで弾持ちの悪い実弾兵器なのでしょうか?


「俺たちをゾークと誤認した?」


「わかりません」


 たしかに私たちがゾークであると勘違いしてるならこの装備も納得です。

 だけど私にその判断はできません。


「ただ……この銃は……存じません」


「銀河帝国のじゃないってことか」


 私たちでも他国の旧式兵器までは把握してません。


「刻印からすると太極国かな? 太極国から輸出されたものかもしれないけど」


 するとシーユンちゃんから連絡がありました。

 相変わらずかわいいですね。

 地下の防空壕に逃げられたようですね。


「レオ様! ご無事ですか!?」


「へーき、へーき。そっちは?」


「いま避難地点へ到着しました」


「そのままケガしないでね~。お兄ちゃんに変わってくれる」


「は、はい!」


「やっほ~、お兄ちゃん」


「大公陛下……もう国家元首なのですから……そのように軽い言動は慎んで……」


「いいからいいから。ねえ、こいつなんだけどわかるかな?」


 旦那様が端末で写真を撮って送りました。


「我が国の装備のようです。旧型で地方の惑星ではいまだに使われてると聞いております」


「入手元辿れる?」


「難しいですが……やってみます」


「お願い」


 本当に恐ろしい事であるが、旦那様にかかれば外国人でもこうなります。

 いつの間にか協力させられています。恐ろしいことに。

【フレンドリーな悪魔】とは鬼神国の評判は的を射てるようです。

 旦那様に悪意などございません。

 むしろ悪意のある場合は失敗することが多いように見受けられます。

 それはクロノスで行われた総選挙と国民投票の結果を見れば明らかでしょう。

 やはり私のようなまともな人間が支えなければ!

 そう思いを新たにしたところで警報が鳴りました。


「人型戦闘機接近! 防衛網を突破! 大気圏に突入しました」


 すると旦那様がにやあっとほほ笑みました。


「レン、ちょっと行ってくるね」


 敵にとって絶望が立ち上がりました。

 なぜか私の胸はキュンキュンしていました。

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― 新着の感想 ―
……さすがマスターキー、異次元未来宇宙でもその効果は健在だなぁ(遠い目)
ファンタジーな世界なら身体強化魔法で、強化した熟練の戦士がドラゴンを倒せるらしいけど、レオってそういうレベルだよねぇ。
おかしいな、、、生身での人型戦闘機戦で1番武装が貧弱なはずなのに1人で3機無力化しとる わかってたけどレオって種族レオだよな
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