第四百九十一話
やっほー、モブ子だよ!
行き着くとこまで行った人材不足で帝国憲兵隊のトップになっちゃった。
おかしいんだよね。
皇帝ヴェロニカちゃん陛下艦隊のトップになったんだけど、「それ帝国憲兵隊トップって意味だから」ってわけのわからないこと言われた。
しかも知らない間にクロノス公国軍憲兵隊総司令官っていう肩書きが生えてきたんだ。
メッセージボックスに辞令が入っててびっくりだよ!
お給料2倍だからいいけど!
しかもね! なんか映画が作られるんだって!
モブ子がイケメンに言い寄られる逆ハーレムものだって!
それで完成した映画が送られてきたんだ!
強敵……? 逆ハーレム?
なぜ!?
とうとうオッパイすらなくなって雄ッパイになった野太い声のマッチョが暴れて爆発爆発爆発……。
神様……はたして私が結婚できる日は来るのでしょうか……。
モブ子……リコ・サカザキは結婚したいです。
できれば専業主婦で、モブ子は働きたくないのです!
仕事しないで同人誌描きまくる生活がしたいのです。
そんなささやかな生活を夢見る私が警備を指揮する。
今日はレオくんの護衛はなし。
指揮だけなので元漫研のみんなのところに行ける。
クロノスは先進国でかなり民度が高い。
問題もなく漫研のブースに行く。
知らない間に大学校まで卒業させられてたので未だに学生気分だ。
本当に学生なのは医学部に入ったはずのケビンちゃんくらいかな。
もともと衛生兵志望で看護師資格が生えてきたんだけど、大学校進学だし医学部目指してみようかななんて言ってたんだよね。
知らない間に4年まで修了させられてたって。
今度医師国家試験受けるんで大変みたい。
もう普通に手術手伝ってるしな~。
聞けば聞くほど私たちってよくわからない特例まみれだよね。
レオくんも同じ。
レオくんの場合は法学部なんだけど社会政策で学位が送られてきたみたい。
で、「それだけじゃ足りないよおおおおお!」って言いだして帝都の大学に願書出したんだよね。
そもそもレオくんの外交レポートや現地法律を解釈した実務レポートを大学の教授が分析してるレベルなわけで。
「むしろ教授待遇で招聘します」とか言われてるんだって。
そうか我々は文官の最前線やってるのか……。
というわけで学生気分で漫研ブースを訪問。
かなり広い……というか一棟貸し切り。
漫研だけじゃなくて写真部や美術部、文芸部なんかもブースを出してる。
さらには、商社さんとかがスカウトするブースがある。
クロノス支社の企業内デザイナーが足りないのだ。
ただの同人誌頒布会のはずなのに空気が違う。
文芸部の外宇宙の論評や時事評。
写真部の惑星写真集や乗り物、重機や民間飛行機の写真集。
そういうのを血走った目の文官さんや大学関係者、商社の人が買いあさってる。
そりゃそうか。
最前線の貴重な情報だもんね。
レオくんは基本的にフリー素材なので失敗までネタにされてる。
ラターニア人に不評のお菓子をみんなで食べてたとか。
こういう記録ものも飛ぶように売れてる。
漫研の同人誌はエッチなのは禁止。
まだクロノスでどこまではっちゃけていいかわからないからだ。
オリジナルマンガが多い。
多くが帝国で出版が決まった。
カミシロ隊メンバーが描いたってだけで宣伝効果ありまくりだもんね……。
他にも出版社が最新マンガの翻訳版を大量に持ち込んだ。
マーケティング兼ねてるみたい。
これらも飛ぶように売れてる。
イラストやグッズも売れていた。
うーん思ったのと違う!
私は礼服寄りの普通の軍服で元漫研のみんなに挨拶。
「やっほー元気」
「あ! リコち!」
「これ差し入れ」
セルバンテスで買ってきたエナジードリンクとお菓子を差し入れ。
さすがにレオくんみたいに「民が食えないなら俺も食わない!」なんてやせ我慢はできない。
いくらなんでもレオくんの行動はおかしいと思う。
あそこまでやるのが王様なら……なりたくないな……と本気で思う。
レオくん……やはり化け物だよね……。
英雄ってのはあそこまでするものなのか……。
うん、私には無理だ。
私はちゃんと食べてる。
お菓子も食べる。
「あとおイモ~」
焼きイモは大量に売ってる。
というかクロノスはこれしか残らなかった。
作った分を国で買い上げ、安く販売してる。
これでクロノス民もギリギリ餓死は免れたってわけ。
「ありがとう!」
「写真部も文芸部も食べて~」
「あざっす!」
写真部と文芸部も喜んでくれた。
我々陰のものは身を寄せ合って生きてるのである。
最近では体育会系陽キャもポジションが違うだけで似たような生活なのがわかってきたけど。
うーん私も同人誌買って……って思ったのね。
そしたら警報が鳴った。
警備してる憲兵隊とクロノス警察の合同本部からだ。
「不審なトラックが接近中。プローンの国旗が描かれてます!」
プローン?
プローンの反逆?
それだけはない。
もうプローンは子どもしか残ってない。
若干一名、レオくんを嫌ってる子がいるけれど……彼も帝国士官学校受験するみたいだし。
大人の生き残り?
いやプローンは人型戦闘機を一から開発することはできない。
ラターニアや太極国、果ては屍食鬼や海賊ギルドから買った素体をカスタマイズしてただけだ。
「嫌な予感がする」
私は戦闘服を展開する。
私専用の装備だ。
要するに変身スーツだ。
背中のバックパックから装甲を展開してフルアーマーになる。
だけど武器はウルミだけ。
「持ってけ!」
写真部所属で憲兵隊の男子がパルスライフルをくれた。
「俺も用意したら合流する」
「先に地獄で待ってるぜブラザー」
親指を立てて現場に向かう。
女子に「やだリコちかっこいい……」とか言われるけどうれしくない。
ガッシャンガッシャン歩いてると写真を撮られる。
親指を立てて挨拶。
「危ないから下がってろ」
そう警告しとく。
なぜかカメラマンにまで「やだカッコイイ」って言われた。
「リコ隊長、うさぴょん準備しますか?」
「頼む」
リコ・サカザキ、もうすぐ20歳。
彼氏が欲しいです!
専業主婦希望です。
誰か! 婿をくれ!




