第四百八十五話
公園に水族館を建設中だ。
「スンマセン。ほんと、つぶやいただけなんです! 勘弁してつかーさい!」
って素直に謝罪したのね。
そしたら侍従さんや官僚に
「国営水族館を移転するだけですよ」
と笑顔で言われたので断れなくなっちゃった。
動物園と国営美術館もこちらに移転だって。
宮殿を中心にした区画整理するから無駄遣いじゃないと断言された。
文化財もかなり失われたようだ。
幸い油絵の3Dデータを取っていた。
かなり近いもので復元できるそうだ。
ただオリジナルは失われてしまった。
こういう文化財ってさ、存在することに意義があるんだよね。
なんというか民族の壮大な物語の一部ってやつ。
「こういうのってつらいよね」
うちら銀河帝国もゾーク戦争で失われた文化財は多い。
帝都の建築物は……ほぼ全滅だしね……。
それがわかるから談話出したのね。
「なるべく復元する努力するよ」って。
「民間業者さん手伝って! オナシャス」って意味なんだけどね。
そしたらさー、ほめられてしまった。
いや将来の増税要因かもよ~。
民度高い大国だから許されてるだけって感じはする。
クロノス人は自分の国に誇り持ってるしね。
たしかに文化財破壊って相手の心を折るには効果的ではある。
だけど数百年は怒りが持続する。
占領政策的にはカス中のカスだよね。
まー、最終的には芸術家の新作しかないよね。
問題は権威化だよね。
「自分が偉い」とか「優遇されるべき」って言い出さないように監視しないと。
言いだしたら叩きつぶす。
だってさー、そういう勘違い発言されると、なぜか政府にダメージ入るんだもん!
勘違い発言! だめ! ぜったい!
俺も偉くないしお前らも偉くない。
このラインで行こうと思う。
でー、陰謀論あおって数年で失脚しようと思うのよ。
ネットの海で仲間捜し。
前に俺が長屋のガキどもと芋掘りしてた動画が出てくる。
その動画のコメントを見る。
「王様って子ども好きだよな」
よしいいぞ!
俺にロリコン疑惑をかけろ!
そしたら嫁ちゃんとの新婚のときの写真出してどん引きさせてやる!
「視線がイモに集中してるな。どんだけハラ減ってんだよ」
「焼き芋食って幸せそうな顔してるぞ」
「王様って本当は大食いらしいぞ。でもクロノス大公になってみんなと同じ量食べてたって」
たしかに5キロ減ったな。
胸に筋肉の線できたときはビビった。
さすがにドクターストップかかってプロテインと大豆で調節したけど。
餓死者は最小限ですんだと思う。
すこまで自信はない。
「それでも自分より先に子どもたちに分けてるな……神か?」
あれ……?
空気変わってきた。
「王様、神に選ばれたって話だしな」
「神の像が光ってやつか!」
「やらせじゃねえの?」
よしいいぞ!
あれはやらせだ!
殺害予告しろ!
「いやコメント避けてたな。科学的に解明されてないことにはコメントできないって」
いや、なんて言えばいいんだよ……。
俺がクロノスの神でーす!
なんて言えるかボケが!
「銀河帝国人ってのはこんななのか? 損な生き方じゃないか?」
「俺……明日軍に志願してくるわ!」
「俺も俺も!」
おかしい……。なぜだ?
なお俺の捨てアカで立てた【大公を追い出して民主主義を取り戻そう!】というトピックは【ゼン神族のスパイが! 死ね!】と相手にされなかった。
なぜだ!
カナシイ……。
そんな陰謀をめぐらせるだけの余裕ができた頃、例の神像の調査結果が出た。
やはりジェスターに反応するもののようだ。
そしたらクロノス教……。
えっと、本来の名前が完璧に訳せなかったのでクロノス教とする。
そこの教主さんにある提案をされた。
「初代国王の遺跡をご案内します」
「もしかして霊廟?」
「ええ、霊廟……とはいえご遺体は安置されておりません。初代国王はいずこかへと旅立ったと記録されています」
おっとー、また古代遺跡だ。
フラフラ行ったらみんなにボコボコにされるので我慢。
「えーっと、聖女や他のジェスターに仲間呼んでいいですか」
「もちろん。聞くところによると銀河帝国はマット、ジェスターの子孫だとか。ぜひお願いします」
「よろしくお願いします」
ちなみに敬語であるが、「クロノス語うまくないから許してぴょん」と言ってある。
命令口調で話すと疲れるのよ。
……俺は面接で敬語と上座下座で詰むタイプの体育会系である。
というわけで独身族にタチアナとアリッサ、それにリコちにクレアにメリッサにレンを連れていく。
ケビンも今回は女子寮が暇すぎると参加。
嫁ちゃんの警護はトマスたちに頼む。
今回のゲストは座敷童ちゃん。
なんか来たいんだって。
ご神体の御札ごと参加。
末松さんが担いでる。
俺たちの末松さんへの期待はとどまることを知らない。
リコちはフルアーマーだ。
なお護衛はクロノス公国近衛騎士団団長に就任したヘロンくんだ。
上司のレイブンの元で仕事を憶えているところだ。
「大公閣下、準備整いました」
「へーい、行くぞーい!」
知らないところで国の公式行事にされたので俺はオープンカー。
クレアたちと手を振る。
独身族も長屋にいた頃に俺の謀略で相談役とかの役職にしてやった!
取っ組み合いの喧嘩になったが納得させた。
あとで全員ハーさんに怒られて正座させられたが良い思い出だ。
手を振りながら移動して神殿へ。
なぜ近くに移転してきた神殿まで電車で一駅なのに30分かけて移動したのだろうか?
……ま、いいか。国民は喜んでくれたみたいだし。
「電車でいくもん! もしくはチャリ!」
って言ったら関係者ほぼ全員に怒られた。
私物のチャリ持ってきたのに……。
ローンで買ったロードバイク。
カナシイ……。
神殿に到着。
近衛騎士団は遺跡の前で待機。
ヘロンくんと末松さん、あと嫁たちと独身族、それにリコちで行く。
「ここまで手勢を減らすのは危険では」
ヘロンくんに言われる。
「見てください。あの末松さんの姿を。本当に危険な場所なら彼は来ません」
「末松氏は異能者ですか?」
「検査してもわかんないんですよね~。みんな異能者だと思ってますけど」
現在の検査では検出されない。
でも確実になんらかの力を持ってる。
だから信頼してる。
教主の爺様に案内されて霊廟に入る。
「あーそういうことね」
それはサリアたちがこじ開けようとしてたゲートそっくりな装置があった。
ただ本当に扉だった。
石でできてて重そうである。
「これが別の宇宙に繋がってるなんて……」
「いえ、中はあるはずです。王朝時代のスケッチが残されてますので」
装置のコントロールパネルがあった。
「手置きますよ~」
「は! お願いいたします」
ほいほい。
認証装置はまだ生きてそうである。
手を置くと装置が光った。