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第四百八十三話

 まずは総選挙が始まった。

 国会議員のほとんどが死んだので、完全に一からの選挙である。

 複数の惑星から選ばれる知事や大きな惑星の市長経験者が選ばれることが多いらしい。

 首都星の有力者は……ほぼ死んだ。

 四十五歳より上の生存率が低いのよ……。

 生き残ったのは、たまたま避難所の近くにいたとか、地下で作業してたとか、肉体労働者で体力があったとか。

 あと海にいたものも多い。

 船員の生存率は統計からも明らかだ。

 それと戦略的価値の低い惑星の住民の生存率は高い。

 軍は警察含めほぼ壊滅。

 鬼神国人を警察官に採用したのは正解だった。

 彼らは女性に対して乱暴狼藉はしないし、麻薬もやらない、金勘定がドンブリすぎて賄賂で買収も不可能。

 完璧である。すぐサボって喧嘩しはじめるけど。

 勘の勝利! ホームランである。

 総選挙前に統計を発表。

 表とグラフ読めないやつが『私が優秀だから地元で犠牲者が少なかった』と言い張りやがった。

 少しムカついたので、『軍人が我が身を犠牲にして地元民を守ったんだ』と公式発表。

 ぶち殺すぞテメエ。

 そりゃさー、あまりにも軍人さんを美化するのも良くないけどさ。

 たしかに何もできなかったのは事実なんだけどさ。


「殉職したのは事実なんだから……敬意を持て、な?」


 俺、メディアの前で直接怒っちゃったよ。

 だって俺たち帝国民だってゾーク戦争で戦った人たち、特に首都奪還作戦で亡くなった兵士に敬意を表したもん。

 ちゃんと英雄碑建てたし。

 殉職したのに後ろ指さされるって俺嫌だよ。そんな国。

 結果、一部のアホが地元から村八分にされた。

 で、総選挙後に王制から民主制に移行するための国民投票である。

 ここで俺の進退が決まる。

 だからまずは総選挙で政治工作。

 王制反対派の【クロノス市民ネットワーク】とかいう団体に多額の寄付。

【議会がなくなる!】とか【徴兵制】の陰謀論を流しまくる。

 やだー! 【議会がなくなる】訳ないじゃないですか!

 クロノスは大国だ。

 俺一人で立法や行政を回せるわけがない。

 仕事を押しつけるためにも議会が必要だ。

 さらに言うと【徴兵制】はどの政党がなっても既定路線である。

 だって警察含めて軍人いないもん。

 外国人ばかりじゃダメに決まってんでしょ。

 命かけてくれるのは地元の人間だけだ。

 不良少年だけじゃ数足りないし。

 だから奨学金なんかの特典つけて徴兵する。

 つうかさー、議員に立候補するならそれくらい理解しろよ。

 これもムカついたのでメディアで流す。


【一緒に故郷を守りましょう!】


 ってね。

 たしかに外国人の俺ですら長屋の周辺くらいは守ろうって思うもんな。

 そしたらさー、【軍を美化するな】とか苦情が来るわけ。

 うるせー!

 一緒に故郷守らんと屍食鬼に滅ぼされるんじゃい!

 ゼン神族の動きも読めねえし!

 それもムカついたからハッキリ言ったのよ。

 ゼン神族を名指ししなかったけどさ。

【屍食鬼を操ってる勢力がいるのは明らか】って声明出したのね。

 ラターニア王やシーユン、サリアに嫁ちゃんとの共同声明もおまけしてね。

 政治工作はいったん置いて、そこだけはちゃんと言っておかないといけない。


『ここで国民が立ち上がらなかったら見捨てようかな』


 って本気で思ってたら、各地にある軍の出張所に入隊志願者が殺到した。

 失業者がほとんどだけど、それでもいいよね。

 あ、トラック運転できる!

 有人ドライバー大歓迎!

 工場で働いてた?

 軍にようこそ!

 え? 飲食だけど大丈夫か? 大歓迎!

 建設業? マジッスか! 建設会社との窓口オナシャス!

 機械の図面読める?

 はい、商社との窓口お願いします! ヒャッハー!

 事務? ようこそ軍へ!

 戦闘員以外の仕事はいくらでもあるからね~。

 こうやってボンボンさばいてったわけ。

 国民の皆様の中に~、ビルメンテナンスの方と電気工事の資格持ちの方と発電所勤務経験のある方はおられませんか~!

 あとボイラー! できればエレベーターのメンテナンス! 貨物用のやつも~!

 あと業務用冷凍倉庫の管理も~!

 ということで総選挙当日。

 俺の悪口がSNSを中心に書かれていた。

 不満はあるよね~。

 外国人の王様とか許せねえって根性見せてくれ!

 頼む!

 もう単身赴任は嫌じゃー!

 カミシロ本家に帰って嫁ちゃんと南国ビーチでフルーツ食べる生活したいんじゃー!

 勝ってくれ! クロノス市民ネットワーク!

 王党を打ち倒せ!

 俺をクロノスから追いだしてくれ!

 祈ってると次々と開票速報が流れてくる。


「クロノス大公党当選確実」


 はい?

 クロノス大公党は名前どおり、俺を正式な大公にしたい悪の結社だ!


「クロノス大公党またも当選確実」


 はい?

 クロノス市民ネットワークは?

 ねえ、クロノス市民ネットワークは?

 いくら待ってもクロノス市民ネットワークの名前はなし。

 アナウンサーが有識者に聞く。


「クロノス市民ネットワークが大惨敗のようですね。どう思いますか?」


 若手アナウンサーが三十歳くらいの若い学者にコメントを求める。

 上が亡くなっちゃったんで学者も若いんだよね……。


「汚い言葉で大公陛下の悪口を叫んでましたからね。市民から嫌われたようです」


「なんでー!」


 軍の畑からイモ盗んだとか、婚約者たくさんいて女癖が悪いとか、大公の会社や海賊とズブズブとか。

 とにかく悪口言わせまくった。

 それなのに学者がさらに畳み掛ける。


「大公陛下は災害当初から炊き出しずっとなされてました。未だに風呂なしトイレ共同の長屋暮らしです。さらに言えば我々と同じものを食べてます。子供の保護もしてます。悪口を言う理由がありません」


 いやあるだろ!

 外国人とか外国人とか外国人とか!

 外国の要人でどう言い訳しても侵略だからね!

 あと軍人!

 俺は外国の軍人だからね!

 籍あるからね!

 お願いだから聞いて!

 俺を王様にしないで!

 あ、だめ?

 こうして俺の謀略は一切通じず、クロノス大公党が政権与党になったのである。

 クロノス市民ネットワークは大惨敗。

 一議席しか取れなかったのである。


「だが……まだ一議席ある!」


 俺は謀略を開始。

 ありとあらゆる手で俺を貶めていく。

 選挙戦の当日の深夜行われた議会で国民投票が可決された。

 俺は一ヶ月間、謀略の限りをつくした。

 その結果……。


「クロノスの勝利です! クロノス公国の存続が決定しました!」


 アナウンサーが満面の笑みで選挙結果を伝える。

 ……なんでぇ。

 そう全ての謀略は裏返った。


「海賊ギルドと交渉して正業につけさせたってなによぉ……」


 たしかに一部を運送業者にさせたし、クロノス宇宙海軍の正規軍にしたけどさー。

 それ海賊とズブズブって意味だからね!

 だが何もかも俺に味方しなかった。

 俺はヒザをついて天を仰いだ。

 もーどにでもなーれー!

 こうして(オレ)は滅んだのである。

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― 新着の感想 ―
国民が全力で王様を追い詰めてるってマ?
ぷらとーーーーーーーーーーん
ギャグ補正には勝てなかった。 まともな人なら自分に目立った実績も無いのに強力なバックアップしてくれる帝国の支援の口実になってて、今までの議員より圧倒的な善政を敷いてる奴に勝つのは無理ゲーって分かりま…
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