第四百八十二話
住民が噂話してる。
「そしたらレオのアニキが一人でその場所に行ってなぁ。ロケットランチャーをぶっ放して、その建物を木端みじんにしてもうたんじゃ」
木っ端微塵になってねえ。ぶち殺すぞ。
話に尾ひれがつきまくってる。
結局、トンの会社はクロノス警察により壊滅した。
俺たちと繋がってる企業を容赦なく検挙したことで警察への信頼はうなぎ登り。
クロノスでは警察は軍の一部なので軍への評価も高くなった。
つうかね、トンの野郎……塩買い占めしようとしてやがった!
人が死ぬからやったらぶち殺すぞって警告してたよね?
しばらく公定価格って言ったよね?
ねえ、死にたいの?
俺なめてんの?
なぜか俺の人気もうなぎ登り。
プロパガンダ説も出てきた。
いいぞもっとやれ!
俺の人気を地に落とせ!
俺は普通の軍人なんだからな!
「いや、王様が長屋住んでる時点で普通じゃないかと」
クロノス公国近衛騎士団団長に格上げになったレイブンくんに言われた。
レイブンくんはクロノス公国侯爵に就任。
クロノス軍務卿である。
なんだろう。組織図的に軍官僚のトップ。
書類仕事を押しつけてた経験が役立った。
ついに公国の重要人物である。
大佐は大将に。こっちは軍のトップ。
だって……クロノス軍で生き残ったの大佐だけなんだもん!
官僚の仕事はわからないって言われたからこの構成で行くしかない。
カミシロ本家騎士団は副団長が俺の護衛に就任。
護衛は副団長たちがやってる。
だけどレイブンくんも俺の長屋に住んでるので実質普段と変わらない。
俺の家は増築を繰り返し、長屋にバージョンアップした。
この頃にはようやく土地の境界や持ち主がわかってきた。
帝国みたいに登記データベース完備してるわけじゃないから死ぬかと思った。
ただ基準点がわからないので境界の確定作業は困難を極めた……。
建設会社が大好きな区画整理事業である。
お前ら好きだろ?
これで半世紀は食える。
幸い治水とかはだいたい無事だった。
土手の工事で半世紀とかやってられない。
妖精さんによって書類もサルベージした。
暦や単位はラターニアのものだったので問題なし。
書類って重要よね。
なら登記情報も……元がいいかげんじゃねえか! ぶち殺すぞ!
ということで俺の責任で区画整理しまくる。
さらにこの頃になると突貫工事で作った公設市場と商店街ができあがった。
ゾークのせいで俺たちの建築技術は異常なほど進歩してた。
だってさっさと修理しないと人が死ぬもん。
とは言っても時間のかかる上下水道の水道管自体は生きてたんで……まー、なんとか。
水道施設はなんとか新しいの建てたし。
反応タンクが使えるか不安だったけど。
川の水を入れてお祈り。
いやこれ、配合によっては逆効果の場合もあるのよ。
なんとかなった。
あとは逆に微生物を特定すればいいかな。
で、クレア……クレア様の強い要望により生ゴミと下水処理場の汚泥は堆肥に。
面倒だから焼こうよって言ったら「私に任せて」と言われた。
なにやってもリンは足りなくなるから最終的にはそうなるんだけどさ!
クロノス人にゴミ分別を叩き込む。
樹脂系も溶かして再利用。
これは帝国の技術がはるかに進んでた。
ゴミと汚泥を乾燥させて土と米ぬか……はない。
麦みたいなやつのぬか入れて一ヶ月グルグル回して、出したら一ヶ月放置。
それで、念のために寝かせて完成。
ぼかし肥料完成。
こっちも土の微生物によっては分解しないんだよね。
でも大丈夫だった。
水蒸気出てるし温度もかなり上昇したから大丈夫だろと思ったらいけた。
完全有機農法?
いや無理。
生産した農産物よりは、どうやったってできる肥料は少ない。
畑を耕したら窒素は抜けちゃうし、微生物への分け前で減る分もあるのさー。
焼くよりはマシだよねって話。
あとは腐植の補充である。微生物そのものというか微生物の生産物の補充大事。
でもどこからともなく補充される分もあるわけで。
空気に抜けた分が雨で帰ってきたり、野生動物や野草のライフサイクルで生み出されたり……。
畑から川に流出した分がよくわからん感じで帰ってきたり。
宇宙から来る分とか。
なんとなく持続可能な感じでいけるのである。
要するにわからん。
結論としては、農家に直接補助金出すよりは肥料安く提供した方がいいよねって話になる。
それはそれとして化学肥料は必要である。
それは作る。
その辺とかを会計マジックでごまかすのが官僚の役目で、俺たちのお仕事は方針を決めること。
くっくっく……やクロノスくーん、やっほー!
今から国の農業政策に凄いことしちゃいまーす!
ガキのベンチャーごっこで国の運命決められる気分はどう?
ねえどんな気持ち?
今すぐ俺を追いださないと民主制に移行できないぜ!
というわけで商店街のモールに行く。
モールに入ると声をかけられる。
「王様! 魚はどうだい?」
「今日は嫁ちゃんと待ち合わせだから! 帰りに買ってくから見つくろって!」
「あいよー!」
「王様! 野菜あるよ!」
「帰りに買ってくからいつものお願い!」
「おう!」
最近さー、大公って誰も言ってくれなくなったんだよね。
【王様】呼びになってる。
モールの三階に行くとピゲットたちに守られた嫁ちゃんがいた。
「おひさー」
「ん」
はいはい、ハグね。
ぽんぽん。
「婿殿、デートするぞ」
「どこ行く? って、言いたいけど遊ぶとこないんだよね~」
「んじゃこの店で話でもするかの」
店はハーさんが経営する喫茶店だ。
俺が食べたいデカ盛りメニューだらけだ。
なんか例の外食社長とチェーン店作るんだって。
「なんかあったの?」
「許可出たぞ」
「なんの?」
「子作りじゃ! 体が十八歳相当になったのじゃ」
めでたい!
「そろそろ俺も任期来るしね~。子ども作ろう!」
「お、おう! ……そうか国民投票が近いのか」
民主制移行に関する重大な投票だ。
絶対に余計な謀略するなって言われた。
……俺が言うこと聞くとでも?
独立を望む団体を俺の個人マネーで支援してやった!
ふはははははは!
俺は銀河帝国大公に戻るのだ!
大公反対派の政党にも支援しまくった。
勝算はある!
勝利は我が手にあり!
民主主義バンザイ!
懸念としては暴れん坊大公の視聴率が100%近くなことだ。
い、いやフィクションの俺が人気あるだけだ!
絶対に俺自身の人気じゃない!
だって私腹肥やそうとした商人刑務所にぶち込みまくって弾圧したし。
不良どもは軍に強制入隊。
ガキどもには帝国式の洗脳教育を施した。『家族と故郷を大事にしましょう』ってやつ。
俺の悪口は無条件で許した。
連日、海賊ギルドとズブズブの悪徳君主ってニュースが流れてる。
くくく、海賊ギルドとズブズブの君主なんぞいらんだろ。
今度こそ嫁ちゃんとダラダラすごそう。
俺は心に刻むのだった。