第四百八十一話
ショッピングモールを作る。
というか公営商店街だろうか。
物価統制しないと人が死ぬ物品だけは政府公認店で扱った。
他は屋台で自由に扱ってもらった。
カミシログループで商社に仕事回して商社から各メーカーに……と生きてる業者に仕事回しまくった。
壊れた倉庫は瓦礫撤去してコンテナ並べて物流拠点にした。
緊急で冷凍倉庫を作りまくって食糧も確保。
大公なのにブラック企業の社員みたいに働きまくった。
なぜだ?
毎日会議。
クレアたちも地方の惑星の建て直しに奔走してる。
当然、我らに時間外労働などという概念はない。
どうせお前の家に幹部全員いるんだろと夜中でも連絡が来る。
毎日なんかしらトラブルが起きる。
実際そうである。
俺の家にはイソノや中島やエディのために宇宙海兵隊兵舎仕様の多段ベッドが置かれてる。
やつらの家はほぼ倉庫である。
飯ごうにバーベキューコンロに七輪に。
俺の家には外用調理器具が大量に置かれてる。
だってさ~、休日になるとイソノ&中島の野球教室のガキどもでしょ、エディの剣術教室のガキどもでしょ、鬼神国の警官が家出して路上生活してる少年少女を捕まえて連れてくるでしょ。
なんで毎回バーベキューというか近所の連中も入れて食事会が開催される。
ハーさんたちも来て調理しまくりである。
治安改善効果があるかは不明だけど、この食事会に来る不良はたいていクロノス軍に入隊するようだ。
警官志望か兵士志望かはわからないけどね。
「辛かったら帰っておいで。仕事やるし、メシくらいは食わせてやる」
って言ってある。
なんだけどさー。
「いや大公様の子分になったら過労死するし」
そうなんだけどさー!
そう思われてるのね!
早急な労働制度改革が必要である!
ところで大公って労働形態どうなってんの?
請負? 自営業? 自由業? 役所のパート従業員?
なにもわからない。
で、いま大問題になってるのは、物流用の自動運転トラックが襲撃される事件が起こりまくってるのである。
当初、人間のトラック運転手が犯人説があったんだけど、協会に聞いたらは違うって。
人手が足りなすぎて『自動運転くらいでガタガタ文句言うやつなんかいねえ!』ってさ。
ちゃんと調べたら俺の縄張りの外の少年グループが武装してトラックを襲ってるらしい。
はい、教育的指導決定。
いつもの圧縮木刀持ってアジトへ行く。
そこは半分倒壊しかかった倉庫跡だった。
訓練用のロケットランチャーを出す。
爆発が小さいやつ。
「おはようございます!」
ちゅどーん!
まずは一発。
「ななななな! なんだ! なにがあった!」
不良どもが出てくる。
俺は木刀を構える。
「せんせー、大公様って強いの?」
なぜかエディが子どもたちを連れて見学してる。
「うーん、敵が可哀想になるくらい強いかな?」
かっきーん!
バカをホームラン!
「さすがレオの兄貴だぜ!」
「まさに伝説!」
「ヒャッハー! また兄貴と闘いてえ!」
鬼神国人の警官どもが感心する。
仕事しろてめえら!
「てめえ! ふざけんな! てめえ王様だろ! 俺たちは子どもだぞ!」
「るせええええええええッ! 俺だってまだ十九歳じゃボケッ!」
そもそもこいつらと俺は二、三歳しか離れてない。
「こちとら十七歳からずっと戦争してんじゃボケがああああああああッ! 甘ったれたガキどもが!」
「ぎゃあああああああああああああッ! 王様が来たぞ!」
「逃がさねえぞ! てめえら俺に負けたら軍に入れ! 約束だぞ!」
「俺たちに何もいいことねぎゃあああああああッ!」
かきーん!
まー、こうやってボコボコにしてるけど、物資盗むのはわかるよ。
食うに困ってるもんね。
でもさー、強盗と転売はいかんよ。
根性叩き直してくれる。
「ば、バイクで逃げ……」
「逃がさねえぞ!」
ばっきーん!
バイクをたたき壊す。
「う、撃て!」
あ、銃出した。
そういう態度、ふーん、ほーん!
「ちゃんと頭狙えよ!」
額を指さす。
「うわああああああああああ!」
撃たれた瞬間、避けて弾丸キャッチ。
軍用グローブだからできる宴会芸だ。
「へーたーくーそー! 当たらねえぞ!」
「ぎゃあああああああああああああッ! 拳銃避けた!」
するとエディの通信チャンネルから子どもの声がする。
女の子かな?
「ねえねえ先生、大公様って弾丸つかめるの? エディ先生もできるの?」
「うん、俺たちの隊は女の子もみんなできるよ」
「すごーい!」
今度は男の子の声がした。興奮した様子だ。
「軍人さんってすっげー! 俺、軍に入ろうっと!」
エディくんさー。
子どもに悪影響与えるな!
で、鉄拳制裁しなくても木刀で遊んであげたら降伏しやがった。
根性ねえな。
カトリ先生だったら「まだ余力あるよな? ほら続けるぞ」って続行だもんね!
俺はリーダーの男の子……と言っても俺と一歳くらいしか違いがない。
いかにも不良ですってガキの前にウンコ座りする。
メンチビーム!
殺気と目で黙らせる。
「さーて、誰が黒幕かな? 海賊ギルド?」
海賊ギルドだったら直接乗り込んでボコボコね。
「ち、ちっげえ! えーっと……」
アイアンクロー。
「ぎゃあああああああああああああッ! 言うから! 言うから! ……トンの旦那だ」
「トン?」
あー! あれか! 問屋の!
手広く物品買い付けてる男だ。
……そうか。
冷静に考えたら、ガキどもじゃ物資を盗んでも売りさばく伝手がない。
問屋なら……いや帳簿……あ、そうか。この混乱の最中なら……。
……野郎……ぶっ殺す。
「トンの旦那が不良を集めて組織を作るって」
「わかった。お前らも足を洗え」
「でもよ! 行くところなんて……」
「何言ってんだよ。今日から軍がお前の故郷だ。ようこそブラザー」
にっこり。
笑った瞬間脱兎のごとく……つーかーまーえーたー。
他の連中も警官に捕獲された。
「さーてトンの野郎のとこだな」
ここでエディたちと別れて殴り込み。
はっはっは!
トンの野郎の会社は倉庫にある。
ロケラン撃ち込んでっと。
「な、なんじゃボケ!」
もうね、言い訳できないチンピラ登場。
「おはよーさん。っと」
グーパンで黙らせる。
「おうコラ、トンさんよ。てめえ俺の顔に泥塗ったな!」
太った成金趣味の男、トンの胸倉を締め上げる。
「ぎゃ! た、大公陛下! 嘘だ! なんでこんなところに!」
「嘘じゃねえぞカス! てめえ物資盗ませやがったな! ありゃみんなの食糧だ!」
「ひ、ひい! 外の戦闘用重機はどうした!」
外と通信してる。はっはっは。バカだなー。
「リコち、そっちはどう?」
「はーい、すべて壊しましたよ」
操縦者の胸倉つかんで持ち上げてるリコちを映す。
その足元には戦闘用人型重機、おそらく警察からの横流し品が真っ二つになって転がってる。
リコちのウルミ怖!
リコちは男らしくサムズアップ。
後ろで他の機体が爆発した。
「ということだけど、なにか弁明は? 嘘ついたら殴るから」
「これは世のため人のたうぎゃ!」
大公パンチ!
「話にならん! ボコボコにしたら署に連行! 事情聴取お願い!」
警官隊のところに放り投げる。
こうして悪は滅びたのであった。
後日、暴れん坊大公としてドラマ化するなんて……このときはわからなかったのである。