第四百六十九話
「クロノスくん欲しい人!」
誰も手を挙げないし、俺と目を合わせようとしない。
なおラターニア大使も事前に「現状うちは併合するのは無理です」と言われてる。
ラターニアも太極国と友好関係を構築するくらいには疲弊していたのだ。
実際は恨んでるからね!
いつかぶち殺すって本気で思ってるからね!
太極国も被害者アピールしまくってラターニアと友好関係を構築しなければならない。
具体的には長期の借り入れして返済することだ。
じゃないと体勢を立て直したラターニアに滅ぼされる。
なのでラターニアからの借り入れをしてもらう。これは時間稼ぎ。
あとは民間に商売がんばってもらって「ムカつくけどいないと困る」というポジションを確立してもらうしかない。
ラターニアは狂犬だけど話し合いの余地はある。
つまり太極国は現在も生存を賭けた戦いの真っ最中。
要するに両国とも余裕なんかない。
「でもさー、なんで銀河帝国なのよ?」
俺たちには縁もゆかりもない。
我々としてはラターニアや太極国くらいまでが安全圏になればいいわけである。
ゼン神族も帝国にちょっかいをかけない程度にビビらせればいいかなと思ってる。
要するに飛び地などいらんのだよ!
交渉として成立してないのだ。
意味わかんない!
すると妖精さんが説明してくれる。
「政治体制がマシだったらしいですよ。銀河帝国はフランチャイズ方式ですから」
飲食店で例えたか。
たしかに銀河帝国は地方の政治体制に関与しない。
銀河帝国の領主は戦争になれば兵を出す義務があるし、インフラ整備のしなきゃならないし、黒字なら税を払う。
その代わりスタートアップ時や領主を引き継いだときなど各種補助金に教育制度がある。
経済も自由だし、大企業の地方への誘致もしてる。
裕福な領主による経営指南もしてる……うん、これが腐って公爵会になっちゃったんだけどね。
それでも銀河帝国はクソクソのクソみたいなとこもあるけど支配は緩い。
ラターニアとか一揆とかストライキまで処分してるもん。
給料の不払いとかも厳しい処分だけどね。
……それを調べてきたんだろうな。
「言いだしたの支配層?」
支配層ならめんどくせえからテキトーな爵位与えて自由にさせるという手もある。
どうせ自分の権力維持しただけだし。
いざってとき助けないけどね!
これぞ【うちの加盟店じゃありません】方式!
もしくは【名誉教授は教授じゃないんですよ?】方式!
「市民階級のリーダーですね」
「うっわ! めんどくせえ!」
ガチの要望である。
テキトーに答えると悪者にされるパターンだ。
しかもだ。
恐ろしい事に、この代表者はなんの権限もない。
ここで相手にしたら末代まで悪者扱い。
かといって無視したらそれはそれで悪者にされる。
歴史上のカス扱いされてる国もこういう選択でハズレを引いたに違いない。
人類の数々の失敗から学べばこういうときの答えはわかってる。
自己の利益を欲しないこと。
相手には与えるが最低限にすること。
一線を引くこと。
人道? シラネ。
商取引はする。
それは市民の権限だからだ。
あとは知らん。
最低限の物資の提供くらいだろうか。
交渉したきゃ国の代表者呼びな。
せめて軍部とかさ、知事とか議会議員とかさ~。
とにかく「うちのリーダーです」と言われてもなんの約束もできない。
せめてさー、イーエンズ爺さんとこくらいちゃんと組織化してるとかさー。
例えばさラターニア銀行と取引してるクロノスの大きな会社が「従業員の保護をお願いします」って言えば「しかたないにゃー」ってなるのよ。
ラターニアにデータあるから交渉相手だってわかるもの。
交渉にはそういうのが必要なのよ。
あとでトラブルになるだけなんだからね!
住民リーダーですって肩書きもないやつが来たら「コイツ喧嘩売ってんのかな?」ってなる。
少しは交渉相手のことも考えてくれないかな?
あ、「○○さんは信用できる」はなしね。
それ上げてきた瞬間、役人ちゃんは失脚ね。
てめえの感想は聞いてねえ!
「ちょっとクロノスに対して厳しくしとく。外務省の担当者レベルを引き下げね」
「あと市議会議員って人が連絡を求めてます」
「へーい。まずはラターニアに照会して。市議会議員くらいのデータくらい持ってるでしょ。それまでは俺は現場に出ていないって言い張って」
「はーい」
はい難しいやつ。
うちもデータ持ってるから答え合わせする。
こっちは権限持ってるけど、こいつをよく調べずにリーダーとして扱った場合に内戦フラグが立つ。
火事場泥棒的に成り上がろうとするやつは多いのだ。
あー、もう!
俺は兵士であってだな!
階級は准将だけど将軍じゃねえし!
大公だけど半人前なの!
武装とか絶対にさせねえからな!
お前らがモヒカンヒャッハーになる将来しか見えねえからな!
「確認終わりました。惑星市議会の議員です。ただ市議会はイナゴの群れに襲われて全員死亡なのがわかってます。つまり当日は市議会にはいなかったと」
「信用できないよおおおおおおおおおお!」
「ですよねー!」
なんで鬼神国がプロレス会場の客を守って死んだ木場さんや、その敵討ちに軍に入ったタンク先生にザウルス先生が好きなのかわかった。
圧倒的に信用できるもん!
シーユンも目を合わせてくれない。
ですよねー、ですよねー!
こんなの相手にしたくないよね!
「下調べすんだら会うよ……」
もうやだ……。
かと言って職務放棄したら嫁ちゃん負担が行くし。
レオくん仕事する前から疲労困憊だよぉ!
「しかたない……作戦プランYAKUZAで行く。リコち、フルアーマーで頼む。イソノ、協力者頼む」
「了解! はーい、みんな打ち合わせどおりメイクして~」
エディが心底嫌そうな顔をしてる。
「エディ……俺だって嫌なんだ。シーユン! タチアナ! ワンオーワン! お菓子食べながら待機!」
「はーい!」
あー、もうやだー!
鬼神国の皆さん、広く俺の子分を名乗ってる皆さんを呼び出す。
「レオの兄ぃのためなら!」
そして会談当日。
戦闘服を着た俺とリコちが出迎える。
周りには強面の子分たち。
全員がガラの悪い服を着てる。
「ぴぃ!」
初手ビビらせてから始まる。
クリスタルの灰皿の用意はいいな?