第四百六十五話
盤外戦術は簡単である。
まずは銀河帝国向け。
「犯人が誰かはまだ証拠ないけど……わかるよね?」なテロにより、クロノスは壊滅状態に陥りました。
太極国、ラターニア、鬼神国、バトルドーム諸国連合、そして我が国は国際救援活動隊を組織し救助を行ってます。
こんな感じね。
俺はおもしろ指揮官枠なので、真面目なエディあたりを表に出して比較的冷静なニュースを作る。
これは帝国の国営放送にまかせた。
国営放送は優秀で……というかゾーク戦争の初期にぜんぜん報道できなかったのを心底後悔してるらしい。
院生の出した本や論文を全て読んで解説まで入れてた。
大学教授、政治だけじゃなく生物学なんかの教授にも話を聞きに行って解説してた。
軍の広報じゃ満足できないらしく、記者も押し寄せた。
民放は命知らずが大量に押し寄せた。
関係諸国は「死刑にしてもいいっす」と犯罪者の処遇や犯罪者引き渡しの条約を交わしたわけである。
マスコミは常識ないからな……。
少し対策に頭を悩ませながらもマスコミを大量に受け入れた。
というか実質情報解禁した。
まず民法のマスコミが度肝抜かれたのは、現地の言葉で複数の国の人と会話する俺やエディの姿である。
「いや大公がラターニア語できるっての政府のプロパガンダだろ……」って思ってたらしい。
日常会話くらいしかできないけど話せるもんね!
文字も読めるもん!
公爵会がそういうことしまくってたから疑う気持ちはわかるけどね。
とにかく俺たちが過剰に持ち上げられてた説がきれいさっぱりなくなったのである。
いや過剰よ。
俺が准将なのとか。
ラターニアや太極国との「上品」な交流番組とかを放送しまくった。
そう「上品」な番組を作る前にどさくさ紛れで外交問題になりそうな番組作ろうとした連中を開拓惑星への流刑に……これはどうでもいいか。
ラターニアや太極国も同じ。
我々に気を使って何人かに厳しい処分が下った。
鬼神国は直接ぶん殴っていいと言われてるので鉄拳制裁。
殴ればわかってくれるので扱いやすい。
なお鬼神国人に力比べを挑まれて、その場で容赦なくボコボコにする俺の姿は批判的に報道するメディアもあった。
だけど外宇宙からの帰還兵の証言で「准将は大ケガさせないように優しく殴ってますね」と言われ、あわてて謝罪するメディアが相次いだ。
なお鬼神国ではボコボコにすると子分になるらしく、実は鬼神国内の俺の子分は直参だけでも数百人いる。
その子分も入れると数万人にふくれあがる。
意味わからないので放置してる。
というわけで国内メディアはおおむね「レオ・カミシロにしかできねえわ。あんたらがんばってる!」と好意的に報道されてる。
で、今はラターニアや太極国とドキュメンタリーを制作してる。
国営放送のは学術寄りで少し難しい。
エンタメ寄りの旅番組やお互いの文化の番組が主体だ。
そこに本命を流す。
屍食鬼という生物兵器による未曾有のテロ。
それに挑む我がヴェロニカ艦隊と周辺国の友情物語である。
食堂のテレビつけたらタチアナの活躍のドラマが放送されてた。
ヒゲ生えたグラサンマッチョが画面に映ってる。
「お前は最後に殺すと約束したな。あれは嘘だ」
「ぎゃあああああああああああああッ!」
なんで再現映像のリコち役はいつもマッチョなおっさんなのだろうか。
なぜかミサイル肩に担いでるし。
そこに超絶美少女のアイドルが現われる。
「私は運命と戦う! みんなのために!」
きゅるりん♪
「アタシ……こんなこと言ってねえんスけど」
タチアナが嫌そうな顔してる。
画面ではケツアゴのプロレスラーが扮する俺がタチアナを優しく抱きしめる。
なんで俺の役、毎回プロレスラーなん?
……俳優じゃ動きが再現できないから?
あ、はい。
「俺は君を支え続ける」
「大公様……」
それを見て嫁ちゃん、クレア、メリッサ、レンまでもがツボに入ったらしくゲラゲラ笑う。
「にゃははははははは! ほれ! 婿殿見ろ!」
嫁ちゃんが俺のソデを引っ張りながら足をバタバタさせる。
「あはははははは! 最高!」
メリッサは指さして笑う。
「(笑いすぎて過呼吸)……はあ、はあ、はあ、もうだめぇ!」
クレアはダウン。
「(下向いて全力で笑いをこらえながら) ……もう無理ぃ」
レンも笑いすぎて涙が出ていた。
このように本人知ってると壮絶なコメディなのであるが、帝国で大ヒット。
さらにはラターニア、太極国、さらには鬼神国やバトルドームでも大ヒットした。
視聴率100%だって。
ラターニアでヒットすると銀河中にコンテンツが配信されるわけである。
屍食鬼のドキュメンタリーと抱き合わせ販売で。
このドラマの効果は凄まじく、ラターニアや太極国と共同で作ったクロノス救援基金に募金が殺到。
善意の輪が広がった。
そこに俺たちの活動も紹介される。
結界を設置するタチアナの勇姿が報道されまくる。
哀れ屍食鬼くんは全宇宙の敵となったわけである。
で、俺たちは明言しなかったが……もうね、ゼン神族が大炎上。
ゼン神族内部から「上層部くんなにやってんの?」って話が出るくらいになった。
当然、周辺国からは頭のおかしい隣人扱いである。
はっはっは。
でだ、一本ドラマがスマッシュヒットすると、別の人物に焦点を当てるものがたくさん出てくる。
ラターニアの救援隊の活躍やら、太極国の政治ドラマとかね。
ドラマ作り慣れてる民放が全力で作りまくる。
国営放送や少ない資料で作ったやつじゃない。
本気のドラマだ。
カミシログループにバトルドームにラターニア銀行が資金面を全力バックアップ
太極国・ラターニア・鬼神国共同製作なんてのが大量に作られる。
いやー目論見通り!
そりゃ文句言う人もいたよ。
でもさ、自分の国がほめられて文句言う人は周りから嫌われる。
だから反対の声は小さかった。
特に再建中の太極国は本気でこのビッグウェーブに乗ってた。
だってしかたないじゃん。
喧嘩売ってきたのゼン神族だし。
俺たちは武力ではない方法で自分を守っただけである。
こうしてコンテンツ力による文化的蹂躙が始まったのである。
なおどうでもいい話ではあるが、リコちとうさぴょんの写真集は軍事部門一位になった。
「なぜ結婚申し込みが女性から来るのぉーッ!!!」
フルアーマーでしか写真撮らせないからだと思う。