第四百五十四話
クロノス国への嫌がらせ。
ワシら完全腐敗国家だったからのう!
どこが腐ってるかなんてすぐにわかる。
まず、クロノス国。
笑顔で企業進出する。
表面上は、というか法人の所在地がラターニアの企業である。
トップは銀河帝国人だけど役員には鬼神国やラターニア人、太極国人も入ってる。
元イーエンズ大人の部下で遊女の置屋、銀河帝国的には娼館というか遊郭的な施設の運営を仕切ってた人だ。
イーエンズ大人はガチガチに女の子を守るタイプだったので太極国やラターニアでは海賊だけど存在が許されてた。
前に五大老に会ったときに商売が被ってる人いたけど、あれは縄張りが違うからいいんだって。
海賊の掟って明文化されてないから難しいよね。
で、その手の怖いお兄さんであるが、商品をちゃんと守る系の商売は潰すか潰さないかの判断に迷う。
表面上違法だからって潰すとしわ寄せが女の子の方に行く。
責任者の立場なら触りたくない。
関わらないようにして放置が一番安全だろう。
そんなわけで警戒されるような企業ではない。
むしろ多国籍企業が進出ってくらいの話である。
クロノス国は民主主義で資本主義。そして自由主義の国である。
この場合の自由とは、どんな犠牲を払っても『自由』を維持するという気概がある骨太国家という意味ではない。
単に管理が面倒だから民間に権限などを丸投げしてるという意味である。
なので金になる話であれば基本的に断らない。
政治は基本的に金権政治である。
逆に言えばどこぞの議員を巻き込んで上位の議員に話を通してもらえれば、多少の無理は通る。
なので進学、就職、結婚、身の回りのトラブル、その辺は議員に庶民ですら話を通すことになってる。
当然、庶民はそれを不満に思っている。
だってトラブルの片方だけが議員カード使うわけじゃないもの。
基本は議員のカードバトルだ。
そしたらSSRとかUSRとかの上位カードは金持ってる資本家が独占してるわけだ。
カードバトルに負けたものには法を曲げた理不尽な裁定が下る。
まだ銀河帝国の法がマシじゃねえか!
当然、理不尽の矛先は議員や議員を動かす力を持つ資本家に向けられている。
そんなの許せるはずないじゃん。
なので議員や資本家への襲撃は日常茶飯事。
それでも一発当てれば報酬がでかいので双方ともに人気の職業だ。
終わってんな!
資本家は 不安感が強いのとこじらせたケチのせいで金の流れを止めがち。
虚業や投資だけで金をグルグル回すせいで民まで金が届かない。
これだけでも死ぬべきなのに議員カードバトル無双。
みんな殺したいよねって話でしかない。
というわけで、金持ち批判してるあちこちの草サークルに金を投下。
あと反乱マニュアルを作成して配りまくる。
無能な集団にお金を配りまくる。
どれかのサークルが実になればいいし、実にならなくてもいい。
バレたところで「クレーム対応で……」とテキトーな事を言えばいい。
実際、クロノス国ではクレーム対応は議員任せだ。
ノウハウのない俺たちがわかるはずがない。(はなほじ)
でだ、ここからが謀略。
極端な意見を言って注目を集めようとする議員や議員候補に接触。
ノーマルカード下位くらいだけど、それでいい。
そこに金を投下。
できれば子分を食わすためみたいな名目で金をやる。
ポスト寄こせって言うならポストも用意する。
そうね、エンタメ系の会社の下請けあたりがいいかな。
細分化した下請けで食わせる。
育てる気なんてない。
引っかき回すのが目的だ。
「やっぱりレオって……」
クレアがため息をつく。
そこはいつもの食堂。
やはり戦艦の食堂は落ち着く。
「盤面が大きくなればなるほど本領発揮する怪異……」
メリッサもヤレヤレと首を振った。
「これを学んだわけでもなくやれるのが恐ろしいですね……」
レンまで……。
「ねえ、クレア、資本家にスキャンダル起こしたいんだけどどうすればいい?」
「うーん……やはり異性関係のスキャンダルかな……」
「じゃあイーエンズ爺さんとこの人に相談かな。あと五大老」
「とうとう海賊まで使い倒してるよ……隊長あと10年くらいしたらどんな化け物になるんだろ?」
メリッサがケタケタ笑う。
「想像したくありませんね」
レンが紅茶を入れてくれた。
うーん美味しい。
ワンオーワンが笑顔で真実をつく。
「准将閣下のなさり様を見て、ゾークがなぜ敗北したかがよくわかるであります!」
お兄ちゃん、ちょっとショック。
ふて寝していい?
「嫌がらせのやり方が洗練されてますね……これが……銀河帝国」
シーユンが感心してる。
「いやそれ、うちの隊長だけだから」
メリッサがうなずく。
「兄貴ってさ、スラムから上流階級までのコネクションを器用に使うんだよね。普通は上流階級の人間なんてスラムの人間なんて存在すら知らないのに」
すると黙って考えてた嫁ちゃんが口を開く。
「やはり義母上の教育と士官学校での生活が化学反応を起こしたとしか考えられぬ」
「あー……うん、普通、母親が雄々しく生きろなんて言わないからね……」
クレアが目をそらした。
「それでも最高戦力じゃ」
嫁ちゃんの目は暖かい。
絶滅寸前の野生動物に向けるような眼差しやめろ。
当たり前の話であるが、クロノス国は流言飛語が飛び交う状態になった。
国民への教育と投資を行わないと民主主義って簡単にこうなるよね。
我々に疑惑の目が向けられるかと言えば、そんなことはない。
ボウリング場もディスカウントストアも絶好調。
若い子向けの安価で安全な遊び場の提供という治安改善効果が注目される。
で、ここでプロパガンダするほど俺らは頭悪くない。
そっちを食い物にしようとする各種団体に言われるままにお金を払う。
もちろん、ただの詐欺師は議員使って蹴散らし、本気でやってる頭おかしそうな団体には解決料を払う。
弁護士通して法律的に問題ない程度の範囲で行う。
金はかかるけど問題ない。
これは単にクロノス国が間抜けなだけだ。
その結果、頭のネジが飛んだカルト宗教に陰謀論団体が武装できるようになった。
「婿殿だけは敵に回したくないのう……」
嫁ちゃんが涼しい顔でお茶を飲む。
軍師ができない分、こういう作戦をまかせてもらおうと思う。




