第四百五十三話
嫁ちゃんの戦艦に乗り換えて、帰ってきたぞ外宇宙!
へいへーい。
バトルドームのセルバンテスでお買い物。
お菓子と調理用の食糧をしこたま買う。
ホットケーキミックスはあらかじめ数百キロ注文しておいた。
バトルドームまで持ってきてくれて積み込みまでしてくれる。
あと私費でお菓子を大量に買う。
浪費癖のはず……だが、これ繰り返してもイソノのスポーツカーに届かない。
そうそう、鬼神国やラターニアでは流通あるあるの『遅配とか輸送トラブルどうなってんの?』って話であるがキャンセルに金や代替品、もしくはちょっと待ってもらう、最悪死ぬ気で間に合わせるなど普通のトラブルと同じである。
借金なんかは厳しいが、アクシデントが予想されるものには柔軟である。
……単に俺たちが信用あるだけか?
ということで、サクサク荷物を積み降ろし。
タチアナの結界のおかげで屍食鬼の心配もない。
いやさー、屍食鬼問題なんだけど大事になってましての。
根絶無理じゃねって思ってたらやっぱり無理じゃないかなって話になってる。
タチアナの結界はあるけど、いまのところタチアナしか起動できない。
だからすべての惑星に置くのは無理だよねって話だ。
なぜか陰謀論者の反対派が存在してるらしいし。
鬼神国もラターニアも太極国も徹底的に弾圧してるけど、次から次へと出現する。
おそらく別の大国の工作かなと思われる。
帝国のマニュアルにも反乱を起こした惑星への破壊工作として『親帝国・反帝国にかかわらず知能が低そうな勢力に積極的に資金援助して世論をかき回す』と書かれている。
それの大規模なやつだろう。
別にタチアナに反対してるから援助されてるわけではない。
頭悪そうで話が通じないから援助されてるわけである。
要するに引っかき回すのが目的で、その勢力が力を持ったり領主に勝利しちゃったりするのはイレギュラーで、その時点でシナリオを変化させて食い物にしていくわけである。
いわゆる売国奴の作り方である。
ここには前時代的な金や血縁で国を売る悪い貴族なんか存在しない。
本人たちは売国奴になってることなんて自覚してない。
むしろ愛国者だと思ってる。
ただ方向性が間違ってて、能力がない。
だからただリソースを食い潰していく。
そういうタイプの売国奴である。
うーん、売国奴の作り方が洗練されてること。
こういうのはちゃんと勉強すると役立つよね。
ということで、こちらも積極的に周辺国の自分を愛国者だと思ってる売国奴に投資する。
まずは太極国に隣接するクロノス国をターゲットにする。
クロノス国は民主制国家だ。
王様もいない。
大国の中では最下位くらいの規模だが、経済はそこそこ。
つまらん工作をしてきた証拠は挙がってる。
抗議? するわけないじゃん。
こっちも工作かますだけ。
向こうが文句言ってきたら証拠出して問い詰めるだけだ。
はっはっは!
とりあえず惑星プローンに到着。
前回失敗したのでプローンの子どもたちとは会わないことにした。
ラターニア式ケジメ教育がされてるようだ。
隣接する文化の教育の方がいいだろうという学者の提言を採用した。
衛星軌道上に作ったステーションに宇宙港がある。
そこに到着するとブルッと寒気がした。
なんだろうか?
「レ~オ~きゅ~ん♪」
ガッデム。
それはカトリ先生だった。
「先生、今日は疲れてるので後日に……」
「聞いてるよ。リコちゃんに追いつかれたんだって」
目が血走ってる。
「だってぇ! だってウルミ苦手なんだもん!」
「はっはっは。正直に話してくれたな。うんうん、工事用のワイヤーで似たようなものを作った。俺も練習したんだぞ! 年甲斐もなくがんばってしまったぞ!」
ということでカトリ先生にもてあそばれて、捨てられた。(物理)
工事用のゴツいワイヤーの鞭なんて当たったら死ぬわ!
お互い戦闘服でスパーリングなんて意味わかんねえっての!
あ、ヘリメットへこんでる。
シールドはバリバリに割れてるし。
もーやだー!
なお、俺に巻き込まれた犠牲者としてエディと新婚コンビのイソノと中島が転がってる。
「リコちの武器強すぎだろが!」
エディがブチ切れた。
こっちもヘルメットのシールド部分がバキバキに割れてた。
俺は大の字になってダウン。
「そうなんだよなー。盾で受けるにも壊されちゃうし、ムリヤリ距離詰めれば短剣でしょ~。そもそも殺し合いだったらミニガン持ってるしな」
「ま、俺様が天才なのもあるがな! ぐあーはっはっは!」
カトリ先生は満足そうだ。
なお俺とエディの盾は真っ二つになって転がってる。
「弱点としては細かい制御できねえから集団戦だと同士討ちすることか?」
イソノは薙刀を折られて早々にギブアップした。
その前にヘルメット割られてるからダメージは同じだ。
「単騎なら強すぎるよ……」
中島はハンマー振り回すも完敗。
戦闘服のプロテクターまでバキバキになってる。
これ俺たちじゃなかったら大怪我したぞ!
なに考えてるのカトリ先生!
「うーむ、婿殿にも苦手な相手がおるのか~」
道場の隅で嫁ちゃんが納得してる。
「いいえ、皇帝陛下。レオが苦手なのではなく、武器の相性問題ですな」
「カトリ先生! それがわかってるなら! なぜ自分は床で転がってるでありますか!」
「苦手を克服させてやろうという親心に決まってるんだろ!」
「嘘つけ! 絶対嘘だ!」
「ま、嘘なんだが。お前の弱点見つけたら、徹底的にやっつけるに決まってんだろ!」
「鬼! 悪魔!」
びえーん!
「嫁ちゃん、先生がひどいんだよ~!」
愛する嫁ちゃんに泣きつく。
「でもなー、婿殿に死なれたら銀河帝国は総崩れじゃからの~。宇宙最強でなくては困るのじゃ。それはエディもイソノも中島もじゃ。精進せよ」
「ぎゃあああああああああああああッ!」
外宇宙に来たらこれだよ!
俺たちの青春は……こうして脳筋ゴリラな思い出に埋め尽くされているのである。
最強、そして男坂。
これさー、死にゲーだよね?
生存者バイアスでしかないよね?
いいもん!
この怒りはクロノス国に八つ当たりするもん!




