第四十三話
惑星ミストラルに戻る。
すぐに他の5人も公爵邸の離着陸場に到着した。
公爵領は都会のため7人ともびっくりしていた。
「なんだあの高い建物……」
「すげえ! ドラゴンが飛んでる!」
たぶんドラゴンってのは監視用大型ドローンのことだろう。
プラズマ砲を装備しているはずだ。
反乱の気配を感じたら攻撃するようになっている。
いや生活が苦しいとかの正当な反乱なら別にいい。
トップをすげ替えればいいだけだ。
だけど、よくあるのがノープランで革命を起こして【俺たちを搾取する御使いを殺せ! レッツ神殺しチャレンジ!!!】と調子にのったパターンである。
基本的に植民地惑星は刑務所みたいなもの。
開拓時代初期とかは儲かったんだろうけど今はただのお荷物である。
鉱物資源が多い惑星があてがわれるわけもなく搾取は不可能である。
収支は赤字で、むしろ近くの惑星の領主がわからないように支援している。
殺るしかないよね? 反乱起こしたゴミカスは。
実際、植民地惑星の住民が輸送船を盗み近くの惑星で殺戮を繰り広げた事件は少なくない。
その対策として導入された皆殺しマシーンがあの大型ドローンである。
真実を知ってどう思うか?
それが難しい。
なにかに目覚めて【帝国は悪だ!!!】って活動でもされると困る。
なので基本的に植民地惑星出身者は徹底的に教育される。
社会周りの実情を中心にこれでもかと教育される。
話し合いが可能な程度には知識を詰め込まれる。
これから大変だなあ……。
俺は優しい目をした。
するとエッジが話しかけてくる。
「レオ、俺はなにをすればいい?」
「まずみんなに紹介するわ。そしたら部屋に案内するから今日は休んでくれ。はじめての宇宙だから思ってるよりも体に負担がかかってるはずだ」
「わかった」
さすが無口系主人公。
聞き分けがいい。
まずは挨拶。
近衛のおっさんたちから挨拶……なんかピゲット少佐とエッジが無言で見つめ合ってる!!!
しばらく見つめ合ってるとピゲット少佐がニカッと笑う。
「……良い目をしてる。婿殿、こやつを頼んだぞ」
「よろしく」
で、次に後続の5人と自己紹介する。
5人の内訳は野郎が1人に女性が4人だった。
「挨拶が遅れたな。俺は士官学校の学生代表、レオ・カミシロだ。モヒカンのおっさんがピゲット少佐。近衛隊の偉い人だ。逆らうと怖いぞ」
ピゲット少佐に両手の拳骨でグリグリされる。
ちょ、痛い!!!
「わかるな。諸君、小官は優しい」
ら、らめ!
グリグリで挟んだまま持ち上げないで!!!
「すげえ……人間を持ち上げてる……」
「これが御使い様の力なのね……」
「やられてる方も笑ってるよ……」
どん引きされた……。
なお嫁とメリッサはゲラゲラ笑ってる。
クレアは見ないように顔を背けてるし。
レンは普通に呆れていた。
「罰としてお前が案内な」
案内役に任命され解放される。
「はい次は君らの自己紹介」
まずは男の子。
「ヴァンだ。猟師見習いだ」
「ういーっす」
「なんじゃ婿殿。気が抜けるな」
「あはは。気楽に行こう。えっとみんな注目。こちらがヴェロニカ殿下。この船で一番偉い人だ」
「よろしく頼むぞ」
みんな頭を下げた。
はい自己紹介の続き。
あとの4人。
青い髪の女子が挨拶した。
「シアンです。家の手伝いしてました」
農夫だね。
植民地惑星の農夫なので、ちょっとした鍛冶から農業までなんでもできると考えていいだろう。
青い髪ってことは自然の色じゃない。
たぶん遺伝子操作されてると思う。
「よろ!」
次に茶髪の女子。
だけど首のあたりに一部ウロコみたいなのが見える。
ずいぶん遺伝子操作が固形化された者が多い。
「ココ。衛兵だ」
「よろー、んじゃ次」
「待て、えっと……レオ……さん?」
「呼び捨てでいいぞ」
「ではレオ、あんた強いだろ」
「そうでもないんだよねー。残念ながら。やたら過剰評価されてるけど」
「頼む、手合わせしてくれ」
「えー……まだ自己紹介の途中なのに」
「面白い。婿殿行くぞ」
「えー……」
その後お約束として逃げようとしたけど、ピゲット少佐に捕まり武道場に連れて行かれる。
エッジも俺の方を見てる。
やだえっち!!!
これあとでエッジとも対戦するはめになるわ。
「言っておくけど俺弱いからな!!!」
練習用の竹刀を渡される。
両手で受け取らないとシバかれるので注意。
防具を着けて準備完了。
ココもメリッサに手伝ってもらって防具を着けた。
「へえ、御使い様はこうやって訓練するのか」
「割く時間はそんな多くないけどね」
「こっちの流儀は知らないんでいつも通りやらせてもらう」
そう言ってココは片手で竹刀を持つスタイルで構えた。
俺はいつもの薩摩殺法……やめとこ。
帝国剣術で。
両手持ちの正眼で構える。
「はじめるのじゃー」
嫁の気の抜けた合図で始まった。
ココが一歩踏み出して突きを放つ。
俺は弾くわけでもなく自然に受け流す。
ちょっと体勢が崩れたな。ほい隙あり。
竹刀で叩くのもよくないので右手を離してチョップを頭にぽこん。
「え……負け……嘘だろ。あたしが全然敵わないなんて」
ココは目を丸くしてる。
あれが勝ちと言えるかは微妙だが、本人が負けを認めたのだからそれでいいのだろう。
「そこのメリッサは俺より強いぞ」
「あはは。ないない。最近の隊長は人外だから」
ひでえなおい。
「次はエッジ? やる?」
そう言うとエッジがうなずいた。
エッジも防具を着けて第二戦。
「はじめるのじゃー」
「あ、殺気」
と思ったら、エッジが振りかぶった。
「うおおおおおおおおおおお!」
ココより技術は拙いが気合が入りまくってる。
俺はよける。
弾いた方が体が崩れなくていいんだろうけど、つばぜり合いはしたくない。
実戦だと剣が折れるから。
チェーンソーだとキックバックで自分の顔に跳ね返ってくる。
だから足を使う。
「ふんッ!!!」
渾身の突きがくる。
半歩斜めに進んで避ける。
顔ギリギリに突きが飛んできた。
突きで伸びた腕を柄と手で挟んでホールド。
足をかけて投げる。
スパーンッといい音がしてエッジが倒れた。
エッジの首に剣を突きつけて残心っと。
「まいった……」
勝利である。




