第四百二十二話
さ~て、バトルドームで大事なお仕事。
海賊ギルドの5大人、イーエンズ爺さんが亡くなったから4人の大幹部と会う。
嫁ちゃんが犯罪者に会うわけにはいかない。
なので窓口は俺。
海賊は銀河帝国の敵。
国の代表者扱いできない。
なので普通の軍服で会う。
いや電気工事の作業着かニッカボッカで行くか迷ってたらレイブンくんに普通の軍服を提案された。
レイブンくん……できる男である。
5大人はまた会ったことのない種族が3人、もう一人がラターニア人だった。
ひときわ目を引くのはタコの人。
頭部が水槽に入ったタコみたいな生物で、体がロボットの人だ。
他二人は人間型。
一人はクロレラ処理の銀河帝国人みたいに背が高く筋肉質。
体格は鬼人国人寄りだが、頭部にツノは見当たらない。
もう一人はモヒカン。サイボーグかな?
子分の男の子を連れてる。
機械部分が多すぎて種族はわからない。
銀河帝国にもたまにいる。
軍やマフィアに多いのだが、戦闘特化型の手術だ。
ケガはナノマシンで治療できるのでわざと改造したパターンである。
ただ、やはり体の多くを機械に置き換えるとどうしても寿命が縮むし、突然死の可能性もある。
最強を目指して体の半分を機械に置き換えたが、ある日突然アレルギーで心停止なんてのはよく聞く。
かと言って免疫抑制剤などを投与すると病気に弱くなり、強い体を欲した末の病弱という本末転倒になりやすい。
さらにMRIなんかも使えなくなる。
置き換えた人工内臓壊して腎臓がダメになある事も多い。
その場合は透析が必須になる。
士官学校なんかじゃ、どうしてもナノマシンでの肉体の再建が間に合わないときの代替措置と注意されるほどだ。
結局、生身が一番コスパがいいのである。
軍でもサイボーグ兵は頭悪いイキリヤンキーとみなされてる。
なので俺も威圧されるというよりは、「可哀想……」と思ってしまう。
すると俺の表情に気づいたのか男が顔を歪める。
「なんだてめえ? やんのかてめええええええええええええええええええッ!!!」
いきなり殴りかかってきたので拳をキャッチする。
うーん、体重移動がヘタクソ。
手打ちになってる。
そのまま片手で手首の関節を逆にひん曲げてやる。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
メキメキ音を立てながら男が膝をついた。
テクニック?
必要ない。
ただの腕力。
この程度の筋力、カトリ先生とあの木刀振ってたら嫌でもつく。
ベきんっと男の腕を覆うカバーが外れた。
中のフレームがひしゃげたようだ。
「これ、どうします?」
他の三人に聞く。
なんだ……イーエンズ爺さんと比べたらずいぶん小物だ。
あのイーエンズ爺さんは俺に謀略で完勝からの死に逃げした男だぞ。
爺さんと同じレベルとは言わないが、せめてタメはれるレベルを用意してほしかった。
「そのくらいでご勘弁を」
男の子がささやいた。
「へえ、大人はあなたの方でしたか」
男の子はやはりサイボーグである。
ツノがある。鬼人国人かな。
「試すようなマネしましたこと、何卒ご容赦を。私はラヘシュ。5大人の一人で、主に密輸品を扱ってます」
試されたのはシンプルにムカついた。
これはサリアきゅんの刑だな。
限界近くまで仕事増やして追い込もうっと。
密輸ができるってことは頭いいんだろうし。
麻薬扱ってたらそこは壊滅させよう。
次にラターニア人が俺に名乗る。
「チェットです。同じく5大人で金貸しをしております」
もうね見た目がインテリヤクザ。
闇金ですね。
どう考えても闇金ですね。
ウルトラ高利の闇金ですね。
関わらんとこ。
次が背の高い男だ。
「オリバーだ。主に酒場や娼館の経営と用心棒を束ねてる」
あー、うん。
このおっちゃんは、存在が違法なんだけどヘタに取り締まると事態が悪化するタイプの人だ。
どのようなカタチであっても社会に存在するし、むしろ表に出して監視した方がいい。
このタイプは娼婦の待遇改善と会計と納税の透明性、麻薬追放を約束させるしかない。
完全に違法にすると人身売買からの商品が使い物にならなくなったら殺害くらいまで凶悪化しかねない。
用心棒してるってことは商品を守る意思があるってことだし。
腐敗しない程度に仲良くしとこ。
「オリバーさん。あなたに関してはあくまで合法的な商売であればご自由にどうぞ。ただし、うちのシマで悪さしたら容赦なく殺しますがね。麻薬と病気は持ち込まないように」
「肝に銘じておく」
なんだかビビリ気味だ。
別に圧はかけてないのだが。
最後のタコの人。
気になってしかたない。
「トーです」
おっと声が女性だ。
「主に武器の密輸と太極国側宙域で通行料を徴収させていただいてます」
はい、海賊!
普通の海賊!!!
直球の海賊!
「うちや太極国に関係なければご自由にどうぞ」
「太極国もですか?」
「ええ、現在混乱中ですので。やりすぎたら我が国の安寧のためにも殲滅するしかありません」
「心します」
暗に「太極国はうちの保護国だぞ」と釘を刺しておく。
私掠船やるのはいいけどさ、見つけたら殺す権利あるよねって話。
いろんな事情があって海賊行為するんだろうけど、うちらにはうちらの都合があるよね。
殺されたくなければ海賊行為はやめておけばいい。
でも犯罪者ってやめられないんだよね。たいていの場合。
人は安易な方に流れていくものである。
というわけで海賊ギルドとは和解。
向こうがどう思おうが関係ない。
我々が和解したと思ったら和解である。
存在を認めるわけじゃないが、大人しくしてれば殺さないと宣言しておく。
ああいうのは潰したら潰したで新しい空気を読めない組織が出てくるものだ。
なので存在を監視しつつ、やりすぎたら剪定するくらいでいい。
剪定や教育が可能だからプローンは保護したし、剪定も教育も不可能だと判断したから屍食鬼は殲滅するのだ。
そりゃプローンを恨んでる種族は文句言ってたけどさ。
屍食鬼の殲滅で勘弁してもらった。
海賊も同じ。
必要悪とは言わないが原初から存在する悪なら、管理下に置いた方がマシである。
苦情の窓口あるし。
だったら向こうが疲弊するまで話し合えばいい。
話し合って殺すしかないって結論が出たら殺せばいい。
どちらにせよ制裁与奪の権は我らにあるのだ。
これが結論。
はっはっは。
最後の懸案も無事に解決。
久しぶりの里帰りである。
カミシロ本家のリゾートで遊ぼうっと。




