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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第四十二話

 原作の戦闘チュートリアルで死ぬ幼馴染み。

 まさかのジェスターである。

 でも……ふざけたキャラではなかったはずだけど。

 うん、幼馴染みは大正義なので考えるのはやめよう。

 幼馴染みが負けヒロインと言ってるヤツがいるがそれは違う。

 幼馴染みの勝率は高い。

 なぜなら、ほとんどの男は恋愛にそこまで必死ではない。

 高嶺の花に挑むわけでもないし、別の女とフラグが立つわけでもない。

 最初にゴールまでフラグが立った女性がいいのだ。

 つまり好き好きオーラを出してくれれば勝利は確定する。

 そんなもんやぞ!!!

 そして俺はある決心をした。

 NTRだけは俺が全力で阻止する。

 NTRだけは許さない。

 幼馴染みがくっつく姿が見たいだけの後方腕組みおじさんになろうと思う。

 その主人公の幼馴染みは名をアリッサという。

 名字はない。

 植民地惑星の住民は市民階級じゃないからだ。

 王族や貴族は領地の嘱託職員扱いで市民権がある。だから名字もある。

 主人公も名字がない状態からはじまるが、士官学校入学と同時に名字が与えられる。

 そんな彼らは輸送船に搭乗している。

 先に主人公と幼馴染みの二人を運ぶ。

 あとの五人は学生が別の船で運ぶ予定だ。

 俺は出発前に挨拶する。


「レオ・カミシロだ。俺たちのボスはそこの女子だ」


「ヴェロニカじゃ」


「クレアよ」


「メリッサだ!」


「レンだよ」


 誰も名字言わねえの。

 俺だけバカみたいじゃん。

 するとアリッサが言った。


「あの……御使い様」


「お主も御使いじゃ。敬語はいらぬ」


「えっと、じゃあヴェロニカちゃん! よろしくね! えっとヴェロニカちゃんは妹くらいの年だよね?」


 嫁の顔が無になった。

 アリッサに悪気はない。

 だがその言葉は嫁のコンプレックスに直撃した。

 あれはキレそうなのを我慢してる顔だ。


「……17歳じゃ」


「え?」


「妾は17歳じゃ。アリッサより年上じゃ」


 入学の一年前だから14歳で市民登録した。

 植民地惑星の住民の年齢管理はいいかげんだから数歳違う可能性もあるけど。

 それはいいが、嫁の方が問題だった。

 嫁は年齢相応に見えないことを死ぬほど悩んでいる。

 だが自称【宇宙一いい女】なので我慢している。

 なのでフォローする。


「アリッサ、嫁は呪いで子どもの姿のままなんだ」


「……あ! ごめんなさい! そうとは知らずに!!!」


 向こうの価値観に合わせて説明。

 すぐに気づいて謝罪してくれた。

 俺はできる男である。

 でもなんとなく……だけど。

 ドジっ子の波動を感じる。

 まさかドジっ子系ジェスターか!?

 で、次はもう一人。

 無口系主人公のエッジだ。


「よろしく♪」


 と元気に挨拶すると無言でうなずいた。

 無言系主人公……いざ実物に合うとどうやってコミュニケーション取っていいかわからねえ……。

 俺はマシンガントークもできずに黙る。

 こういうときに頼りになるのは……空気を読まない女だ。

 メリッサが話しかける。


「エッジ、剣が得意なんだって?俺も得意」


「子どものころから剣を振ってた」


「剣見せてくれる?こっちは俺の刀」


 メリッサが刀を渡すとエッジが剣を渡してくれた。


「直刀。鉄の品質は高い。腕いいね」


「ありがとう」


 そういや自分で打った剣のはずだ。

 鍛冶屋のルートもあるからな。

 今度はエッジの番。


「曲刀。見たことない材料。曲刀なのは対人戦闘が主流?」


「今はゾークだけどな。ゾーク相手にはもっと大きいのを使う」


 エッジはこくんとうなずいた。

 そして俺を指さした。


「一番強い」


「俺の武器? 毎回違うけど」


「手を見せて」


 言われたとおり手を差し出す。


「骨折に切り傷にやけど……ずっと連戦してる手」


 ナノマシンで治療してるのに。

 なぜわかった!?


「アリッサ、レオは信用できる……と思う」


「エッジがそう言うならそうなんだろうね。えっとエッジには不思議な能力があって、その人が信用できるかどうかわかるんです」


 あー……超能力か。

 商人系と勇者も使える。

 勇者の能力かな?


「んじゃ、行きますかい」


 そう言って俺は操縦席に座る。

 免許持ちだからな!!!


「エッジ、本当に浮かんでる……」


「アリッサ、王様が言ってた天を渡る船だ……」


 本当は士官学校が迎えに来るんだが、俺が先にリクルートしてしまった。

 でもいいよね。

 俺、これから木の上で【ふはははは!】助言おじさんになるんだし。

 主人公のピンチに現われて、主人公に助言していくスタイル。

 面倒なことはすべてエッジに丸投げである。

 最終決戦もエッジにがんばってもらおう。

 俺は勇者パーティーの遊び人に戻るつもりだ。

 ずうっと宿屋で待機してるユニットね。


「ふはははははははははー!」


「ねえエッジ、彼、本当に信用できるの?」


「できる。面倒があって逃げようとするけど、最終的に逃げられないタイプ」


 ……やめろ。

 的確すぎる分析を行うな!


「当たってるのう」


 やめろ嫁。


「ぎゃはは! その通り!!!」


 やめろメリッサ。


「残念ながら的確だわ」


 クレアさん、もうちょっと手加減して。


「レオくんは、ほら……そういうところがいいところだから……」


 申し訳なさそうに言わないで!!!

 逆に心をえぐるから!!!


「婿殿はわかりやすいからのう」


「嫁ちゃんひどい!!!」


 脳死会話をしながら大気圏を出た。


「これが……御使い様の世界」


 アリッサは窓を見て呆けていた。

 それに比べてエッジは何を考えてるかわからない表情のままだった。

 エッジがアリッサに聞こえないような小さな声で俺に言った。


「レオ……さん?」


「レオでいいよ、エッジ」


「レオ、俺はなにをすればいい?」


「まずは士官学校に入ってもらう。と言っても学習システムは校舎ごと崩壊したから近衛隊のおっさんや俺たちで鍛える。あとは俺と戦ってもらう。アリッサにはジェスターとしてのデータ取りも手伝ってもらう」


「アリッサが鍵なのか?」


「わからん。でもアリッサを狙ってたかも」


 正直、ゾークが植民地惑星を攻める意味はない。

 なにか気に入らないことがあるなら帝都をさっさと落とせばいい。

 そのあとで蹂躙すればいい。

 つまりなにか目的があったのだろう。

 ジェスター狩りとか。


「わかった」


 エッジの目に火のような意志が宿った。

 俺にとっては最大の懸念だったことが解消された。

 なぜなら本来エッジはアリッサの復讐のために旅に出る。

 それが今の流れでは存在しない。

 もしかするとやる気がない可能性だってあった。

 だけどそれは杞憂だった。


「俺はアリッサを守るためならなんでもやる」


「奇遇だな。俺も嫁のためならなんでもできるわ」


 気が合いそうである。

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的確マシンガン草ぁw
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