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第四百七話

 タチアナが離陸できるようになった。

 ワンオーワンもシーユンも安定した。

 問題は着陸なんだけどね。

 なお、ものまねを試したところ、タチアナは脳内計算で頭がパンクした。

 さらに猛烈な頭痛の末に知恵熱を出し「もう二度とやらねえ!」と言ってた。

 こういう地道な努力と知識が必要なタイプの能力は獲得が難しいようだ。

 超能力とかは簡単なのにね。


「ひーん! 着陸難しすぎる!!!」


「とにかく計器見ろ。大切なことは全部計器にある」


「ひーん!」


 計器を見る習慣はつけた。

 あとは運動神経がついてくるかって話だ。

 スポーツタイプの自転車で真っ直ぐ走るとかの次元だろう。

 半分は慣れの問題だろう。

 とにかく正しいやり方を叩き込む。

 余計なアレンジは逆に遠回りだ。

 エディたちもラターニア人に教えていく。

 女性隊員がエディに質問した。

 なおエディもフロントカメラなしで教えてる。


「その……銀河帝国ではみなこの水準の訓練をするのですが」


「いいえ。ですがゾーク戦争で生き残ったパイロットのほとんどがこのくらいこなせますので」


 女性隊員は固まってた。

 末松さんだって(泣きながら)できるし、レイブンくんたちには俺直々に叩き込んだ。

 俺たちはパイロットを見捨てない。

 できるまでやらせる。

 だって俺たちも最初泣いてたもん。

 自分で設定した目標なのにできなかったもん。

 エリート士官学校生のプライドなんてズタボロよ。

 でも、これくらいできなきゃ死ぬ確率が跳ね上がる。

 死にたくないんだから努力するしかない。

 考えないでもできるように反復練習した。

 そんな、ほのぼのナイトメアな訓練の日々を送ってたらラターニアの外務大臣が会談を申し込んできた。

 嫁ちゃんも同席でラターニアの本星に行く。


「先日の同胞の救助と遺体回収について感謝申し上げます」


 なんだか様子がおかしい。

 その悪い意味じゃなくて感激してるようだ。


「婿殿、ラターニアは遺体を弔う文化じゃ。遺体回収は人質奪還と同じくらい大事なものと考えられておる」


 知識としては知ってたが……ここまで大事だとは思わなかった。

 我が銀河帝国も宗教は仏教っぽいナニカと神道っぽいナニカがほとんどなので、祖霊崇拝にはこだわりがある。

 遺体の回収も積極的だ。

 だけど基本的には人質奪還の方が優先される。

 なお鬼神国は遺体の回収はわりと雑である。

 遺体よりも魂って感じかな?

 遺体をかつてその人だったものと考えるか、その人の抜け殻と考えるかの違いなのかもしれない。

 これはわからないので宗教学者が議論してる最中だ。

 ラターニアの文化研究とかベストセラー本多数なので学者も俄然やる気を見せてる。

 やはり売上は正義なのだ。

 俺たちはラターニアのマスコミに囲まれて撮影。

 なんだかなー。

 いや友好国アピールはいいんだけどさ。

 ラターニアも国内情勢が厳しくなってきたのかも。

 マスコミの政府批判も激しさを増している。

 太極国の工作もあるだろうけどね。

 ラターニアもマスコミに家宅捜索したり、スパイを逮捕してるんだけど……。

 太極国も本気でスパイを総動員してるせいで取り締まりは焼け石に水状態だ。

 屍食鬼避けもまだ作れない。

 ようやく仕組みが理解できそうなところまで来てるって状態だ。

 そのせいで社会不安があおられまくってる。

 軍の施設や行政の建物に放火が相次ぎ、抗議活動が暴徒化しまくりである。

 みんな不安でしかたないのだろう。

 しかも負けまくってる。さんざん下に見てた屍食鬼にである。

 庶民は太極国との戦争ではなく屍食鬼との戦争と考えてるのだ。

 ラターニアはプロパガンダを逆手に取られた形である。

 うーん難しい。

 結局、戦争に勝ちゃいいんだよね、勝ちさえすれば。

 俺も肝に銘じとこうっと。

 ということで記念撮影。

 遺体引き渡しの友好条約を結ぶ。(我々は頼まれなくても渡す方針だ)

 これはあらかじめ知ってた。

 俺たちはとりあえず供養とか霊祭の文化なので負担にはならない。

 負担になるのはラターニアだけだ。

 式典が終わると食堂でダラダラタイム。

 俺はラターニアに行ったときにしこたま買ったスイートコーンらしき物体を煮てた。

 タイマーが鳴る。


「茹でたぞ~」


 みんなで試食。

 クレアが仕事モードで食べる。

 みんなにも配る。


「甘さが少し足りないかも?」


 高級品を扱う立場のクレアは首をかしげる。

 俺からすれば普通のスーパーに並んでるやつとあまり変わらないという印象だ。

 違いは粒がマシュマロくらい大きいくらいか。


「粒が大きいね。醤油だれつけて焼いたらウケるかも。ためしに実家で売ってみる?」


 実家が和風テーマパークなメリッサの意見である。

 かなり期待できる。


「うまいっスよ」


 味に関しては一番信用できないタチアナである。

 なに食っても「うまいっス」である。


「粒を外してバターで炒めるとおいしいそうだね~。ちょっと作るね~」


 味に関して一番期待できるニーナさんが笑う。

 嫁ちゃんもトウモロコシをかじってた。


「婿殿、こういう珍しいものを食べられるのは役得じゃな」


 嫁ちゃんが笑ってくれてるのでよかった。

 さてそんな日々が続く。

 ワンオーワンもシーユンもタチアナも着陸できるようになった。

 じゃあカメラ解禁。


「ほい走れ、走れ、走れ」


「ウッス」


 最初に激烈なハードモードをさせたので次のステップからは楽だった。


「はい前転」


「ほい!」


 後転してからジャンプ。


「あらよ!」


「なー、最初に正しいやり方憶えたから楽だろ」


「要するに計器見ればいいのね!!!」


「そういうこと」


 それが難しいんだけどね。

 ワンオーワンも楽にできる。

 シーユンも問題なし。

 ラターニア人もある程度操縦できるようになった。

 そんなある日のことだった。


「ぎゃあああああああああああああッ!」


 エディの悲鳴が響いた。

 俺と嫁ちゃんはいつものように一緒の部屋で寝てた。

 エディの部屋のすぐ近くなので走っていく。

 隣の部屋のピゲットやレイブンたち護衛の騎士も来る。

 そしたらエディの部屋に半裸の美女がいたわけだ。

 あ、そうか。

 俺たちと違ってエディはミネルバちゃんと別の部屋なのか。

 俺たちは籍入れてるから一緒に寝てるけど……。


「なんで!? なんでぇ!? なんでえええええええぇ!?」


 エディ焦りまくり。

 エディの普段着はださいジャージだ。

 これ絶対事後じゃないわ。

 するとミネルバちゃんが来る。


「ち、違う! 俺は君を裏切ってなーい!!!」


 するとミネルバちゃんは呆れた声を出す。


「そんなのわかってるよ。はめられたんでしょ」


 その場にいた、当人たちを除いたほぼ全員が「ですよねー」と思っただろう。

 冷静に考えれば簡単な話である。

 俺を狙うのが無理だったのだ。

 だって俺は嫁ちゃんと同じベッドで寝てるし。

 それがエディなら簡単に落ちると思ったのだろう。

 だが甘いな!!!

 やつは! この艦随一の! 堅物だ!!!

 だから嫁ちゃんは言った。


「捕まえよ。内々で問題解決したい。まったく愚かな。ラターニアもそれだけ焦っているのじゃろうが……」


 嫁ちゃんは呆れてた。

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― 新着の感想 ―
レオがラターニアからも嫁を貰えば解決。 はい解散。
今回のオチがアレだけど国としてのまともさでランキングつけると ラターニア>鬼神国>>>太極国>>>>>>その他 な印象 ラターニアは最初の印象よりずっとまともだった
計器飛行(?)って計器の情報から自機の状態を想像出来るかどうかがキモよね けど、低速なら兎も角、亜音速以上の高速域じゃ目視情報じゃ追っつかないから計器飛行が出来ないと話にならんのよね ブリップの動き…
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