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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第四十話

 つい先ほどまで人権のなかった男です。

 AIに強制的に注入された薬物と脳クチュであやうく廃人寸前まで行った。

 七色に光るユニコーンが延々見えているのだ。

 死ぬかと思った。

 でも中和剤とナノマシンで一命を取り留めた。

 ……しかも半日で治った。

 この世界の医療がおかしいだけだと思う。

 病院を出て行政ビルに連行される。

 レンとマルマが出迎える。


「カミシロ殿。退院おめでとうございます!」


 マルマが元気よく言った。

 きっと練習したのだろう。偉い。

 レンは正装のドレスを着ていた。


「マルマ殿、レン殿。戦勝おめでとうございます」


 とここまでは人に見せる用。

 カメラもまわっている。

 執務室に入ってここからがプライベート。


「領主なんてなりたくなーい!」


 高そうなソファーに座ったレンが伸びをした。

 マルマ様はテーブルの上のお菓子を食べる。

 もう俺たちはお互いを気にしない仲である。

 嫁は骨折のため今回は欠席。

 レンがお菓子をつまむと拡張現実からファイルを開く。

 俺の方にもファイルの中身が表示される。

 タイトルは【リニアブレイザーの所有権について】。

 いらない。


「俺としてはAIも含めて廃棄してほしいかな」


「レオ、無理だよ。もうリニアブレイザーは惑星ミストラルを救った守護神だし」


 リニアブレイザーが問題なのではない。

 あのド畜生AIだけは絶許なのである。


「せめてAIだけぶち殺せないかなあ……」


 あの腐れ外道AIだけは差し違えてでも消去してやる。


「ヴェロニカちゃんが【ダメじゃ】って言ってるし」


「ぬう! 復讐すら許されぬと言うのか!!!」


 嫁がそう言うなら従うしかない。


「それでリニアブレイザーのことですが……」


 マルマ様が一ミリも進まない話題を戻してくれた。


「使っちゃって。どうせ持ってけないし」


 リニアブレイザーは大きすぎるのだ。

 駆逐艦に収納できない。

 けん引も無理だろう。

 じゃあどうするか?

 もうこうなったら置いて行くしかない。

 俺たちは首都星に行かねばならないのだ。

 首都星を解放し、みんなの家族を救う。

 俺は約束を守る男である。

 その旅に浪漫兵器は必要ない。というか持って行けない。

 宇宙空母があったって、わざわざリニアブレイザーを持っていかないだろう。


「ありがとうございます。姉さん、リニアブレイザーは広間に展示しましょう」


 リニアブレイザー問題はこれで終了。

 他の議題は実務だ。

 食料や水などの物資の搬入や種類の選定などだ。

 これらはすでに決定稿なので確認だけする。


「へぇ、天然の土壌菌くれるんだ!?」


「リニアブレイザーでハゲにしたところがたくさんあるから……」


「……ごめん」


 被害額が天文学的すぎて弁償できるはずもない。


「いいよ。土地の修復は復興事業にちょうどいいし」


「そうそう、レン。これからどうするの?」


「どうするのって? 今まで通り船に乗るけど」


 ケモ耳がピコピコ動く。

 普通に困惑してるようだ。


「この惑星は?」


「マルマと母上たちにまかせる。もともと私は後継者教育されてないし。整備班の方が活躍できると思うんだ」


「そうか。これからも頼む」


 軍用機の整備ができるエンジニアは少ない。

 なので整備班は現在深刻な人手不足だ。

 レンがいてくれればありがたい。

 レンの場合オペレーターもできるしな。


「あ、でも愛人は勘弁かな」


「あははは! あれは嫁の陰謀だから!」


 俺が【ハーレムおーくれー!】って言ったわけではない。

 完全に陰謀である。


「私が欲しければちゃんと口説いてね」


「ん?」


「うふふふふふふ」


 なんだか意味深である。

 会談を終え積み込み作業を手伝う。

 学生の非エンジニアなんて力仕事くらいしか期待されてない。

 フォークリフトで荷物を積みこむ。

 レオは資格をいくつも取得してる。

 よほど地元に帰りたくなかったのだろう。

 軍を追い出されても帝都で生きていけるようにしていたのだ。

 荷物を搬入して今度は人型重機に乗り換える。

 人型重機で弾薬などを運ぶ。


「へーい、弾薬お待ちー」


 男子どもに渡す。


「ぐ、これがハーレム王の余裕か!!!」


「持たざるものを笑う悪魔めが!!!」


「お前ら俺がなにをした?」


 全部自業自得じゃねえか。

 ほんとお前らいいかげんにしろよ。


「みんなのメリッサを奪いやがって!」


「ブス決定戦とかやってるから嫌われるんだろが!!! ぶぁーか!!!」


「うわああああん!!! こうやって我らは永遠に搾取され続けるのか!」


「被害者ヅラすんな!!!」


 だいたいお前らのもんじゃねえ。


「男が三人集まったらバカになるのはお前だって知ってるだろ!!! つい出来心だったんじゃー!!!」


 出来心にしては大規模すぎるんだよ!!!

 メリッサがどう思うか考えろ!

 ばかちんが!!!


「俺からアドバイスするとしたら……一生童貞でいろ。ぶぁーか!!!」


「うわああああああん!!!」


 悪は滅びた。

 言い負かすのは実に痛快である。

 今度は女子たちへ弾薬を渡す。


「あー、レオくんだ」


「弾薬のお届けでーす」


「もう、ヴェロニカちゃんに言いつけるよ~」


「浮気じゃないで~す」


「きゃ~!」


 脳死会話をしながら弾薬を置く。

 メリッサを愛人にした件で女子に嫌われると思ったが逆に人気が出た。

 顔がいいのは得である。


「でさでさ、本命は誰?」


「そりゃ嫁。籍入れてるし」


「やだー! 即答だよ!!!」


 女子たちは喜んでくれたようだ。

 キャーキャー言ってる。


「ねえねえ、レンはどうするの?」


「愛人にしたけりゃ口説けって言われた」


「やだー!!!」


 めちゃくちゃ喜ばれた。

 女子ども恋バナ好きだなー。

 生暖かい目で見てると話が変わる。


「でもさー、彼氏欲しいよね……」


「うちらいつ死ぬかわからないもんね……」


「せめて彼氏欲しかったよね……」


 やめろ。暗い話は止めろ。


「死なねえっての。俺だって何度も死線くぐってるけど生き残っただろ。みんなも大丈夫だって」


「あはは。レオくんに言われると死ぬ気がしないわー」


「それに帝都解放したら英雄だぞ。男なんて選び放題だぞ」


「あはははー! そうだね。がんばろうっと!!!」


 俺たちは決戦を迎える。

 みんなを生かして帰さないとな。

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― 新着の感想 ―
年寄りの腹筋には優しくない物語
かっこいいとかっこわるいが満載しててすこ
誰か死なねぇかなぁ…こう、ビシッと空気が引き締まることが起こると助かるんですが。クローンクローン言ってますけど、実際出てないんですよね、記憶がぶっ飛んだ死人。クローン見たあとの反応とか欲しいですねぇ。
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