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第四話

 気がついたら病院にいた。

 下の毛は剃られてなかった。残念。

 病室は個室。料金が怖い。

 実家が侯爵家だしなんとかなるだろう。……たぶん。

 部屋備えつけの情報端末ではゾークとの初遭遇が大々的に報道されていた。

 ギ●ン様みたいにカッコイイ演説にしようと思ったのに。ただの性癖大公開になってしまった。

 恥の多い人生でした。びくんびくん!

 少し興奮する。

 もう一度言おう!

 何万、いや何億もの人々に冷たい目で見られたとか興奮する。

 嘘です!

 メンタルボロボロです!!!

 病室には男子生徒たちが集結していた。

 なぜか涙ぐんでいる。

 眼鏡で髪型が七三にツーブロックの男子がベッドの前に来た。

 同級生だと思うが、レオは友だちのいないぼっちなので記憶にない。

 男子生徒は涙ぐみながら演技過剰に言った。


「レオ! 俺は! お前のこと【ものすげえムカつくお貴族様。苦しんで死ね!!!】ってずっと思ってた」


「正直すぎるだろ! もうちょっとオブラートに包んでくれないかな!!!」


 てめえぶち殺すぞ。


「最後まで聞け! 俺は、お前のことを誤解してた! お前は……俺らの側(持たざるもの)だった」


「喧嘩売ってるのかな? 高値で買い取るぞ」


「うるさい!!! この童貞!!!」


「おおおお、おめえらもだろが!!!」


 思わず大げさに反応してしまった。

 不毛すぎる。

 この世界にはアホしかいないのだろうか?


「まあいい。お前もクソ童貞なのはわかった。喜べ。我らの秘密結社【童貞紳士の会】に招待してやろう」


「なんでそんなに尊大なのかな?」


 偉そうにすんな!

 入らねえよ。そんな会。

 ぶぁーか!

 完全に喧嘩に移行しそうになっていると軍服を着た屈強な男たちが入ってくる。


「第128皇女殿下のお成りである!!!」


 男子生徒たちが敬礼しながら道を空ける。

 俺も立とうとしたら一番偉そうなおっさんに押さえられる。

 職位は近衛隊の隊長で大佐か。


「レオ生徒。君はそのままで」


「あ、はい」


 爵位は絶対的指標によるとうちの家は偉い方であるが、職位が自動的に付属するわけじゃない。

 軍の大佐なんて雲の上の存在である。

 レオだと侯爵ブーストを考慮してもせいぜい少佐止まりだろう。

 それもロースクールに合格して特別職の弁護士か検察官になった場合だ。

 判事は……まあ公爵家でもないと無理。

 侯爵なんて掃いて捨てるほどいるからな。

 するとやはり軍の技官狙いだな。

 やはり堅いのは弁護士だろう。

 これから軍事法廷増えるしな。

 生き残ってしまったので今から努力せねば。

 今後の人生設計をブツブツつぶやいてると、甲高い少女の声がした。


「英雄殿。生きてるようだな」


 どこかで聞いたことがある声だなと思ったら、宇宙空間を漂ってたときの声だと気づいた。

 皇女ヴェロニカだ。

 そういやおっさんも皇女って言ってたな。

 背の小さい少女がカカカと笑いながら病室に入ってきた。

 年齢は17歳の俺の少し下。日本ならば中学生くらいかな。……小学生かも?

 とはいえ、見た感じは少女って言うかメスガキだな。

 あざとく桃色の髪をツインテールにしている。

 服装はSFにありがちな胸元からお腹まで開いてるピッチピチスーツである。

 エロい。


「よっ! 元気か!」


 今元気になった!!!

 助けてもらったことを思い出し、立ち上がろうとするが大佐に肩を押さえられる。


「そのままで」


 やだカッコイイ。


「他のものは下がれ。レオと二人きりで話がある」


 そう言うと近衛隊員が男子生徒(アホども)を連れて行ってしまった。

 そうだ。礼を述べなければ。

 そういう場に違いない。


「ヴェロニカ殿下には命を助けていただきまして。この命、殿下のために……」


「いらん。気にするな。さんざん笑わせてもらったからな。……いや命はもらうのか。そこ座るぞ」


 すとんっとヴェロニカはベッド脇に座った。

 すると俺の胸倉をつかむ。


「え? 処刑」


 俺、処刑される?

 せっかく生き残ったのに?

 それともただのカツアゲ?


「レオ、喜べ! お前、妾の婿に決まったぞ!」


 はい、いきなりシナリオぶち壊した。

 俺もう知らねえ。


「父上がおもしろ半分に決めたぞ! カカカカカカ!」


 ヴェロニカは偉そうに笑った。

 一応本人の意思を確認しておこう。怖いから。

 10年も20年もそれを蒸し返される殺伐とした家庭なんて嫌だ。


「皇女様は納得したので?」


「父上、皇帝陛下は絶対。妾の意思など意味を持たぬ」


「それでも好きな相手とか……」


 もしかするとすでに主人公が現われてるかもしれない。

 NTRだめ絶対。


「妾に好いた男などおらぬ。妾は勇敢な男が好きじゃ。その点ではお前は合格じゃ。それに煩わしい幼生固定からも解放される。お主には感謝しているぞ」


「幼生固定?」


「ああ、妾は皇帝陛下の命で幼生固定。少女の姿から成長しないようにされてたのじゃ。そのせいで月のものすら来ない身体での。それも結婚を機に解放されるのだ。カカカカカ!」


「えっと……なぜに皇帝陛下は幼生固定手術を?」


「知らんのか? 父上は生粋のロリコンじゃ。母上たち、みんな幼生固定されてるぞ」


「……聞かなきゃよかった」


 皇帝はゲーム序盤で死ぬのでバックグラウンドまで知らなかった。

 設定資料集にはあるんだろうけど。


「実際、何人かの姉上は皇帝陛下の子を産んだしな」


「ぶッ!!!」


 近親相姦とかまじでやめてくださいよ!!!


「気持ち悪いだろ? 妾も父親が銀河帝国の皇帝じゃなければ家出してたところじゃ。皇帝相手じゃ不可能だがの。数度しか会ったことのない父親に、その子どもを産んだのは顔も知らん姉や妹だから現実感はないが」


「ええっと……殿下は?」


「ああ、妾の母上は皇帝陛下の妹での。さすがの皇帝陛下でも妾にはビビって手を出さなんだわ」


「あ、それ知ったら死ぬやつじゃ……」


「おうよく知ってるな! その通りじゃ! さて……銀河帝国の最高機密を知ってしまったな。これで妾と結婚せねば命がなくなることになったな! カカカカカ!!!」


「脅迫だー!!! ところで殿下。なんで俺なんです? 英雄なんて掃いて捨てるほどいるでしょうに」


 本物の英雄は本当に多い。

 海賊狩りから独立派との戦闘から。

 駒は揃っている。


「それな! お前のあの演説。あれを見た陛下は【今どき風雅のわかる若者は貴重だ】とたいへんお慶びになられての」


「そっちかよ!!!」


 ド変態に仲間認定された!

 普通にきもい!!!

 皇帝陛下を訴えられる裁判所ないですか!!!


「報道向けに音声が修正されたが。我らには無修正版が配られた。何度も笑わせてもらったぞ!!! お主なら妾にもなにかエロスを感じてくれるのではないか? ロリ以外で。ロリコン死ね。さあ述べてみよ!!!」


 父親が嫌いすぎてロリコンへの当たりが強い!!!

 そしてチャームポイントを言わなければならないという苦痛。

 しかもロリ以外で!!!

 ロリの権化にロリ以外を強要される無茶ぶりである。


「そうですね……古今東西、かわいそうはかわいいと言われてまして」


「ほう……妾はかわいそうか?」


「客観的に言って父親に性的に見られてる時点で通常の家庭よりは。かなり。しかも英雄とは名ばかりの頭の悪いガキに嫁がされるなんて悲劇そのものです」


「ほう、続けよ」


「ですが、そんな環境でも自己を失わず強く生きているところに美しさを感じます」


「美しさ……か。面白い。殺さなくてもよくなったようだ。続けよ」


「ともに逃げるという選択肢は現実的ではありません。私は殿下と仲良くできたらと思います」


「抱けるか?」


 直球で来やがったな。

 どうコメントすればいいかわからねえよ!

 正直に言おう。


「抱けますが。なにか?」


 あのな、こちとら全方面性癖型紳士やぞ!

 そんなどエロい格好しくさって抱けねえわけねえだろ!!!

 あと脇見せんな。襲うぞ!


「ロリコンか?」


「ロリ以外もストライクゾーンですが?」


「よしわかった! この場で処刑するのはやめてやろう! 結婚するぞ!」


「お眼鏡にかなったようで何よりです」


 皇帝陛下の決断だ。

 リアルこの世界の住民に拒否権などない。

 俺は主人公じゃないのだ。

 ならば状況を楽しんだ方がいい。


「あ、そうだ。妾な。お前と同い年なんだわ。そっちの学校に転入するからな」


「楽しみにしてます」


 そういやゲーム本編でも転入してきたな。


「じゃあのー」


 そう言って殿下は病室を出て行った。

 クラスの連中が入ってくるかなあと思ったら近衛隊が病室に入ってくる。

 例の一番偉いおっさんが背筋を伸ばして真っ直ぐ俺を見据える。


「レオ殿……学生のうちに言っておこう。皇族でも末に近いヴェロニカ殿下は乳母もつけてもらえなかった。我々近衛隊に育てられたのだ」


 サラッと重い話が出てきたな。


「……つまりここにいる全員が父親のようなものだ。つまり、だ。うちの娘泣かせたらぶち殺すぞ!!!」


 こ、怖い!!!

 キュッと俺の本体とゴールデンボオルが縮み上がった。


「言いたいことは言いましたので失礼いたします。くれぐれも我々の言葉を忘れぬように。では」


 マジで怖いのだが。

 とはいえ俺がモテるわけねえし、仮にモテても恋愛感情のある結婚ではない。

 問題はないだろう。

 次に男子たちが入ってきた。

 なぜかその目は怒りに満ちていた。

 ベヘリットみたいに血の涙流す顔芸やめろ。


「……この裏切者め」


「勘違いするな。どう考えても恋愛結婚じゃねえ」


「るせー! 美少女と結婚とか有罪(ギルティー)だ! 死刑だ!!! うらやまけしからん罪で死刑だー!!! 死ね! ばぁーかばぁーか!!! うわあああああああん!!!」


 小学生のような煽りを残して男子どもは出て行きやがった。

 涙拭けよ負け犬。

 そんなわけで超高速で結婚が決まったわけである。

 そこで問題が持ち上がった。


「実家どうしよう」


 ああ、前途多難である。

 ああ、無能が余計な事しませんように。

主人公専用機が出るとこまでは書いたぞい!

数話先で出る予定

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名言すぎる>「ロリ以外もストライクゾーンですが?」
いきなりの機雷原で草ァw
主人公の死亡フラグが止まらないw
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