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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第三百九十五話

 アタシは今日も目が覚めてしまった。

 端末からメッセージボックスを確認する。

 タチアナの母親(ババア)からメッセージが来てる。

 タチアナの母親は今のタチアナ(アタシ)の領地になるはずの惑星で職業訓練を受けてるとのことだ。

 実地訓練先は農協の職員。

 一家は帝国による生活への補助金とアタシの仕送りで生活してる。

 弟と妹は惑星にある学校に通っている。

 成績は優秀らしい。

 さすがに士官学校に入れるほどじゃないけど、国立の全寮制の高校は狙える位置にある……。

 っていうかさ!

 士官学校! なにあの倍率!!!

 めちゃくちゃエリートじゃん!!!

 幼年学校だって入るの難しいっての!!!

 レオの兄貴……実は頭いい?

 領地は未成年だからまだ自分の物じゃない。

 なんでも後見人とかいう侯爵が管理してくれてるらしい。

 陸軍の中佐らしい。

 落ち着いたらアタシはそこの家に養女に入るんだって。

 なんかあやしいなって思った。

 だからちょうどいいタイミングでヴェロニカお姉ちゃんに呼び出されたので聞いてみた。

 珍しく二人きり。

 レオの兄貴もいない。

 暗い話をするにはちょうどいい。


「養女に入るって……うちのババアどうすんの?」


「ちゃんと侯爵が面倒見てくれることになってる」


「え……うちのババア侯爵の愛人になるの? 大丈夫? あのババア調子にのるよ? 迷惑かけちゃわない?」


「違う! 生活の面倒見るだけじゃ! タチアナ、お前も伯爵になるんだから自覚持て」


「えー……でも底辺家庭のクローンなのはどうにもならねえッスよ」


 今だったらわかるけど「親は関係ねえだろ!」っていうのは大人の世界じゃ通用しない。

 アタシは元売春婦の娘、そのクローンなのだ。

 レオの兄貴やヴェロニカお姉ちゃんの足を引っ張りたいやつの餌になりかねない。

 表立ってスキャンダルにするほど世間は下品じゃないが、アタシの出自はすでに公然の秘密だ。

 クローンってのも、母親が元売春婦ってのもね。


「それでもお前は我が妹分にして我が夫の元でゾーク戦争を生き抜いた英雄じゃ。誰にも出自で文句など言わせぬ。ふざけたことを抜かしたやつがいたら妾が叩きつぶす」


「でもアタシが偽物なのは事実ッスよ」


「今のタチアナしか我らは知らん。ゾーク戦争の英雄も我らの妹分もお前だけじゃ。婿殿だって何度も言ってるじゃろが。鬼神国の聖女にしてお笑い三銃士、【万魔の魔女】の異名を持つ帝国最強の超能力者の一人じゃ」


「ちょっと待って、お笑い三銃士はレオの兄貴が勝手に言ってるだけッスよね? あと【万魔の魔女】って初めて聞いたんスけど」


「お前のコードネームじゃ。婿殿は【希望の賢者】、アリッサは【孵化せぬ卵】じゃ」


「アリッサちゃんの扱いひでえ」


「覚醒したら適当な名前がつく、つかなくても次代以降に期待じゃ。それにアリッサは普通に優秀じゃ」


「とにかくじゃ、お主の母親の生活は気にするな」


「ウス」


「さて、本題じゃ。母親や兄弟はどうだか知らんが、我らにとってはお前だけがタチアナじゃ。ワンオーワンもシーユンもそのはずじゃ。そこでお前に重大な任務を与える」


「なんスか、改まって……」


「シーユンが太極国の惑星に降り立つ。守れ」


「そりゃもちろんダチッスから。でも……二人きりで言うほどの話じゃねえと思いますけど。なんか兄貴に言えない話ッスか?」


「ある意味そうじゃな……」


 なんか雰囲気が暗い。

 うーん、ここは軽口で場を明るくするしかないな。


「あたしに死ねって命じてもいいッスよ」


 すると一気に空気が重くなった。

 あ、うん、外した。


「タチアナ……言っておくが、妾はお前を家族、本当の妹だと思っておる。そういうセリフは軽口でもやめよ」


「あ、うん、ごめん……それで、なにが問題なの?」


「屍食鬼な、どうにもならぬ」


「はああああああああああッ!? どうして!? 治療法あるんでしょ!?」


「治療法自体はある。だが効果メカニズムが間違ってる可能性が大きい。全体を見直す必要に迫られておる。それにやつらが微生物というのが問題じゃ。根絶が可能かすらわからなくなった……いやおそらく不可能じゃ」


「焼き払うとかさ、なんかないの?」


「生態すらわからなくなった。もしかすると人間を乗っ取るのはイレギュラーで、山や森が丸ごと屍食鬼の巣かも知れぬ」


「嘘でしょ……」


「そこでこれじゃ。鬼神国、ラターニア、太極国の神話に民間薬に宗教や文化まで分析したレポートじゃ」


 ヴェロニカお姉ちゃんがぶ厚い書類を出した。


「読むだけで一月かかりそうっス」


「だろうな。だからこのページを見よ」


「あん? 聖女?」


 三つの国に共通するのが聖女伝説らしい。

 まずは鬼神国の建国神話。

 お互い殺し合う鬼を救った聖女だ。


「殺し合う鬼。なにか気づかないか?」


「屍食鬼の乗っ取り!?」


「そうじゃ」


 ラターニアには薬をもたらした。

 薬で病気が治ったラターニア人は奴隷解放を成し遂げ国を作った。


「これなんて露骨じゃな。屍食鬼の薬じゃ。分析では薬草が屍食鬼に一定の効果があったと報告が上がった」


 そして太極国。

 聖女は神の代弁者として初代皇帝を助力した。

 聖女の助けで初代皇帝は太極国を統一。

 法と秩序をもたらした。

 なにか気づかんか?


「……なんだろう? 治したって記述がないことッスか?」


「そうじゃ、おそらく聖女は医者じゃ。屍食鬼の治療にあたり、思い半ばで亡くなった。亡くなった地が太極国じゃ」


「アタシ、聖女扱いされてますけど医者じゃねえんスけど」


「医者なら別にいる。だが聖女扱いされてるのはお前だけじゃ。わかるなタチアナ。聖女になれ」


 なんという無茶ぶり!!!

 どうすんだよ!!!


「聖女になるプランが思いつかねえよ!!!」


「ああ、そこでこの計画じゃ。この地点じゃ」


「はあ……それなんスか?」


「聖女の墓じゃ」


「はあ……?」


「ものまねで聖女の力を借りろ」


「はああああああああああああああああッ!? ちょ、お姉ちゃん!!! 無茶ぶりにもほどがあるでしょ!!!」


「だがお前にしかできない。前のタチアナじゃない。お前だからできることじゃ。我が妹【万魔の魔女】よ!!! 今こそ聖女になれ!!!」


 嘘でしょ……お笑い三銃士の方がはるかにマシじゃねえか……。

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― 新着の感想 ―
とうの昔の死人の何をものまねするのかな? 死人のものまねかな?
モノマネ出来るような何かがあれば良いのだが… マジで何も無い事もあり得るからな〜
屍食鬼特化に『ものまね』すれば良いのか…そしたら屍食鬼に関しては過去の聖女を越える特攻を持てる。
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