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【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~  作者: 藤原ゴンザレス


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第三十九話

 ヴェロニカである!

 我が夫レオが絶望的な状態から勝利をつかみ周辺宙域を解放した。

 この字面だけ見れば英雄物語の一章と思うだろう。

 だけど音声付きで見ていた我らの心境は複雑だった。


「ギャハハハハ!!! 音声がBGMになってやんの!!!」


 指さしてゲラゲラ笑うのはメリッサ。

 夫の愛人である。

 妾は宇宙一のいい女である。

 だから愛人を許している。

 腹は立たない。

 実の娘と何人もの子を成した我が父親と比べればかわいいものだ。

 もし将来、実の娘に手を出すようなことがあれば……。

 ……その場で殺そうと思う。

 生かしておく理由はない。

 それは未来の話として……現在婿殿は寝込んでいる。


「メリッサ、婿殿はどんな様子じゃ?」


 メリッサに聞いてみる。

 メリッサはやたら目力の強い顔をしている。

 鼻筋は通っていて唇も厚いセクシー寄りではなく清潔感がある。

 個々はパーツとして整っている。

 かわいい系ではないが、化粧をしてみたらモデルのようになった。

 メリッサをブスランキングに入れるなんて男子はバカなのか?

 胸や腰も女性らしい線を描いている。

 婿殿の審美眼の方が正しいと思うぞ……。

 男子はバカなのか?

 メリッサはニカッと笑った。


「うん。悪夢にうなされてるよ。正体不明の薬物の浄化と頭部の損傷をどうにかしないとね」


 婿殿は500年前の人体実験レベルの医療処置のせいで集中治療室にいる。

 本人は元気だと言い張っているが、七色に光るユニコーンが見えてる時点で廃人一歩手前である。


「今のジェスターは軟弱ですねえ」


 と、医療措置をした元凶が他人事のように言った。

 元凶は拡張現実を飛び回っている……羽虫だ。

 蝶のような羽の生えた少女に見える。

 賢者移行システムとかというふざけた存在だ。

 人格を持ったAIのたぐいだが、出来が良すぎる。

 やつはリモートから駆逐艦のコンピューターに侵入。

 すっかり居座ってしまった。


「やはりアンチウイルスで消してしまおう……」


「やめてー!!! AIに愛を! 人権をー!!!」


 うっとうしい。

 だが生かしておかねばならない。

 ジェスターや婿殿の力の謎が解明できるかもしれないのだ。

 ……とりあえず圧力をかけてみるか。


「婿殿を治す方法を教えよ。でなければ削除じゃ」


「ひいいいいいいいいッ!!! データ送ります!!!」


 データが送られてくる。

 AIで検索してみると婿殿に注射された薬品は大昔の超能力開発薬であった。

 なんでも外国からの侵略者に対抗するため超能力者を育成しようとして作られたものとのことだ。

 人間の醜さが凝縮しているようだ。

 当然のように現在では禁止薬物である。


「で、でも! 皇女殿下! 最強になるためのお薬ですよ!!!」


 AIの戯言を聞いた瞬間、妾はキレた。


「この阿呆めが!!! 最強の代わりに婿殿を壊してどうする!!! レオは次期皇帝になるかもしれぬ子の父親ぞ!!!」


 まだなにもしてないがな。

 父上が妾を降嫁させてないということはそういうことなのだ。

 次代に高い継承権を約束したようなものだ。

 おそらく継承権10位以内。

 これは客観的に見ても、このたびの戦果で妾の妄想とは言えなくなっている。

 すでに現実的なラインだ。

 それに……打算だけではない。

 たしかにレオは変態で野蛮なバトルジャンキーでギャグ世界の住民ではある。

 だがあやつは吐き気がするほどおぞましい皇族の秘密を知っても妾を拒否しなかった。

 それになんだかんだで優しい。

 まさか意思疎通のできる相手と結婚できるとは思わなかった。

 100位以下の皇女など道具でしかない。

 好色な老人や様々な理由で結婚を望めぬ高位貴族にあてがわれるものだ。

 海賊狩りで戦争の道具をアピールしていた妾も嫁がされるのは時間の問題だった。

 それに海賊狩りで命を落とせば妾のクローンは父上の奴隷になるだろう。

 父上はクローンを本人と認めてないのだ。

 あのゴミはいつか殺さねばならぬ。

 皇位はいらないがヤツの命は欲しい。

 できれば姉妹の解放を。

 ……哀れな姉妹たちに比べれば妾は恵まれている。

 意思疎通ができる優しい豪傑。

 うむ、上出来じゃ。

 婿殿は絶対に手放さぬぞ。

 レオとなら憧れていた家族というものになれるかもしれない。

 だからこそ許せなかった。

 妾に怒られたAIがブツブツつぶやく。


「だってー、前の戦争じゃジェスターは使い潰せって命じられてましたし」


「端末貸せ。この阿呆を消去するぞ」


「いやー!!! だってー、だってー!!! ジェスターは子孫残せないんですよ!!! 戦争で使い潰すためだけに生まれたミュータントですよ!!!」


「婿殿は両親がおる!!!」


「え……? 繁殖しちゃったの?」


「なにか文句でもあるか?」


「バイオハザードじゃないですか!!!」


「うるさい! 500年も問題なかったのじゃ! 今さらなんじゃというのだ!!! だいたい超能力者などいくらでもおるわ!!!」


「超能力者が……いっぱい?」


「うむ」


「終わりだ……帝国どころか人類絶滅フラグだ……」


「なにをバカなことを言っておる。超能力者はすでに人類の遺伝子に組み込まれたのじゃ!」


「殿下……わかります? 人類が滅びないように遺伝子の純潔性を守る役目のいたいけなAIが目が覚めたら新しい人類に銀河を乗っ取られてた気持ちが……この圧倒的絶望感が」


「あきらめよ。誰も気にしておらん」


「ぎゃあああああああああああああッ!」


「別にどうでもいいじゃん。超能力、便利だし。火か電気使えると光熱費が半分以下になるって聞くしさー」


 我らの言い争いを見ていたメリッサが苦笑する。


「人類の遺伝子汚染が光熱費くらいの扱い?」


「そ、それが現在の価値観だよ。だいたいさー、開拓惑星とかじゃ細胞に葉緑体埋め込んだりしてるし、レンみたいな獣人種だって惑星開拓用の強化人間の末裔だろ。たかが超能力者が増えたくらいで大騒ぎすんなよー。うちは超能力者の移住大歓迎だから他より多いんだけどさー、うちの武士団の半分くらいは超能力者だぞ」


「すでに人類は滅んでた!!!」


「うるさい! 我らが人類じゃ! 文句あるか? 文句があればいつでも消去してやる」


「ナ、ナイデスヨ」


 婿殿よ。

 脅迫とはこうやるのじゃ。

 それにしてもレンが心配である。

 父親の公爵が討ち死にしたからな。

 そっちは婿殿がうまくやってくれると信じてるが……。

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― 新着の感想 ―
>>バイオハザード レオくんゾンビ説。 もしくはアメリカザリガニ
[良い点] 嫁ちゃん格好いい
[一言] あー、遺伝子操作なしのまっさらな奴だけが人類扱いなのが500年前の価値観か なんとなくゾークすら当時の失敗作だったんじゃね
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