第三百八十四話
なぜかピゲットに連行され、嫁たち&ケビンに説教される。
おかしい……戦争の会議のはずだったのに。
俺のノンデリカシー問題が議題になってる。
シーユンは別室で待機させられ俺はまわりを嫁たちに囲まれて詰問されてる。
嫁ちゃんが座った目で言い放った。
「さすがの婿殿もシーユンの気持ちは気づいてるよな?」
あ、これ、冗談言ったら死ぬやつだ。
なので自主的に床に正座して正直に言う。
「自分、銀河帝国皇帝の婿なので……叶わぬ恋なら鈍感系主人公に徹してしまおうかと。はい……」
彼女連れて来た近所の大学生の兄ちゃんムーブとどっちにしようかなって思ったけど、俺が既婚者なのわかっててなので鈍感系を選んだ。
みんな頭痛そうである。
「えっと……みんな……そんなに頭痛くならないでも……」
「だってさ! 気を使った結果がこれって! なんでそう変な気を回すの!!!」
普段は悪ノリの片棒を担いでくれるメリッサも頭を抱えていた。
「婿殿に必要だったのは普通の学園生活じゃったか……」
嫁ちゃんも頭抱えてる。
「レオ……いくらなんでも……」
ケビンすら頭を抱えてる。
クレアに至っては無言で固まってた。
レンはほほ笑んだ。
「旦那様逃げてはなりません」
今日一番怖かった。
「あ、はい」
もうね。
どうすればよかったのか?
聞いてみればいいか。
「でもさーどうすればいいのよ。いくらハーレムキングでも絶対に成就できないじゃん。政治的に」
「……たしかに。成就したら侵略と同じじゃな」
嫁ちゃんが難しい顔をした。
さては考えてなかったな!
「俺、嫁ちゃんと離婚したくないし」
もうなにも!
もう俺からなにも奪うな!!!
なお、俺の命はたいていの賭けでベットされてるものとする。
「妾は愛されててうれしいがのー。シーユンの気持ちを考えるとなー」
難しい話ではある。
厳しく言い聞かせて恨みを買うのもまずい。
「一時の思い出」とかのなめた対応は論外。
ハーレム入りとか何人死ぬか分からん。
後の世にとんでもない爆弾残すのと同じだ。
圧倒的にシーユンのためにならん!
「そうじゃのー、婿殿。いっそ婿殿を中心とした統一政府作るか?」
「それ何人死ぬのー!!!」
銀河時代のチンギス・ハンとか無理すぎるだろ!
そんなの全人口の一割とか死ぬわけで……。
そんなのに巻き込めないっての!
ただでさえゾーク戦争の傷跡が人口統計に表れてるくらいなんだから!
「冗談じゃ。さすがの妾でも虐殺起こすまでの理由にはならぬ」
「ですよねー!」
「婿殿の話を聞いたら腑に落ちた。婿殿……ちゃんと考えておったのじゃな……」
「俺だってふざけていい相手は選んでるっての!」
「え?」
みんなが俺を見る。
なにその目。
「え? だって隊長、カトリ先生にふざけて」
「そりゃ先生はふざけても許してくれるし」
みんなまた俺を見る。
「敵にふざけるのは?」
「だってふざけないと弱くなるんでしょ? だから」
ひそひそ話してる。
するとクレアが肩を叩いた。
「ごめんねレオ、私たちいままでレオにばかりつらい目にあわせてたね」
「なにその中途半端ないたわり!!!」
そしたらシーユンが部屋に案内された。
なんか会議する前から疲れてきたぞ。
「あー、すまん、シーユン。婿殿はちょっと疲れてて言葉のチョイスを間違ったらしいのじゃ」
「えっと……なんのお話ですか……?」
「いやな、婿殿は親御の体を早く取り戻して墓を建ててやりたいだろうって言ったのじゃ。帰れなんて言ってないのじゃ。すまぬな、男はこれだからな! な、婿殿!」
「たいへん申し訳なく」
土下座。
いいもん!
頭下げて許されるならいくらでも下げるもん!
「あ、ちがいます! わ、私も子どもみたいな態度しちゃってすみません! そんなつもりじゃなかったんです!」
シーユンは俺の手を握った。
「そ、それに……そんなに私のことを考えてくれてたなんて……うれしいです……」
そう言ってシーユンは顔を赤らめた。
あかん。
嫁ちゃん、これはあかん。
ドツボに向かってる。
嫁たちを見ると「あちゃー」って顔してる。
おかしい……俺はラブコメ世界の住民ではないはずだ。
すると作戦室にタチアナが飛び込んできた。
「みんな! ラターニアがライブ中継はじめた!」
なんかさー、この世界。
急速に俺たちの手法を取り込んできたんだよね。
プロパガンダのやり方とかさ。
「自分たちの利益のためではない! 相手を救うためだ!」論法とかさ。
プローンの保護も視察めちゃくちゃ来てるし。
プロレスラーの人たちも演出を学ぶための講演会としてラターニアの真面目な集会に招かれたりしてるし。
今回はラターニアは戦争のライブ中継することで自分たちの正当性をアピールするつもりだろう。
タチアナが画面を映す。
ラターニア軍は自分たちの領土から出ずに反撃している。
それに比べてある意味無敵の集団である屍食鬼は空気を読まずに領土を踏みにじっていた。
【太極国の正当な軍事作戦です】ってどこまで言い張れるかな?
ラターニアは犠牲を抑えつつ誘導。
待ち伏せして反撃!
「こりゃ俺たちいらない説まであるな」
なんてほっこりしてたのよ。
そしたらさ、シーユンが急に驚いた顔になった。
「ま、まさか! あれは!」
それはまさに龍。
龍の形をした戦艦がやってきた。
「太極国の新造艦【黄龍】です!」
ヤケになったのか、なにか考えがあるのか。
それはもう、とうにわからない。
もはや太極国と屍食鬼の関係を隠そうともしてなかった。
ただ言えるのは太極国も屍食鬼も本気だった。
この戦闘に勝ちさえすれば国内問題までも一気に解決する。
そう思っているのだろうか?
俺は否定的だが……わからない。
完全に風習が違う他国のことだ。
相手の行動を正確に予想するのは難しい。
「黄龍には人型戦闘機が格納されているはずです!」
人型戦闘機が出てきた。
「ラターニア側から要請があるまで待機」
俺はそう告げた。
嫌な予感がしてまいりました。




