第三百八十一話
次期皇帝にはなったシーユンであるが……。
彼女は今……。
「はい、やり直し」
「ふえーん!」
シーツと格闘していた。
現地採用の二等兵……逆に言うと俺たちには二等兵の育て方がわからん。
なのでタチアナやワンオーワンと同じように士官学校式で扱うことにした。
つまりシーツとアイロン、あと服装である。
いや他国の皇族としてお客様扱いしようと思ったのよ。
でもそれを断ったのはシーユンだ。
せっかく友だちになったタチアナやワンオーワンと同じ扱いにしてほしい。
そう願い出たのだった。
だとしたらシーツ、アイロン、服装……とにかく自分のことは自分でできるようにする。
これ大事。
点呼と服装チェック。
するとタチアナがシーユンに言った。
「いいか気をつけろシーユン……レオの兄貴……このゆるみきったツラ! だが一番容赦ない!」
「それ本人の目の前で言う?」
「るせーッ! 准将閣下は自分が優等生だから自分と同じレベルを無意識に要求しやがります!!! 我々はクソ迷惑でございます!!!」
タチアナめ!
わざと間違いまくった丁寧語にしやがった!
ひどい!
するとワンオーワンもうなずく。
「准将閣下は自分にも他人にも厳しいであります」
俺、ワンオーワンをいじめたことないよね?
ねえねえ、なんで俺が厳しい設定になってるの? ねえ!
とりあえずタチアナとワンオーワンにはしばらく厳しくすることにするとして、シーユンには最低限を教え込む。
戻ったら戻ったで内戦になるかもしれない。
身の回りのことや最低限の武器の扱いができた方がいいと思う。
シーユンとも相談したけど「厳しくお願いします」って言われた。
思ってたよりも数段厳しかったみたいだけど。
俺たちも鬼じゃない。
士官学校レベルまでは求めない。
とにかく兵のジャマにならなければいい。
「できました!」
「はい合格。次は服装、バッジが曲がってる。腕立て伏せ」
「ふえーん!」
意地悪してるわけじゃない。
腕立て伏せを見とどけて再度チェック。
「ヨシ! 終わったら射撃訓練! 駆け足進め!」
「はい!」
走って訓練室へ。
シーユンは訓練室までのランニングで限界のようである。
息が整うまで休憩したら射撃訓練。
「シミュレーター起動! ワンオーワンとタチアナは帝国軍のライフル。シーユンはラターニア軍のライフルに設定!」
「はい!」
シーユンはおそらくラターニア軍の装備で戦うことになるだろう。
そのときに兵士の邪魔にならないようにするのが目標だ。
あと現場を体験してもらって逃げないようにしてもらう。
指揮官の逃げ癖……いや、それが戦略ならいいんだけど、心の弱さから来てるものなら許してはならない。
俺も嫁ちゃんも逃げなかった。
俺たちが逃げたら仲間が死ぬのだ。
被害者を最小限にできたのは逃げなかったのが一番大きいのだと思う。
俺の能力など後付けの理由説明だと思う。
「はじめ! ワンオーワンとタチアナは精密射撃! シーユンはカバーから弾ばら撒くことを意識しろ!」
職業軍人と護衛対象の役割は違うのよ~。
ワンオーワンとタチアナは職業軍人の動き。
シーユンは護衛が来るまでの時間稼ぎである。
シミュレーターのシナリオは宇宙戦艦の中で孤立したシーユンをワンオーワンとタチアナで助けに行くものを使ってる。
シーユンは隠れた場所から手だけ出してライフルを撃つ。
とりあえず反撃。これ重要。
残弾数考えなくていいプラズマライフルだから気軽にできるよね。
撃ちながら逃げる。
ワンオーワンとタチアナはパーソナルシールドを展開して突撃。
シールドさえあれば何発か食らっても大丈夫。
ここに俺やヒューマさんがいれが斧で突撃なのだが、女の子チームだからそれはなし。
「いくであります! タチアナ援護!」
え?
ワンオーワンがコンテナ持ち上げてぶん投げた。
うそーん!
お兄ちゃん聞いてない!!!
ワンオーワンってそんな力持ちだったの!?
「オラオラオラオラオラ!!!」
タチアナもライフルを撃つ。
うーん悪い顔。
鬼神国だと宗教的理由でモザイクかけられるレベル。
「合流しました!」
タチアナが叫んだ。
ここまでは良かったんだけどな~。
増援がやってきた。
だんだんと押されていく。
で、ワンオーワンが撃たれた直後にタチアナも戦死して終了。
「ねえ兄貴」
「今は准将閣下」
「准将閣下! このシミュレーター本当にクリアできるんですか?」
「俺がやったら木刀でソロクリアできるし」
「兄貴に聞いたアタシがバカだったわ」
「准将閣下! 自分はどう立ち回ればいいでありますか?」
「ワンオーワンはちゃんと銃を使うこと。帝国軍のマニュアルどおりに動いて」
「はいであります!」
返事はいいのだが……ワンオーワンは身体能力に頼るタイプだ。
ある意味俺と同じ傾向にある。
うん。そのうち慣れるだろう。……たぶん。
「シーユンはよくやってる」
まだ数回しか訓練やってないのだ。
上出来だろう。
「あ、ありがとうございます!」
二人はシーユンの護衛ってのを考えて行動。
はいもう一回。
「はい!」
このように訓練をしてる。
遊んでるだけじゃないのよ。実は。
とにかくシーユンをある程度のレベルにすればいい。
身を守れるレベルじゃなくたっていい。
とにかく指揮官になることを考えて全体のオペレーションの流れを体験させて、個別オペレーションはシミュレーションで学習。
それと同時にタチアナたちと同じく士官学校の勉強もさせる。
広く浅く。
専門家である必要はないけど、全体をね。
とにかくシーユンの生存率を上げる。
このミッションの意味を理解できるようになったら俺たちと合同訓練だ。
シーユン個人が強くなる必要はない。
とにかく意味を理解させるのが目標だ。
分隊長くらいのオペレーションができるようになるのが目標かな。
そこまでわかれば、あとは座学で大きな単位で物事を考えられるようにすればいい。
そうすれば皇帝のレベルのオペレーションも可能なはずだ。
だから下のものの仕事を体験させる。
恨まれたら嫌だな……。
でもシーユンやる気あるんだよな。
大丈夫だと思いたい。




