第三百八十話
嫁ちゃんとラターニア王の会見が放送された。
帝国とラターニア、それに鬼神国やバトルドームでも放送してる。
ラターニアは大国なので他の大国の通信社にも配信される予定だ。
ラターニア王は痩せ形のイケメン。
く、悔しくなんかないんだからね!!!
ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!
会見の内容は屍食鬼の件だ。
屍食鬼の正体が寄生虫であること。
それと同時に治療法の情報開示もするとアナウンス。
無料だぜ。
世のため人のため。
ただし屍食鬼、お前らは死ね。
アニメーションで説明。
最近さー、帝国の映像製作会社儲かってるんだよね……。
細かい仕事がめちゃくちゃ多いのよ……。
ほら、外国向けの仕事が半端なく多いから。
アニメの製作だけじゃなくて、広告作成からパンフからステッカーから……各種印刷物も……。
大もうけってほどじゃないんだけどフリーランスでも食うに困らないレベルである。
とにかく帝国は上の世代から死にまくったし、金の流れ止めてた上流階級も粛正された。
その反動と外国との接触でとんでもない経済拡大が起こってるのである。
本当はさー、嫁ちゃん内政させたいんだけど次から次に種族の全滅とか起こるせいで帰るに帰れなくなってる状態だ。
俺もそう。
内政力100のサム兄いなかったら詰んでたもん。
今はカミシロ本家の仕事もしてもらってる。
リモートで仕事できちゃうのが不幸の原因のような気がする……。
とにかくそういうわけで、我々は資料の製作が得意なのである。
なのでガンガンアニメーションで説明する。
ラターニアのニュースも感染学の教授の話とかで帝国製作の解説を入れた。
これまでになく分かりやすいと評判だ。
中間宿主なんかも説明。
ラターニアは全国民の診断と駆除薬の投与の実施に踏み切った。
当然屍食鬼どもは陰謀論で対抗するのだが、その手法は俺たちの方が詳しい。
サクッと摘発である。
俺たちはと言うとナノマシンで予防。
さらに太極国の感染と皇族の感染状況まで出してやった。
さーて、国際的に出してもいいレベルの学術的な資料のため、ラターニア人ブチ切れ案件どころじゃなく大問題になった。
他の国も巻き込んで「え? うち大丈夫?」って話になったわけ。
鬼神国やラターニアの奇病から始まった話は銀河全体のパンデミック問題になったわけである。
いやさー、すげえパニックが起こったわけよ。
そりゃねー、自分たちが関係なければそんなもんよ。
でも自分たちも関係あるもん。
実際、太極国は乗っ取られてる疑惑あるし。
ラターニアに問い合わせが殺到。
ラターニア全土でサーバーが落ちる事態に発展した。
もうね、船便で紙の資料送った!
ナノマシンじゃない治療薬も!
当然であるが太極国に非難の目が向けられる。
すぐに国境封鎖、太極国人は検査される事態にまでなった。
差別? そんなこと言ってられない。
太極国の国境付近の惑星へは口コミで屍食鬼の話が伝わる。
もうね、行政機能が存続できないほどのパニックが起こった。
屍食鬼の嫌われっぷりよ……。
行政府は焼かれ、県令はその場で処刑、他の国に逃げる難民が相次いだ。
他の国だって受け入れられるはずもない。
問答無用で船ごと抹殺である。
……俺たち帝国人ってまだ文明的だったんだな。
本当に地獄のようなパニックである。
「治療薬あるし製法公開したんだけど……」というラターニアと我々の言葉は届かなかった。
よくわからないデマの横行でトイレットペーパーは売り切れ。
なぜか俺たちまで全力生産するハメに。
俺らは逆に冷静になった。
そしたらなぜか「尊皇」を叫ぶ謎勢力が地方から出現。
「屍食鬼から太極国を取り戻せ!」
と軍事行動をはじめた。
なお、俺たちはもっと穏便な太極国奪還を考えてたのでこれは予想外だった。
「もうなにもできないよ~」
と俺がさじを投げたころ、シーユンがやって来た。
「どうか私をお使いください。太極国民のために……」
シーユンがとうとうやる気を出した。
そしたら本気になるしかない。
俺たちはシーユンによる太極国への情報攻撃をしかける。
つっても『正しい』のは俺たちだしね。
正義とまで言わないけど乗っ取られてない正常な皇族を多数保護したわけでさ。
シーユンに代表になってもらって国が乗っ取られたと宣伝してもらう。
いやこの銀河の常識じゃ【乗っ取られた方が間抜け】っていう話なんだけどさ、今回はパンデミック。
みんな当事者なのでなんとなくで押し切る。
二枚舌? 知るかそんなもん!
俺たちは好きなようにやる。
シーユンは伝統的な皇族の衣装を着て会見に出現した。
会場はラターニアや鬼神国のメディアだけではなく、各国の報道機関というか国営メディアが押し寄せた。
どの国も絶賛暴動発生中である。
トカゲっぽい人もいる。
俺たちにラターニア王夫妻に鬼神国の大王サリアと前大王もいた。
【俺たちがシーユンのケツ持ちぞ!】って示すためだ。
ラターニアがシーユン側についたのは結構大きい。
普通はここまで内政干渉しないんだよね~。
「皇帝陛下、皇后様、それに皇太子殿下に第二皇子殿下はすでに屍食鬼です」
シーユンが冷静に事実だけを言った。
本当は育ての親である将軍の話とかもしたいんだろうけどさ……。
「屍食鬼の問題はすでに一国だけのものではありません、国際的な協力が必要です」
この日を境に空気が変わった。
シーユンはすでに治療法はあることを訴えかけ、冷静になるよう外国に訴える。
そしたらさ、「太極国可哀想じゃね?」ってみんな思い始めた。
他人ごとじゃなくなったからである。
【これを機に太極国攻めてやろ】って空気でもなくなった。
俺たちだって屍食鬼の生態知るまで放置してたわけで。
知的生命体はだいたいそんなものなのだろう。
各国は恩着せがましく支援を表明。
シーユンを正当な皇帝として認めるとの声明を出した。
ここからが本番なんだけどね。




