第三十八話
デスブラスターの重力子によってカニちゃんの群れは消滅。
寄生体も一匹残さず消えていた。
公爵領の豊かな自然は一部ぺんぺん草も生えない荒野になった。
これ怒られるヤツだ!!!
金銭的被害は天文学的。
自然の生態系は超高価なのだ。
「おっぱい……」
まだちゃんとしゃべれねえや。
どうすんだこれぇ……。
軽く絶望したそのときだった。
「ぎゃおおおおおおおおおんッ!!!」
ハゲた地面から巨大な物が這い出してきた。
まるで動物園惑星にいる恐竜のような……。
……というか怪獣である。
【ゾークネットワークのノード体発見。エクストリームモードをエクストリームバーストモードにすることを提案します】
絶対やだ!
【承認。エクストリームバーストモード解除】
おま! ちょ、許可出してない!!!
俺の言うこと聞く気ねえだろ!!!
【ごちゃごちゃうるさいです】
「てめ、うんごごごごご!!!」
顔が座席に固定される。
「待て、目はやめろ! 目に針とか絶対に……」
そんな俺の顔にロボアームが仮面をつける。
これはジョ●ョで見たヤツぅっ!!!
ら、らめ……。それもらめええええええええッ!!!
【エクストリームバーストモード始動!!!】
仮面の両側から棘が出てくる。
それが俺の後頭部を貫いた。
き、吸血鬼になっちゃううううううううううッ!!!
【脳を直接刺激し超能力を最大まで引き上げます】
うりいいいいいいいいいいいいいいッ!!!
「ふしゅるーふしゅるー……」
見える!
あの怪獣の一手先が見えるようだ!!!
気のせいだろうけど!!!
怪獣の背びれが光った。
「デカ尻ぃッ!!!」
すかさずアゴ目がけて鉄骨アッパー。
天に向かい怪獣のブレスが放出された。
これ喰らったらしぬやーつ!!!
システム!
もう一回デスブラスター!
【チャージ中です】
くそ、まだ使えないのか!
「ギャワッ!!!」
怪獣が尻尾を振り回してきた。
飛び上がって避ける。
そのまま鉄骨を振り下ろす。
べきんっと鉄骨が折れた。
強度が足りなかったか。
鉄骨を放り捨てつかみかかる。
怪獣も俺をつかんだ。
奇しくもプロレスのようにロックアップの体勢になる。
「目つきの悪いそばかす娘ー!!!」
俺と怪獣は同時に頭突きを放った。
シートベルトをしているのに座席が揺れる。
俺の顔を固定していたベルトと仮面が床に落ちた。
後頭部からどろっとした物が落ちる感触がした。
これ出ちゃいけない系の汁じゃね?
ただでさえ残念な脳味噌がこれでさらに残念になると思う。
【頭部損傷】
知るか!
もう一度ヘッドバット!
ガツンッ!!!
【ぎゃー!!! ツノが取れたー!!!】
AIうっさい!
怪獣が口を開けて噛みついてきた。
肩に牙が食い込む。
【肩装甲中破!】
わかってるよっと!!!
体を切り返しながら、噛みつくために不安定な体勢になった怪獣の股に手を差し込む。
「処理してないムダ毛えええええええええッ!!!」
俺は何を言ってるんだ?
なに口走ってんの?
だが気合いは充分だった。
怪獣を持ち上げる。
肩に担いで気合いを入れる。
一歩二歩三歩。
踵を踏みしめ走る走る走る。
加速がトップスピードになった瞬間、跳び上がって投げながら覆い被さる。
オクラホマスタンピードだ。
「うおおおおおおおおおおお!」
ようやく地獄の性癖自動シャウトタイムが終わったらしい。
俺の口からまともな叫びが出た。
怪獣は俺の肩から口を離していた。
オレは馬乗りになって怪獣をぶん殴る。
「てめえの! せいで! また! 黒歴史が! 増えた! だろうがああああああああッ!!!」
このまま落としてやる!
俺は脇腹を殴りながらギロチンチョークをした。
「ぎゃあああああああああああああッ!」
次の瞬間、俺が死ぬことを確信した。
やはり……やはりだ!
少しだけ未来の映像が見えてる!
俺は両手で口を無理矢理閉じた。
ドカンと音がして吹っ飛ばされた。
ゴロゴロと転がって起きようとするが手をつけない。
右腕が吹っ飛んで転がっていた。
相手もダメージは大きかった。
頭が半分吹っ飛んでいた。
「へー、えっちじゃん」
怪獣はそれでも俺めがけて突っ込んできた。
【ジェスター! 緊急処置につき奥義解除します! 次元斬を使ってください!】
なにそれぇ!?
すると残ってる左手が光を放った。
名前からして手刀で斬れってことか……。
ゴソッと超能力が吸い取られていく。
ここまで追い込んだんだから効いてくれよ!!!
「奥義! 次元斬!!!」
左手で怪獣の残った頭部から股までを切り裂くつもりで手刀を放つ。
一瞬遅れて、怪獣がズルッと肩から真っ二つになっていく。
【次元斬は空間ごと敵を切り裂く兵装です】
またもやオーバーキル。
【ゾークネットワークのノード体にトドメを刺してください】
まだ生きてるのぉッ!!!
嘘だろ!?
【コアを破壊してください】
コア……?
ああ、胸の赤い石みたいなやつか。
次元斬で斬るの?
【踏み潰してください】
了解。
俺は足を大きく上げ、赤いコアを踏み潰した。
【ゾークネットワークのノード体消滅確認。周辺のゾークはネットワークから切り離され休眠します】
どうやら周辺まで救ったらしい。
さて……ここで残念なお知らせがある。
……もう限界だ。
頭の血管がびきびき脈動してるし、後頭部からは謎汁が漏れ出ている。
サイケデリックな幻覚が見えてきたし。
そう、蝶々の羽みたいなのが生えた小さな妖精さんとか。
【おきてくださーい】
べしべし。
妖精さんが俺の顔を叩く。
【ジェスター起きてー!!!】
べしべし。
うざいわーッ!!!
【治療します。自動回復のスキルがあるので、それをブーストしますね】
ふぁ?
また超能力が吸われる。
だけど今度は悲鳴を上げなかった。
後頭部の傷が消えて、謎汁が漏れなくなった。
【ジェスター。遅れましたが自己紹介を。私は賢者移行支援システム。ジェスターよろしくお願いします。】
なるほど。
わかったような気がする。
「お前は連れて行かねえからな」
俺は妖精を指さした。
そもそもリニアブレイザーでかすぎて持って行けないし。




