第三十七話
【ジェスター搭乗確認。合体後のポーズを指定してください】
なんだ?
頭の中に直接語りかけてくるぞ……。
【バックの煙幕の色を指定してください】
えっと緑で。
ちゅどーん!!!
後ろで爆発が起こる。
緑色の煙幕だ。
「なにこれぇ……」
「婿殿!? なんじゃこれ煙幕か?」
心配した嫁が通信してくれた。
「この機体……脳に直接語りかけてくる……色選べって言うから選んだらこれぇ」
「PTSDか……?」
「違う! この機体、ジェスター専用機だったんだ! わけのわからないギミックだらけだ! 信じて嫁ちゃん!!!」
「……婿殿。……もうそのまま行ってしまえ」
もう行くしかないのか!!!
しかたない。
「行くぞ!!!」
【ポーズは……?】
適当で!!!
しゃきーん!!!
荒ぶる鷹のポーズ。
……本当にポーズ決めやがった。
そしてもう一度煙幕ドーンッ!
……黒歴史が増殖していく。
【エクストリームモード解放できます】
いらね。
【エクストリームモードを解放してください】
いらないでおじゃる。
【解放しないと自爆します】
わーったよ!!!
エクストリームモード解放!!!
【エクストリームモード解放】
ガシャンガシャンと音がする。
おま、ただでさえ強度が弱いのに無駄なギミック入れて!!!
紙装甲なのそういうとこやぞ!!!
「婿殿! なにがあった!?」
「機体に脅迫されてエクストリームモード解放した」
「は!?」
とりあえず鉄骨を構える。
大量のカニちゃんがやって来る。
【ESPパワーアシスト起動します】
なにそれ!?
【超能力を使って可動部分の保護をします。これにより運動性能が3倍、稼動時間が最大2倍になります】
なんじゃそれ?
と思った瞬間、ずんっとなにかが吸い取られる感覚が俺を襲う。
「よ、嫁ちゃん! 超能力が吸われてる! 吸われてるうううううううッ!!!」
「む、婿殿!!!」
【脳内物質による軽減措置をします】
なんか怖いヤツ!!!
次の瞬間、ブスッと手の甲に痛みが走った。
操縦桿から針が伸びて俺の手を貫いていた。
注射器か? これ注射器か?
ねえ、これ使用期限内?
【……】
黙ったぁ!!!
500年前の薬使いやがった!!!
このド外道が!!!
どくんっと血管が脈打った。
顔中の血管が膨らんだような感覚。
なぜか俺は根拠もなく勝利を確信した。
そういうお薬だわ。これ。
「ヨメ。オレ、ゾークマルカジリ」
「婿殿が壊れたー!!! 誰か! 婿殿がー!!!」
俺は頭の上で鉄骨をグルグル回した。
「あんぎゃああああああああああああああッ!!!」
もはやどちらが怪獣かわからない咆吼が俺の口から漏れる。
まずは前に出てきたカニの一団を鉄骨でなぎ払う。
カニどもは土ごと天に放り出される。
だがカニの数が多すぎる。
やつらの勢いは止まらない。
【アシストフルパワー】
このとき、俺はリニアブレイザーと一体となっていた。
AIの声とほぼ同時にオレは跳んだ。
超能力でアシストしてなければ関節がぼきりと折れただろう。
だが巨体は天めがけて跳んだ。
そのままカニめがけて両足でストンピングした。
あまりの衝撃に地面が波打つ。
カニどもが宙に放り出された。
俺は鉄骨を地面に突き刺す。
そのまま俺は腕を伸ばし回転する。
格ゲーであったな。この技。
ミキサーに放り込まれたかのようにカニがバラバラになっていく。
「レオが殺り損なったやつを片付けろ!!!」
生徒たちがやって来た。
トラックの後部に積んだ機関銃を撃つ。
カニが次々とバラバラになっていく。
「レオ! 無事か!?」
「はあはあはあ……ケモ耳イイイイイィッ!!!」
「レオが壊れた!!!」
ちゃんとしゃべれないだけなのよ!!!
なんかよだれ出てるし。
「ふしゅるー!!! 眼鏡っ娘キングダムウウウウウウウウッ!!!」
「バカが壊れたあああああああああああッ!!!」
戦闘終わったら全員正座な。
巨人を見つけた俺は鉄骨を抜くと飛びかかる。
リニアブレイザーは巨人よりもはるかに大きい。
だから俺の鉄骨振り下ろしを受けられるはずがない。
一発でぶち殺せた。
だけど油断はできない。
とうとう死ぬほど苦戦した寄生型まで来た。
「おっぱあああああああああああああいいいいいいッ!!!」
俺の意思とは関係なく口が性癖を叫んでいく。
おっぱい嫌いな男の子なんていません!!!
「あ、てめえ! 興味ないフリしてケビン狙ってやがるな!!!」
断じて言おう。
狙ってない。
「ボーイッシュ俺ッ娘尊イ……」
「お、俺、褒められちゃった」
メリッサも改造トラックできた。
砲座で手を振ってる。
「婿殿!!! なぜ妾がない!!! あとで憶えてろなのじゃ!!!」
いや好きよ。本当に。
ただ体が小さくて壊しそうで怖いじゃん。
エッチな目で見るのはもうちょっと後でいいと思うのよ。
「ケモ耳ィッ!!!」
俺は跳んだ。
寄生型に飛び後ろ回し蹴りをお見舞いする。
あれだけ苦戦した寄生型が紙のようだった。
だけど寄生型は一体だけではなかった。
何体もの寄生型がやってくる。
【デスブラスター発射準備】
待て、ビーム系は効果ないだろ?
それにそれの武器、トンネル工事用だろ?
【否。ジェスター以外ではトンネルボーリングブラスターにダウングレードされます。デスブラスターは強力な超能力兵器です】
ま、待て!
嫌な予感しかしねえ!!!
【デスブラスター用超能力充填】
「ぎゃあああああああああああああッ!」
ま、待て!
吸われる!!!
吸われていくウウウウウウウウッ!!!
【デスブラスター発射!!!】
それは重力兵器だった。たぶん。
発射された黒い球に何もかもが飲み込まれていく。
味方の方に発射しなくてよかった。
あまりに純粋な破壊。
ぺんぺん草すら残さずに消滅させていく。
こういうのは賢者にやらせるものであって、ジェスターにやらせちゃだめやろっていう威力だ。
副作用がこれ以上ないくらいふざけてるのに。




